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日本を訪問した韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は11月5日、早稲田大学で講演した。その席で、強制徴用被害者への賠償訴訟に絡んだ「私案」を発表したもの。文議長は、来年4月の総選挙に出馬しない方針と伝えられている。政治家生活の最後の仕事にする意気込みである。

 

最後の議員生活を締めくくる意味で、日韓問題のトゲを解決しておきたいという気持ちだ。ただこの2月、「天皇は、慰安婦に謝罪すれば問題が解決する」と二度までも発言。これが、日韓紛争の火に油を注ぐ事態となった。文議長は、かつて「韓日議員連盟会長」を務めた人物だけに、「天皇謝罪発言」は失言であった。文氏は、早稲田大学の講演でも謝罪したが、この発言がなければ有終の美を以て議員生活を終わることができた。残念に思っていることだろう。

 

『聯合ニュース』(11月6日付)は、「訪日の韓国国会議長、『韓日首脳会談で新たな関係開くべき』」と題する記事を掲載した「文私案」なる解決案は、次のようなものだ。

 

(1)「韓日の企業と両国国民の自発的な寄付を財源に基金をつくり、被害者に支給することを柱とする「1+1+α」案を解決策として提案した。韓国政府は今年6月に両国企業が自発的に基金をつくり慰謝料を支払う「1+1」を提案したが、日本政府はこれを拒否した。文氏の提案は「両国民の自発的な寄付」を「+α」とすることが骨子だ」

 

この案では、日韓企業と日韓国民の寄付金で、徴用工賠償を賄うという提案である。日本政府の立場では、すでに解決済みの問題である以上、韓国国内で解決せよという姿勢である。日本の企業と個人のレベルで寄付金を募るという案は「グレーゾーン」の感じだ。

 

(2)「さらに、文氏は旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意に基づき日本政府が「和解・癒やし財団」に拠出した10億円のうち、使われなかった残金60億ウォン(約5億6000万円)を基金に投入すべきだとも語った。これに関し、文氏は「自発的というのが提案の特徴。両国の企業と国民が自発的に参加し、歴史問題を網羅する基金をつくろうということだ」と説明した

 

文議長は、歴史問題を日韓の企業と国民が自発的に参加して解決しようという案である。市民団体のレベルで日韓双方が解決に向けて協力しようというのであろう。ただ、韓国側の原告集団は、早くも反対に声を上げている。日本政界でも、「解決済み」として寄付金でも反対という意思表示をしている。

 

文議長は、反対の声は承知の上という。ただ、何も案を作らずに日韓が対立しているのは不毛な争いとの立場を表明した。だから、韓国で法案として提出すると表明している。文議長は、文大統領と「刎頸の友」でもある。私案として発表する前に、文大統領の意向を聞いている可能性が強い。「法律にする」とまで言い切っている当りを考えると、「実現性ゼロ」と切り捨てる訳にはいかない面がある。

 

この「私案」は以前、韓国野党の党首から出た案にも似ている。それによると、日韓の歴史問題は今後、いっさい表面化させず韓国国内で処理する。それを、約束して法案化するので、日本側にも最後に「過去の謝罪」をして欲しいという注文がついていた。本欄で紹介済みである。ただ、「日本に謝罪してくれ」が唯一の条件というが、「謝罪の心がこもっていないからやり直し」などと言ってくるのでないか。そういう危惧の面もあろう。

 

ただ、韓国がいつまでも歴史問題を引きずっていると、日本が「ホワイト国除外」という切り札で、韓国へ経済制裁するリスクを自ら抱えていることに気付いたのだ。そのリスクを断ち切るには、日韓の歴史問題は全て棚上げして、日本に迷惑をかけないと意思表示する方がベターかも知れない。

 

韓国は、日本が想像する以上に、「ホワイト国除外」を恐れているのだ。喉元に刃を突付けられているという恐怖感があるのかも知れない。日本が、「政経不分離」にして歴史問題に経済で対抗する姿勢を見せたことで、韓国は飛び上がるばかりの驚きだったに違いない。

 

文議長の提案が今後、どのような展開をして行くか、日本は重大な関心を持って見ているべきだろう。