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GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)は、11月23日午前零時に失効する。米国は、米中冷戦の始りを意識して、何としても韓国にGSOMIA破棄を思いとどまらせるために最後の説得に乗り出す。ミリー米統合参謀本部議長は12日、東京で安倍首相と会談。外相・防衛相とも会談して「米国案」の承認を得たと見られる。それは、「期限延長」であろう。

 

米国が、ここまで膝を折って韓国を説得しようとする「真意」は今後、本格化する米中冷戦への準備である。中国と軍事的に対峙するには、同盟国との絆を固めなければならない。次世代通信網「5G」について、中国ファーウェイ製品を拒否させるのは、軍事情報が中国へ流れるリスクの防止が目的である。韓国軍も、ファーウェイ製品には「バックドア」が付いていることを確認、全軍に危険性を周知させたところだ。

 

このように将来、「第三次世界大戦」も危惧される状況が予想される中で、韓国政府の態度は子ども同然である。「日本が憎い」という感情論に100%支配されている。

 

『聯合ニュース』(11月12日付)は、「米軍首脳部、13日から相次ぎ訪韓、GSOMIAで圧力強める」と題する記事を掲載した。

 

韓国が終了を決定した日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を巡り、維持を求める米国の圧力が14日と15日にソウルで開かれる韓米軍事委員会(MCM)と韓米定例安保協議(SCM)で最高潮に達する見通しだ。

MCMとSCMでは両国の連合防衛体制の確認や北朝鮮の核・ミサイルへの対応などの軍事懸案を協議してきたが、今年はGSOMIA問題が最大の争点になるとみられる。韓国の国防部関係者は「GSOMIAは両会議の公式議題ではない」としながらも、「韓米日の安保協力問題を議論する際、自然にGSOMIAを取り上げざるを得ないと思う」と述べた。

 

(1)「米政府と軍の関係者は、韓国が日本とのGSOMIAを終了すると決めたことに懸念を示し、韓国に対し直接・間接的に圧力をかけてきた。今週、ソウルに集結する米軍首脳が韓国国防部と合同参謀本部に対し、GSOMIAを維持するよう圧力を最大限に高めるとみられる。MCMに出席する米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長や同本部の主要幹部、デービッドソン・インド太平洋軍司令官らが13日にソウルに到着する。SCMに合わせ、エスパー国防長官やシュライバー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)らは14日に訪韓する」

 

13日と14日は、米軍と米国防総省のトップ4人が、来韓するという「緊急事態」である。米国が、ここまで誠意を見せて説得しても、韓国が受入れないならば、代償として米軍の駐留費を大部分、払えと言う姿勢と見られる。米国が、これだけ犠牲を払って韓国を防衛しているにもかかわらず、その真意を理解して貰えないならば、駐留費を払えというのだろう。米国の言い分には、納得できる面が多いのだ。

 

(2)「韓国と日本が2016年11月に締結したGSOMIAは今月23日に失効する。韓国は日本が7月に断行した対韓輸出規制強化を撤回すればGSOMIAの終了決定を見直す考えだが、日本は輸出規制とGSOMIAは別問題として応じる気配を見せていない。米国は韓国への圧力強化に動いている。米統合参謀本部によると、韓国に先立ち日本を訪問するミリー氏は軍用機内で、韓国と日本の関係がぎくしゃくすれば北朝鮮と中国の利益になるとして、「円満に解決する必要がある摩擦であり、われわれに役立つ方法で摩擦を通過しなければならない」との認識を示した」

 

韓国は、GSOMIA破棄が中ロ朝に利益になっても構わないという姿勢である。それでも、「憎い日本に屈する訳にはいかない」というのだ。これが、韓国の本意かも知れない。韓国は、中ロ朝と妥協して安全保障を維持するという意思表示にも受け取れるからだ。こうなると、米中冷戦下において、米国は韓国を防衛しなくてもいいことになるという重大な意味を持つ。

 

(3)「米国の強い圧力を受け、韓国がGSOMIAの延長を検討する可能性があるとの見方もあるが、韓国国防部の崔賢洙(チェ・ヒョンス)報道官は11日の会見で、「GSOMIA延長を検討したことがないのか」との質問に対し、「今のところないと承知している」と答えた」

 

確かに、韓国が駆け引きして米国から何らかの言質を取る戦略かも知れない。土壇場で妥協するという戦術だ。12日、安倍首相と会談したマーク・ミリー米統合参謀本部議長が、「GSOMIA期限前に解決したい」と語った。日本側の「了解」を得たサインにも読める。こうなると、ギリギリの線でGSOMIAは「失効回避」になるかも知れない。その場合は、「期限延長」であろう。11月23日午前零時の期限を延長か、期限撤廃になろう。

(4)「米軍首脳部はGSOMIA延長だけでなく、2020年以降の在韓米軍の駐留経費負担の増額も強く迫るとみられる。米側は韓米合同軍事演習にかかる費用も含め、今年の分担額の5倍を超える50億ドル(約5460億ドル)を求めているとされる。米国防総省によると、ミリー氏は軍用機で、「普通の米国人は在韓、在日米軍について、なぜ彼らがそこに必要なのか、どれほど費用がかかるのかを尋ねる」と述べた。韓国軍関係者によると、米統合参謀本部議長が米国人は在韓、在日米軍の必要性と費用に疑問を抱いていると公に言及するのは異例だ」

 

韓国軍の消息筋は、「防衛費(在韓米軍の駐留経費)に関しては主に米国務省と国防総省側の関係者が言及してきたが、統合参謀本部議長まで米軍の必要性や駐留経費について言及したのは(増額を巡る)戦線を大きく拡大する狙いとみられる」と述べたという。この狙いの中に、米国が韓国を同盟国の「外様」扱いし始めていることに気付くべきだ。日米同盟は「親藩」扱いである。多分、米英同盟に次ぐ濃密な関係が、日米同盟の格と言える。