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韓国は、米韓同盟で結ばれているはずだが、「同床異夢」で何を考えているか分らない面がある。その象徴的な例が今、韓国に起こっている。ジェームス・ディハート防衛費分担金交渉代表、国務省のデービッド・スティルウェル次官補(東アジア太平洋担当)とキース・クラーク経済次官らが、訪韓中である。

 

現在は、11月23日のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)の失効日の目前である重大な時期である。前記の米高官3氏が訪韓していることを重ね合わせると、米国が何を目的にしているかは明確である。韓国のGSOMIA破棄を取り消させる目的である。

 

米国が、ここまで神経を使っているのがGSOMIA問題である。韓国政府は、専門家の意見を入れず、大統領府に陣取る非専門家の民族主義者に牛耳られている危険性を知るべきだ。戦前の日本陸軍は、海軍の反対を押し切り開戦に踏み切った。韓国が、非専門家の民族主義者によってGSOMIA廃棄を決めた経緯は、日本の太平洋戦争開戦の失敗と似通っている。餅は餅屋である。韓国の防衛問題が、弁護士出身の民族主義者一人でかき回わされている。文大統領が、それを容認し支持している構図は、文氏の非常識さを示す。

 

『中央日報』(11月7日付)は、「韓米同盟基盤であるGSOMIAの廃棄、迅速に撤回を」と題する社説を掲載した。

 

(1)「韓米同盟が試験台に立っている。韓米防衛費分担金増額3次交渉と韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)廃棄期限(22日午前0時)を控えて韓半島(朝鮮半島)を担当する米国の高官が一度に訪韓した。ジェームス・ディハート防衛費分担金交渉代表、国務省のデービッド・スティルウェル次官補(東アジア太平洋担当)とキース・クラーク経済次官らだ。今回の訪韓は分担金増額とGSOMIA廃棄撤回を圧迫するという見方もあるが、緩くなった韓米同盟の結び目を再び引き締めようとする努力とも考えられる。3人が同時に訪韓しなければならないほど韓米同盟が懸念に包まれている状況であるためだ。韓国にとっては最後の機会かもしれない」

 

韓国の良識派は、韓国外交が岐路に立っていることに警戒論を打っている。だが、文政権は日々の世論調査によってGSOMIA問題を決めるという「大衆迎合主義」に陥っている。「チョ・グク法相」問題もそうだった。世論調査で支持率が高いと判断して大失敗した。世論調査は、貴重なシグナルであるが安保など専門的な問題についてどこまで正確に認識しているか疑問である。そういう瞬間的な「世論の風」を真に受け、政策決定する危険性を知ることだ。

 

3人の米高官が、同時に訪韓している意味を反芻すべきである。米国政府が、国威をかけてGSOMIA問題を考えている意図を見誤ると、大変なしっぺ返しを受ける覚悟をすべきだろう。

 

(2)「韓米が血で結んだ同盟が危ぶまれているのは、文在寅(ムン・ジェイン)政府の失策が大きい。GSOMIA廃棄カードを日帝強制労役対応の交渉手段として使ったためだ。北朝鮮だけを見つめる政策に加え、行き過ぎた反日感情に襲われてGSOMIAの価値を軽視してしまった。GSOMIAは韓日間の協定だが、北朝鮮の核・ミサイルを阻止するための韓日米協力の共通基盤だ。そのためGSOMIA終了は北核・ミサイル防衛を難しくし、韓国が米国の安保戦略から結果的に排除される決定的な契機になってしまう可能性がある。米国の安保戦略の軸足が韓半島からアジア太平洋に移りながら在韓米軍撤収・縮小説まで出てくるようになったのはそのためだ」

下線をつけた部分は、韓国政府の誤った判断でGSOMIA破棄に走ったが、これによって韓国は大きな影響を被ると指摘している。米国の安保戦略が、すでに「インド太平洋戦略」に移っている現実を見誤ると、韓国は置いてきぼりを食う懸念が強まる。今、その岐路にある。

 

(3)「ヴィンセント・ブルックス前韓米連合司令官は今年8月、米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」のインタビューで「GSOMIA終了は北東アジアの安定と繁栄を維持する(韓米)同盟の枠組みを傷つけるだろう」とまで警告した。状況がこうであるにもかかわらず、青瓦台(チョンワデ、大統領府)は主務部署の意見を無視してGSOMIAの破棄を8月に決めた」

 

韓国が、GSOMIA廃棄を最終決定したのは文大統領である。その文氏が、安倍首相との会見を頻りに求めている背景には、外交の局面転換という重大事が控えていたはずだ。何もなければ、メンツを捨ててあれほど「執拗」に会見を求めなかったであろう。文氏が、最後に何を決めるか。それが、全てである。

(4)「当時、青瓦台国家安保会議で国防・外交部の長官はGSOMIA維持の立場だったが、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長らは破棄を主張したという。文大統領が主務長官の意見を無視して非専門家のほうに軍配を上げたのだ。そのため鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防長官が今月4日、「GSOMIAが安保に少しでも資するのであれば維持されるべきだ」と再び声をあげたのではないだろうか。文大統領は今からでも、韓米同盟の混乱をあおった人々を排除し、GSOMIA破棄を撤回する果敢な決断を下さなければならない時だ」

 

帝政ロシアの政治が狂った背景に、怪僧ラスプーチンがいたと言われる。専門家でない人間が、政策決定に関わる危険性を指摘している。韓国大統領府では、WTOで成果を上げた弁護士出身の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)が、国家安保室第2次長に収まっている。この彼が、GSOMIAで全権を振るっている。文氏は、「チョ・グク」と同じように、金鉉宗氏へ過剰な思い入れをしている。危険だ。