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中国から流される米中関税引き下げ情報は、株価を刺激している。米国内では、引下げ反対論が根強く、トランプ大統領が否定談話を発表する騒ぎだ。中国経済は、米中貿易戦争で忍耐の限界を超えていることが背景にある。これを見通している米国当局では、「ここで手綱を緩めては「九仞(きゅうじん)の功を一簣(き)に欠く」という慎重論が圧倒的である。

 

中国から妥協案を引き出す最後の段階で甘い対応をすれば、昨年5月のようにスルリと逃げられる。ここは、押して、押して、押すべし。これが、米国内のコンセンサスである。中国が情報操作に乗り出しているのは、それだけ苦しくなっている証拠だ。

 

『ロイター』(11月8日付)は、「トランプ米大統領、対中関税撤回で『何も合意せず』」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領は8日、対中関税の撤回で合意していないと明らかにした上で、中国が自身に関税撤回を望んでいるとの認識を示した。米中が貿易戦争を終結させる時期を巡って疑念が再燃した。

 

(1)「米中双方の当局者は11月7日、通商協議の「第1段階」の合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意したと明らかにした。ただ、追加関税の段階的撤廃には、ホワイトハウス内外の助言役から強い反発の声が出ている。トランプ氏は「中国は多少の関税撤廃を求めているが、全てではない。なぜなら、私がそうしないことを分かっているからだ。私は何も合意していない」と述べた。また、中国側が自分以上に合意を求めているとも指摘した。トランプ氏はこのほか、中国との合意が成立すれば米国で署名したいと表明。「農業州であるアイオワなどが考えられる」との考えを示した」

 

米中双方の株価が、関税引下げ説に翻弄された。中国が、関税引き下げを切望している結果だ。中国が、ここまで追い込まれるのであれば、昨年5月に妥結しておくべきだった。土壇場で、習氏が強気になり、「俺が責任をとる」とまで啖呵を切った。これが、決裂の要因である。中国は、完全に情勢を読み違えている。今になって、情報操作を始めているのは「遅かりし由良之助」である。

 

(2)「トランプ氏の発言を受け米国株は下落。ドルも対円で下落し、米中通商合意を巡る楽観論を背景とするドル高の流れが一服した。中国共産党系メディア「環球時報」の胡錫進編集長はツイッターで、トランプ氏の発言は市場で予想されていなかったと指摘。トランプ氏は全面的に否定したわけではないとした上で「関税撤廃がなければ、第1段階の合意はないだろう」と述べた」

 

「環球時報」の胡錫進編集長はツイッターで、「陽動作戦」に出ている。「関税撤廃がなければ、第1段階の合意はないだろう」と言っているが、困っているのは中国である。

 

(3)「ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は電子メールで、米中が関税の段階的撤廃で合意したという情報を巡り、記者が中国の「プロパガンダ」に「踊らされた」と批判した。米中通商交渉に関する報道の多くが匿名筋に頼っているとし、トランプ大統領とライトハイザー通商代表部(USTR)代表のコメントのみを取るべきと強調。「国のために匿名筋による『サーカス』はやめるべきだ」と述べた。USTRから関税撤廃に関するコメントは得られていない」

 

中国情報に警戒せよと言っている。米国の株価を動かして、中国で売り抜けようという策謀かも知れない。ナバロ米大統領補佐官は、トランプ大統領とライトハイザー通商代表部(USTR)代表のコメントだけに注意せよというアドバイスだ。

 

(4)「ペンス米副大統領の首席補佐官を務めるマーク・ショート氏はCNBCに対し「第1段階の合意は年末までに調印できるとかなり楽観的に考えている」と表明。中国製品への制裁関税引き上げが予定される1215日までの妥結は可能かとの質問には「その頃の妥結はあり得るが、特定の日程を述べて交渉を担当するムニューシン財務長官やライトハイザー代表の手を縛りたくない」とした」

 

目下、交渉の途上にあるのが真実のようだ。中国が焦っており、ウソ情報を流して反応を見ているのだろう。米中覇権戦争の序盤戦。それほど、簡単に話は進まないのだ。双方が駆け引きの限りを展開しているに違いない。