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米韓政府は6日、主な経済協力を話し合う次官級のハイレベル経済対話をソウルで開き、両国の経済関係強化に向け努力するとの内容を盛り込んだ共同声明を採択した。詳細は、後で取り上げるとして、米国は、韓国の自尊心を傷つけないように、細心の注意を払いながら、じわりじわりと韓国の首を締めている。米国は、安全保障政策としてのインド太平洋戦略に、韓国を組入れる動きを強めているからだ。この問題は、こういう視点で見るべきだろう。

 

米韓ハイレベル経済対話は、2015年の米韓首脳会談で開催に合意し、同年11月に初開催された。今回が4回目となる。今年は初めて合意文書も発表されるなど、米国は用意周到である。日韓関係がギクシャクしている現状を、対韓外交の好機と捉えて動いているからだ。米韓関係は、日米関係に比べてはるかに希薄な関係とされている。米国が、ここへ一石投じて韓国の首に鈴をつけたような感じだ。

 

『聯合ニュース』(11月6日付)は、「韓米が経済関係強化へ、ハイレベル対話で共同声明採択」と題する記事を掲載した。

 

韓米ハイレベル経済対話は2015年の韓米首脳会談で開催に合意し、今回が4回目となる。 韓国からは李泰鎬(イ・テホ)外交部第2次官、米国からはクラック国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)がそれぞれ首席代表として出席し、経済分野の懸案事項について意見交換し、今後の協力の方向性を模索した。

 

(1)「双方は会議終了後に発表した共同声明を通じて、経済関係を「韓米関係の中心軸」と規定し、「両国間の経済関係が堅固であることを確認した。その基盤の上で経済協力と商業的連携性を持続的に拡大していく」との方針を示した。同会議で共同声明が採択されたのは初めて。両国は今回の会議ついて、韓国の新南方政策(東南アジア諸国連合やインドとの経済協力強化を目指す政策)と米国のインド太平洋戦略に基づく両国間の協力などの進展状況を点検し、新たな協力分野を模索する機会を提供したと評価した」

 

下線部のように、韓国を米国の「インド太平洋戦略」に組み込む狙いである。まず、この戦略について説明しておきたい。

 

米国のトランプ大統領が、2017年11月のAPEC首脳会議において、公正と相互利益の理念に基づくインド太平洋地域パートナー諸国との国際関係の構築を、「インド太平洋ドリーム」と呼称したことに始まる。その前に、安倍首相が「自由で開かれたインド太平洋」構想を語っていたので、その具体化と見ればよい。「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、国際政治・経済、文化交流、国境を越えた民生協力、地域・国際社会における安全保障協力を含む包括的なものである。

 

韓国の対中国輸出は、香港を含めて全体の40%にも達している。この高い依存度を

引下げるには、「インド太平洋戦略」に参加せざるを得ない切羽詰まった事情にある。米国が、この戦略に韓国を引入れる目的は、中国との関係を薄くさせる狙いだ。韓国もそれを承知で加わったと見るべきだろう。

 

(2)「その上で、▼開発協力 ▼インフラ ▼科学技術とデジタルの連携性 ▼エネルギーおよびスマートシティなどの4分野における新南方政策(韓国)とインド太平洋戦略(米国)の連携策を声明に盛り込んだ。韓国政府当局者は「米国側にとっても、経済協力に関連し(今回の会議に)高官級代表団を派遣したこと自体がかなり重要な意味を持つとみられる。(共同声明で)文書化した点は経済協力を進める上で非常に肯定的な見方が可能だ」と述べた。しかし、「(韓国が)米国のインド太平洋戦略にさらに深く入り込むのではないのか」との質問には「新南方政策との接点を見いだし、シナジー効果を模索するレベルだ」と述べるにとどめ、拡大解釈を警戒した」

 

韓国の「新南方政策」と言っても、韓国一国では成果の上がる事業は不可能である。事実上は、インド太平洋戦略の一環として協力することになろう。これまで、文政権は中国に気兼ねして米国の戦略に距離を置いてきたが、四面楚歌の韓国外交にそのような余裕はなくなっている。米韓同盟の一員として、米国に協力して自らの安全保障を維持せざるを得ない立場に追い込まれたのだ。

 

この問題については、本日発行の「メルマガ103号」で詳細に論じた。