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世界は、米中貿易戦争に関心が集まっている。関税率の引き下げ情報が飛び交うと、株価が敏感に反応する次元だ。米中の対立は、こういう次元から離れており、「新冷戦」に向かっている。世界覇権をかけた争いの一歩が始まっているのだ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月8日付)は、「中国との大いなる対立」と題する寄稿を掲載した。サブタイトルは、「ペンス副大統領とポンペオ国務長官が示す新たなアプローチ」。著者は、著名な『やがて中国の崩壊がはじまる』のゴードン・チャン氏だ。

 

米トランプ政権は中華人民共和国との根本的な決別に向かっている。この決別が現実になれば、ほぼ半世紀にわたった米政府の「関与(エンゲージメント)」政策がひっくり返されることになる。マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官が10月行った講演には、米政府高官の公的な発言ではめったに聞かれないような敵対的な言葉が含まれていた。 「米国は引き続き対中関係の根本的な見直しを追求する」。ペンス副大統領は1024日のウィルソン・センターでのイベントで、過去1年間に中国が見せた不穏な行動を詳細に説明した上でこう語った。

 

(1)「ペンス氏の発言は、201810月の画期的な演説と実質的に違いがないと指摘する向きもある。しかしそう考える人たちは、中国が米国の働き掛けに応じることを拒否する中で、米国が断固たる行動を取る必要があることを同氏が辛抱強く立証しようとしていたことを見過ごしている。さらに言えば、ペンス氏が同じテーマを繰り返し主張していること自体が重要だ。それは、201712月に発表された国家安全保障戦略で明確に示された米政府の姿勢が、より強固になったことを示唆している。同戦略では、長年使われてきた「友人」や「パートナー」といった表現が捨て去られ、代わりに中国とその事実上の同盟国ロシアに対して「修正主義勢力」や「ライバル」という表現が使われた」

 

ペンス副大統領は、これまで中国に対して系統立てた批判を展開している。「一帯一路」政策が、他国を債務漬けにして身動きできぬように仕向け、中国の属国にする恐るべき政策と断じた。世界的な「一帯一路」批判は、ペンス氏の演説が寄与する部分も大きい。この問題は国際化され、中国も出鼻を挫かれた格好である。

 

米国は、中国に対し長年使われてきた「友人」や「パートナー」といった表現を捨て去った。「修正主義勢力」や「ライバル」という認識だ。米中貿易戦争で双方が関税率を引き下げるとの情報に対し、米国内で大きな反発が起こった。この背景は、中国を政治的に警戒する相手国と認識した結果である。中国と安易に妥協するなという共通認識である。

 

(2)「ポンペオ国務長官は1030日のハドソン研究所主催の夕食会で、より率直に語った。「われわれの2つのシステムの基本的な違いと、こうしたシステムの違いが米国の国家安全保障にもたらす影響を無視することは、もはや現実的ではない」。同氏は、中国を支配するエリート層は「闘争と世界支配を目指すマルクス・レーニン主義者の政党」に属していると指摘。「彼らの指導者たちの言葉」を聞けば、中国が米国に敵意を抱いていることが分かると述べた」

 

ポンペオ氏は、11月8日ドイツでの演説でも中国共産党への強い警戒心を打ち出した。『大紀元』(11月11日付)は、「ポンペオ米国務長官、『中国共産党政権は中国ではない』」と題して、次のように報じた。

 

「ポンペオ米国務長官は8日、1989年のベルリンの壁崩壊から30周年に合わせて、ベルリンで演説を行い、米中の対立について「米国と中国共産党政権の対立であり、平和を望む世界各国と中国共産党政権による全体主義の戦いである」と強調した。中国共産党は、全体主義に関する新たなビジョンを形成している。これは、国際社会がこれまで見たことのないビジョンだ。中国共産党はさまざまな手段と方法で中国の国民を抑圧している。この手法は旧東ドイツの圧政と恐ろしいほど似ている」。長官は、中国当局が国内だけでなく各国にも影響力を行使し、威圧していると非難した。「中国軍が隣国の主権を脅かしている。中国当局は、ドイツの議員を含めて、当局の人権侵害を批判する外国政府の高官や議員の中国訪問を禁止している」

 

このポンペオ長官の演説は、中国への並々ならぬ警戒心を見せている。経済問題を超えて、中国を「敵対的勢力」と位置づけている点に注目すべきだ。

 

(3)「中国共産党の機関紙「人民日報」は今年5月、対米「人民戦争」の宣戦布告を行った。習近平国家主席は、10年以上にわたり、中国が世界で唯一の正統な国家だという考えをほのめかしている。中国軍の高官らは今、米海軍の艦船を沈没させ何千人単位で船員を死亡させることについて、公の場で喜々として語っている」

 

人民解放軍が、はしゃいでいることは事実だ。かつて西欧列強に押しまくられ、日本軍の軍靴に蹂躙された怒りを今、発散させている。習近平氏は、社会人のスタートが人民解放軍であることも手伝い、習近平―解放軍は強く結びついている。

 

(4)「世界には長い間、中国という一党支配国家が国際的なシステムの中で「責任ある利害関係者」になる時が来るだろうという期待があった。習氏が、「中国の夢」や「中華民族の偉大な復興」を強引に追い求めるなかで打ち砕かれてきた。同氏は極めて差別的な規則の施行や、121日に発効予定の厳格なサイバーセキュリティー規則のような法規制などを使い、外国企業を中国市場から容赦なく締め出している」

 

(5)「習氏はまた、全体主義的な統制措置を導入しつつある。中国全土で来年開始予定の「社会信用システム」は、個人および企業の行為を常時監視し、国の基準に沿って採点する。2020年までには推計62600万台のカメラが市民を監視することになる。最悪なのは、信仰と少数派のアイデンティティーを中国から排除しようとする恐ろしい取り組みだ。それが最も顕著に表れているのが、多数の人々を収容所に拘束したり、教会やイスラム教礼拝堂を破壊したり、宗教信仰者などの臓器を収奪したりする行為だ」

 

中国は、習氏が国家主席に就任以来、世界の普遍的な価値基準に刃向かう姿勢を見せている。例えば、市場機構に代わり統制経済を推進している。国有企業が民営企業よりも重視され、中国の改革開放路線をひっくり返す動きがそれ。これは、中国一般国民の利益を踏みにじるものだ。これだけではない。監視カメラで市民の自由を束縛して、束縛から自由へという人類発展史を逆回転させる動きを強めている。これは、人類普遍の目標である民主主義を否定している。中国が、恐ろしいことを企んでいることは疑いない。