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韓国の自動車業界は、年間400万台の生産を前提に部品会社も生産設備を擁している。肝心のカーメーカーが、中堅3社(韓国GM、ルノーサムスン自動車、双龍自動車)の長期販売不振で、脱落の可能性が高まってきた。一波乱起こる気配である。

 

自動車業界は、雇用の受け皿である。自動車組立現場では、多くの労働者が生産に加わっている。中堅3社が戦列から脱落すれば、その影響は業界のみならず韓国経済全体に波及する。

 

『韓国経済新聞』(11月6日付)は、「韓国車、生存マジノ線崩壊、韓国GMなど3社の不振が決定打」と題する記事を掲載した。

 

年間生産400万台。韓国自動車産業の生態系が維持されるためのマジノ線と考えられてきた数値だ。このラインが今年は崩れる状況だ。韓国GM、ルノーサムスン自動車、双龍自動車の中堅3社の長期販売不振と構造調整、慢性的高コスト、低効率生産構造などが重なった結果だ。

(1)「韓国自動車産業協会によると、現代・起亜自動車など国内自動車7社は今年1~10月に326万6698台を生産した。最悪だった前年同期(328万1211台)より0.4%少ない。このペースなら今年の生産台数は390万台に終わる見込みだ。グローバル金融危機直後の2009年(351万台)以来10年ぶりに年400万台体制が崩壊する危機を迎えている」

 

韓国には、自動車会社が7社ある。国内では、現代・起亜自動車が断トツだが、世界的には競争圏外に落ちた。他の5社の国際的な地位は推して知るべしである。自動車業界はもはや、韓国経済の屋台骨ではなくなっている。自動車労組は、この現実を謙虚に受入れて労使協調路線に戻らなければ、とも倒れの局面にきている。

 

(2)「危機の理由は複合的だ。2017年の中国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)報復に続き、昨年は韓国GMの群山(クンサン)工場閉鎖までが重なり、2年以上にわたり苦戦してきた後遺症が本格化しているという診断だ。今年に入って中堅3社が構造調整に入った点も悪材料として作用した。ルノーサムスンと韓国GMの労働組合の「習慣性ストライキ」も関係しているという指摘だ。業界では国内自動車産業の基盤が揺れるという懸念が強まっている。ある自動車部品会社代表は「各部品会社は年400万台体制に合わせて設備投資を増やしてきた」とし「生産台数がさらに減れば次々と閉鎖することになるだろう」と話した」

下線部分のように、ルノーサムスンと韓国GMの労働組合のストが生産を止めている。賃金引き上げは労組の任務だが、会社を潰してまで闘争するのは限界を超えている。自分の首を自分で締める行為であろう。その手前で、妥協するのが「大人の対応」だ。

(3)「韓国自動車産業の「腰」となる韓国GM、ルノーサムスン自動車、双龍自動車の中堅3社がふらついている。内需不振が続く状況で輸出も減少しているからだ。これら3社の今年の生産台数は2005年以降で最低となる見込みだ。来年以降はさらに懸念される。注目を引く新車も見られず、海外本社が配分する輸出物量の確保も容易ではないからだ。韓国自動車産業協会によると、韓国GM、ルノーサムスン、双龍車は今年1-10月に58万9744台を生産した。前年同期(66万8596台)比で11.8%減少した。このペースなら今年3社の生産台数は70万台にとどまる見込みだ。2年前の3社の生産台数は90万台を超えていた」

 

中堅3社は、注目される新車もない。研究開発費を賃上げで食われているからだ。輸出は海外本社の生産計画によって左右される。このように経営の自主性がない状況で、ストを打っても「糠に釘」である。労組は、生き延びたいならば企業に協力する以外に道はない。こういう「常識論」がなぜ分らないのか。ここが、韓国社会の「宗族制」の名残であろう。会社を「仲間」でなく、「敵」と見ている結果だ。


(4)「生産台数が大きく減少したのはルノーサムスンだ。今年1-10月の累積生産台数が13万7472台と、前年同期(18万2624台)比23.3%減少した。ローグ(日産のSUV)受託契約規模が減少したからだ。日産は今年初め、ルノーサムスンの労働組合がストライキを繰り返すと、ローグ委託物量を年間10万台から6万台に縮小した」

ルノーサムスンは、1~10月の生産実績が前年比2割以上の落込みである。これだけ操業度が低下すれば当然、損失に陥っているはず。この状態でストを繰り返す。正気の沙汰とは思えないのだ。労組は粋がってストをしているが、自らの職場を失う自殺行為である。

 

何か、現在の「反日不買」と同じムードに感じる。日本に打撃を与えると大真面目に考えているが逆である。韓国国内の不安心理を煽り個人消費が低迷している。海外旅行も全体が不振である。日本以外に海外旅行しないというのだ。それだけ、「日本愛」が強いのだろう。日本へ旅行したいが、反日騒ぎで自粛せざるを得ない。日本以外には海外旅行したくない。韓国社会の底流は、こういう動きのように見える。