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中国4000年の歴史は、世界の観光市場で十分な競争力を持っていると思われがちである。現実は、大きく出遅れているのだ。日本は「旅行・観光競争力調査」で、堂々の世界4位であるが、中国は13位である。日本人気が高まって、中国人気が下り坂である背景は、データ的にも把握可能である。

 

この順位は、国際的な経済研究機関でダボス会議の主催で知られる世界経済フォーラム(WEF)が、隔年で実施する「旅行・観光競争力調査」の2019年度版(2019年9月公表)で明らかになった。日本は前回の2017年と同じく4位に入っている。2015年は9位だった。この調査は、いま流行の読者の投票という「いかがわしい」ものではない。WEFが、詳細なデータで調べ上げた結果である。日本の訪日旅行者が、なぜ急増しているか。納得できるデータにもなっている。

 

『サーチナ』(11月7日付)は、「低迷する中国への外国人旅行、初めてインバウンドをアウトバウンドが上回るー中国メディア」と題する記事を掲載した。

 

景気の低迷にもかかわらず、10月初旬の国慶節の休暇期間中には中国から多数の人々が日本を訪れたことからもわかるように、中国から国外への旅行は伸び続けているが、その一方で、国外から中国への旅行は伸び悩みが顕著になっている。

中国メディア『中国経営網』によると、2018年には1,497億人の中国人が国外旅行(アウトバンド)に出たが、訪中外国人旅行(インバウンド)者数は1,412億人にとどまり、初めて後者が前者を下回った。

(1)「同記事によると、訪中外国人旅行は、20世紀最後の20年間は、人数は年19.47%、外貨収入は年20.55%の勢いで急増し、2001年から2010年の10年間には人数は年4.6%、外貨収入は年11.1%伸びた。ところがその後勢いは衰え、年ごとの延べ人数は2016年1.38億人、2017年1.39億人、2018年1.41億人と低迷している。対照的に中国からの国外旅行者数は2016年1.22億人、2017年1.31億人、2018年1.50億人でそれぞれ伸び率は4.3%、7.%。14.7%と増勢を強めている」

中国へのインバウンドが、2010年を境に変化が起こっている点に注目すべきだ。それまでの増加率が縮小し始めている。中国の経済発展が進むとともに、インバウンドに減速感が出始めたのは、習近平氏の国家主席就任で監視社会の色彩が強まっているからだろう。日本へ帰化した中国人が、日本名になって故郷へ帰った際、警官から二度も中国語で「昔の中国人名を言え」と迫られたという。

 

ここまで個人情報を調べ上げている中国へ旅行して、拘束されたりしたら一大事である。先に北海道大学准教授(日本人)が、中国社会科学院招待で中国へ行ったら「スパイ容疑」で拘留される始末だ。中国のスパイ網は、日本にまで張巡らしている。日本人のSNSも常時、監視しているという。私のブログにも目を光らせているはずだ。私が中国へ旅行したら、「反中国罪」(こういう罪名があるかどうか知らないが)酷い目に遭う恐れがあろう。外国の一般市民まで監視している中国へ、旅行するのは危険そのものだ。

 

(2)「同記事は10月29日に開催されたネット旅行サイト最大手の携程旅行網(シートリップ)開業20周年記念式典上で披露された梁建章同社董事長の意見を掲載している。それによれば、インバウンド旅行による収入がGDPに占める割合は、一般的には1~3%だが、中国においては0.3%に過ぎず、もしそれを1~3%にまで引き上げることができれば、1,000億~2,000億元の収入があり、それは貿易収支の30~60%に相当するという

 

下線部は、重要な示唆を与えている。中国のインバウンド収入は現在、対GDP比で0.3%に過ぎない。これが、他国並に1~3%になれば、貿易収支の30~60%にも匹敵する収入が得られるという。習近平氏の監視社会が、これだけの得べかりし利益を失っていることになる。この高いコストを払って、中国共産党を維持させているとは、無駄な話である。改めて、日本の民主主義の有難みを感じる

 

(3)「梁建章董事長は、訪中外国人旅行が低迷している理由の第一として、ホテルや航空会社など旅行のハード面は国際水準となったものの、ビザ、インターネット、決済手段、英語等の面で外国人に対して十分に友好的ではない、とした。そして第二の理由として中国旅行のイメージの問題を挙げた。一部の国では中国は安全ではなく、環境汚染がひどく、中国は遠くて怖い国というイメージがあるとし、イメージを向上する宣伝活動の重要性を指摘した」

 

多くの日本人が抱く昔の中国人のイメージは、悠揚迫らぬ大人(たいじん)のそれであった。人生の奥義を知り抜いた「達人」というものだ。現在は全くの逆である。技術窃取、スパイ、監視と共産主義が、中国人を変えてしまったと言える。

 

(4)「多くの日本人にとって中国は歴史的観光資源が多数あり距離的にも非常に近いので、旅行先として大いに魅力的な国である。梁建章董事長のいう第二の理由の面での改善があれば、さらに多くの観光客が日本から中国を訪れるようになるはずだ。宣伝するだけでなく、実際に目に見える改善があることを期待したい」

 

古き良き中国のイメージは、台湾に残っている。これこそ、4000年の歴史が紡いできた隣人を信頼し助け合う精神が残っている世界である。中国の歴史と、監視社会は似つかわしくないのだ。中国大陸の人々は、いつまで冷たい監視カメラに身を晒すことに我慢できるだろうか。中国における監視カメラの増加は、中国の「全般的危機(マルクス用語)の象徴」である。