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韓国与党は、来年4月の総選挙の公約で、現在の徴兵制(期間18ヶ月)を改め将来、志願兵制を検討していることが分った。表面的な理由は、人口減という絶対的な条件を挙げているが、文政権も徴兵期間を21ヶ月から現行の18ヶ月に短縮する公約を掲げ実行したことから、選挙対策の面も否定できない。

 

『朝鮮日報』(11月7日付)は、「現実となった人口絶壁、韓国軍兵力を50万人に削減 募兵制も検討」と題する記事を掲載した。

 

(1)「韓国政府が少子高齢化に備え、兵力の削減、師範大(教育系大学)の定員調整などを骨子とする「人口構造変化対応方案」を打ち出した。政府は今後、高齢人口の増加への対応策と福祉支出増加への管理案を追加で打ち出す計画だ。政府は先日打ち出した生産年齢人口拡充対策でも、日本式の定年延長を導入する案を、現政権の任期が終了した後の2022年ごろに検討すると表明していた。一方、安全保障に直接的な影響を及ぼす兵力削減については直ちに施行に移し、今後3年間で8万人が削減されることになる」

 

文政権は、若者から反発の出そうな定年制延長問題を先送りしている。労働力人口の減少をカバーするには定年制延長しかない。ただ、失業者が蔓延している現在、労働環境にそぐわないことも否めない。政府は、労働政策の失敗を突かれるのを恐れて、無難な先送りを決めたと思われる。兵力削減は、人気を得るためにも3年間で8万人を削減するという。この分がまた、失業者増となって跳ね返る。

 

昨年61万8000人だった韓国軍の兵力は1年で約4万人減り、現在は57万9000人である。これが3年後には50万人体制となる。これに対し、専門家と軍の一部からは、現在の安全保障の状況と野戦部隊の意見が十分に反映されていないとの指摘が出ている。現在の計画通りに進めば、5年間に陸軍だけで約11万8000人減ることになる。陸軍の兵力は2022年に36万5000人まで削減され、北朝鮮の地上軍110万人の33%水準まで減ると指摘されている。

 

『朝鮮日報』(11月7日付)は、「韓国与党シンクタンク、3カ月前から募兵制導入研究 選挙公約

として検討」と題する記事を掲載した。

韓国与党「共に民主党」が、来年415日の総選挙公約に「募兵制導入」を検討することが分かった。人口が急激に減少する「人口の絶壁」で徴兵制が限界に直面している上、現代の戦闘が科学戦の形態に変化しつつあることに対処する必要があるとの趣旨からだ。与党関係者は6日、朝鮮日報の電話取材に「党のシンクタンクである民主研究院が募兵制転換を研究してきただけに、党公約として提案してきたら検討に入る計画だ」と語った

 

(2)「与党は、募兵制導入の表向きの理由に「人口減少と人工知能(AI)時代に合った軍システム改編」などを挙げているが、実際には与党支持率が最近下がっている20代男性の票を狙ったものだという見方もある。ただし、募兵制導入は党レベルでは具体的な議論が行われていない状態だ。共に民主党政策委員会関係者は、「長期的に推進する課題だということは明らかだが、時期尚早という意見も少なくない」としている」

 

現在は、与党のシンクタンクが志願兵制を検討している段階だが、与党の「公約」レベルには上がっていない。だが、来年の総選挙で「志願兵制検討」の公約には上がりそうだ。北朝鮮という「獰猛部隊」と対峙する韓国軍として、単なる「きれいごと」で「志願兵制検討」と言えない現実はある。だが、若者に魅力的テーマだ。これで、与党離れした20代をつなぎ止める作戦とも見られる。

 

(3)「政府も、「募兵制は長期的な課題だ」という原論的立場だ。鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官は今年9月の国会対政府質問で、「(募兵制転換は)長期的に検討しなければならないという認識を共にしている」と答えた。南北分断の状況で募兵制に転換すれば安保上の不安につながる可能性があるだけでなく、莫大(ばくだい)な財政負担という山も乗り越えなければならない。募兵制転換などのためには兵役法改正が必要で、これには野党の協力も欠かせない」

 

韓国政府は、志願制について将来の問題としている。ただ、与党が選挙対策に着手し始めた以上、公約になる可能性は否定できない。下線部分のように、財政問題や士気の問題が懸念される。志願兵が「傭兵感覚」になると、戦力低下は不可避である。短期間に議論する問題でなく、与野党が時間をかけて冷静に議論する必要があろう。