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韓国の李首相は、22~24日の予定で訪日する。天皇即位式出席が目的であるが、安倍首相との会談を実現させることも重要な任務とされている。現在の日程では、24日に15分程度の会談が予定されている。文大統領の親書を携えると伝えられている。

 

「反日」や「克日」を宣言してきた韓国政府が、一転して日本へ接近している理由は、韓国経済の不透明さにある。反日・克日騒ぎが、国内の経済活動に不確実性を浸透させてしまったからだ。「NOJAPAN」「NO安倍」の幟が、今になって見れば韓国政府に大きなプレッシャーとなってはね返っている。一時の感情が、韓国経済の将来に暗い影を落としているからだ。

 

『朝鮮日報』(10月19日付)は、「李洛淵首相、文大統領の親書携え安倍首相と面談へ」と題する記事を掲載した。

 

李洛淵(イ・ナクヨン)首相は24日に日本の安倍晋三首相と会い、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の親書を手渡すことが分かった。李洛淵首相は18日、朝日新聞のインタビューで「今月14日に大統領から『親書はどうだろうか』との質問を受け、私は『書いてください』と答えた」と述べた。

 

(1)「李洛淵首相は「大統領は当面の問題を今回すべて解決するのが難しくても、任期内に解決されるよう望んでいる。(文大統領は)韓日関係をとても心配している」「今回の訪日が年内首脳会談につながることを願う」と述べた。韓日関係が急速に冷え込む原因となった韓国大法院の徴用被害者賠償問題は中長期的な課題として先送りし、まずは首脳会談を通じて信頼回復との関係改善の「扉」を開こうということだ」

 

下線部分は、韓国政府のこれまでの戦術となんら変っていない。徴用工問題を棚上げして、他の問題を解決しようという案では、進展を期待できないであろう。

 

(2)「現在の韓日間には徴用問題と共に、来月22日に終了した韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)復帰や、日本の対韓輸出規制という三つの大きな難題が複雑に絡み合っており、日本が韓国の提案に応えるかどうかは不透明だ。最近まで反日・克日を強調していた政府が対日関係改善模索に方向転換したのは、「懸案解決期限」が差し迫っていることと無関係ではない。期限内に解決できなければ、韓日関係が回復不能な状況に陥るのはもちろん、韓米関係も打撃を受ける可能性があるからだ。李洛淵首相もインタビューで「外交当局の協議は続いており、速度を上げることができればいい」と「時間」を強調した」

 

GSOMIAは、韓国国防相がその必要性を認める発言をし始めている。軍事情報のネットワークが増えれば増えるほど、安全保障にとって有益であるからだ。こういう当たり前な発言をするようになった背景には、大統領府の認識変化があるはず。この国防相は、大統領府の意向を忠実に反映させた発言をしている点に注目すべきであろう。

 

(3)「来月22日になるとGSOMIAが終了して効力を失う。外交消息筋は「終了を宣言したGSOMIAを原状回復させろという米国の圧力が繰り返し来ている。これが我々の基本路線の変化に最も大きな影響を与えた」と話す。韓国政府は今年8月にGSOMIA破棄を発表した時からずっと、「日本が輸出規制を緩めれば我々もGSOMIAを維持する」という姿勢を示してきた。李洛淵首相がインタビューで「できるだけ早く両国が(日本が輸出規制を強化した)7月以前の状態に戻れることを望んでいる」と述べたのも、同じ文脈だ。しかし、日本側にはこの2問題を連携させる考えが全くないものと伝えられている。徴用賠償という根本的な問題が解決されて初めて、日本は輸出規制問題にも誠意を見せるものと見られている

 

下線部分は、絡み合っている。①韓国が最初に徴用工問題を起こしている。それが引き金で、②輸出規制問題を誘発した。韓国は、これに反発して無関係な、③GSOMIA破棄に出たものだ。こういう一連の過程を見ると、発端は①である。この問題を棚上げして、②と③をバーター取引しようという韓国の提案は無理筋である。

 

韓国は、まずGSOMIAへ復帰することを発表すべきである。ここでひとまず、日韓の話合いムードを起こして、①の徴用工問題解決に乗り出すべきだろう。まず、日本の飲める徴用工問題解決の提案をすることだ。

 

(4)「政界の一部には、韓国政府の対日基本姿勢の変化を、交渉決裂に備えた「米国に対する名分を増やすため」とする見方もある。野党関係者は「文在寅政権は政権のアイデンティティーと直結する徴用問題やGSOMIA問題を覆そうという意思があまり強くない。米国に対して『このように誠意を見せたが、日本が拒否したのでやむを得ず破棄する」と主張するために、(基本姿勢転換に)乗り出した面もある」と語った」

 

韓国には、下線部分のような憶測もあるという。もしそうであれば、韓国は自滅する。文政権は、党利党略のための政治を行なっているという非難を浴びて当然だ。もはや、言うべき言葉もない。