a0960_008527_m
   

中国にとって、香港の学生デモ以上に難題の香港関連法案が、米国上院で18日にも可決成立する見込みが強まってきた。当初の見込みでは、15日と見られていたものだ。本欄ではすでに11月16日に取り上げている。その続報である。

 

法律名は「香港人権・民主主義法案」である。米下院はすでに可決しており、上院の採決を待つばかりである。法案は、香港が米国法の下での特例扱いを受ける立場にあるかどうか毎年検証するよう国務省に義務づける。検証で条件が満たされていないと判明した場合、大統領は貿易、関税、航空、金融面などでの協力について香港の特権をはく奪することができる。同法案はまた、恣意(しい)的な拘束、中国本土への拘束者の移送、人権侵害に関与した中国あるいは香港当局者に対し、米国が制裁措置を適用することを認めている。

 

現在、香港が米国から与えられている特権である貿易、関税、航空、金融面などの優遇策が、中国の圧政しだいでは剥奪されるという内容だ。中国は、香港を活用して金融や投資の窓口に使ってきた。それも、米国からの特権が利用できたからだ。

 

この特権を失うようなことになれば、中国が香港を「一国二制度」で利用できるメリットを失う。大変な損害を被るはずだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月17日付)は、「米中協議、香港火種に 米議会が『特権剥奪法案』」と題する記事を掲載した。

 

米連邦議会で香港での人権や民主主義を支援する「香港人権法案」を可決する可能性が出てきた。同法案は香港で不当拘束などの人権侵害があれば、関税やビザ発給など米国が香港に認める特権を剥奪できる仕組みだ。下院は通過済みで上院でも早ければ18日に採決する。同法案が成立すれば中国の反発は必至で、両国の貿易協議が一段とこじれるリスクもある。

 

(1)「米議会では、「香港人権・民主主義法案」の審議が最終局面に入った。同法案は香港で「一国二制度」が保たれているかを監視するよう米国務省に求める。その上で香港で人権侵害があれば、米国が認める貿易や金融などの特権を香港から剥奪でき、関与した中国や香港の当局者に制裁措置を講じることも認める。下院は10月に可決済みで、上院でも早ければ18日に可決する可能性がある」

 

香港市民が星条旗を振って米国の支援を要請していたが、「香港人権・民主主義法案」が成立すれば、中国にとっては脅威である。米国は、中国の手荒な警察力行使を抑制すべく前記の法律を使い、香港へ与えた特権を剥奪すれば、「一国二制度」のメリットは消えてしまうのだ。中国にとっては重石の法律となろう。

 

(2)「米政権は知的財産権の侵害などを理由に中国との関税合戦に突入しているが、米議会の強硬姿勢も目立つ。法案提出者であるルビオ上院議員(与党・共和党)は「米国は中国に対して、香港市民の奮闘を自由世界が支持しているとのメッセージを発する必要がある」と早期採決を要求。野党・民主党の上院トップ、シューマー院内総務もトランプ大統領に中国との対決を求めており、与野党をまたいで香港人権法案への賛同者が多い」

 

問題は、この香港特別法が成立した場合、現在、折衝中の米中通商協議に与える影響を考慮しなければならない。中国は一応、内政干渉と言って抗議するだろうが見当違いである。本来ならば、米国は香港に与えなくてもいい特恵であるからだ。その前提条件が消えれば(民主化の後退)、米国は見過ごす訳にはいかない。中国が通商協議を中断すれば、中国経済の傷はさらに深くなる。

 

(3)「米議会が、人権侵害を理由に新たな制裁に道を開けば、中国の反発は必至だ。習近平体制は人権問題に最も過敏に反応するだけに、中国外務省は「同法案が成立すれば、主権を守るために効果的な措置を講じる」と報復措置すら視野に入れる。ホワイトハウスは中国との貿易交渉で、農業や金融分野などで「第1段階の合意」を目指し、11月中の協定署名に向けて最終調整中だ。交渉終盤で米議会が「香港人権法案」を可決すれば、中国が態度を硬化させて貿易協議が再び膠着するリスクも残る。同法案の成立にはトランプ氏の署名が必要になるが、米政権にとって中国との対決姿勢を鮮明にするか、早期合意を優先するかを選ぶ試金石ともなる」

 

米議会は、人権問題にナーバスである。トランプ氏が、署名を遅らせると議会の反発も大きくなる。署名時期がフットライトを浴びる。それも、時間の問題だ。早晩、署名は避けられず、これから一波乱も二波乱も起こりかねない状況になってきた。中国は、痛いところを突かれた感じだ。