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『ロイター』(11月20日付)によれば、米中交渉「第1段階」の署名は、来年1月に延びそうだという。中国提案に米国が乗らないためだ。米国は、中国の経済苦境が深刻化しているとの確信を深めており、「ゆっくり料理」という心境に見える。

 

『大紀元』(11月21日付)は、「米中通商第1段階合意が難航か、トランプ氏『デイールするかは決めていない』」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領がこのほど、米中通商協議の「第1段階」の合意について消極的な姿勢を示した。ロイター通信などは、年内の合意が難しく、双方の交渉が来年にずれ込む可能性が強いとの見解を示した。

 

(1)「トランプ大統領は19日、「中国は私が望むよう形で取引をせざる得なくなる」、「もし中国と合意できなければ関税をさらに引き上げる」と述べた。20日、大統領は記者団に対して、米国は引き続き中国側と交渉しており、「中国はデイールをしたがっているが、問題は私がデイールを行いたいかどうかだ。なぜなら、私は今起きていることに満足している。われわれは数十億ドル規模の(関税)収入を得ているからだ」と話し、米経済は好調であると強調した」

 

NY株式市場で最近、「逆イールド」(短期金利が長期金利を上回る:景気後退シグナルとされている)が解消されたこともあり、トランプ氏は米国経済の先行きに楽観的になっているのだろう。逆に、中国経済はますます苦境にはまり込んできた。10月に公表されたBIS(国際決済銀行)による論文では、「逆イールド」よりも「金融サイクルの後退」こそが重要と指摘した。これによると、中国が本格的な景気後退リスクを抱えていることが明らかになっている。トランプ氏の楽観論は根拠のないことではない。

 

(2)「米中両国は10月上旬に開催された貿易交渉において、口頭で「第1段階」の合意をした。当初、11月に米中首脳が合意文書に署名するとの見通しだった。ロイター通信20日付は、情報筋の話として、第1段階の合意は来年に延期されると報じた。報道によると、中国側は合意条件として、米政府に関税撤廃拡大を要求している。その一方で、米政府は、さらなる関税引き上げの中止の見返りに、中国当局により大きな譲歩をするよう求めている。米国政府は1215日に、約1560億ドル相当の中国製品への追加関税を実施する予定」

 

中国は、自国経済の苦しさからさらなる関税緩和を求めている。米国は、逆に米国の要求(地手財産権など)を飲まなければ、さらなる引上げをちらつかせている。これでは、妥結点が見つかるはずがない。

 

(3)「ロイター通信は、米上院で19日、香港の高度な自治や人権を擁護する「香港人権・民主主義法案」が可決したことも、米中貿易交渉が難航している一因だと指摘した。ペンス米副大統領は19日、中国当局が香港市民の抗議活動を暴力で鎮圧した場合、中国との貿易合意が難しくなると述べた。野村総合研究所チームエコノミストのリチャード・クー氏は米CNBCに対して、米中両国の経済指標を比較し、中国経済が「著しく失速している」「貿易戦は、米経済よりも中国経済に大きな打撃を与えている」と指摘した。クー氏は、景気悪化の圧力から、「中国側が早期に貿易合意を図りたいはずだ」との見方を示した」

 

中国は実勢悪に耐えきれない状況に追い込まれている。それでも習氏の指示で、我慢をかさねている。きわめて危険だ。世界を巻き込む不況の伝播を起こしかねない状況である。王岐山国家副主席は21日、北京でのニューエコノミー・フォーラムで、「中国は国内外で深刻な課題に直面しているが、政策変更を断行すると表明。リソース(資源)の配分で引き続き市場に「決定的な役割」を果たさせるとともに、平和的な発展の道を選択し続けると語った」(『ブルームバーグ』(11月21日付)

 

この王氏の発言は、中国の苦境を物語っている。1年前には、聞かれなかった言葉だ。この市場改革指向の発言は、習近平氏の「脱市場路線」と真逆である。どこまで本当か、真偽のほどは分らない。米国向けのリップサービスであろう。

 

(4)「CNBC中国支局長のユーニス・ユン氏は18日、「中国当局者から得た情報では、中国側は今、米と交渉を続けながら、トランプ大統領の弾劾調査と来年米大統領選挙の結果を待つという戦略をとっている」とツイッターに投稿した」

 

WSJによれば、トランプ氏の弾劾調査は中身のない「ショー」と切り捨てている。これまで知れ渡っている情報の繰り返しとされている。世論調査でも、トランプ氏の支持率に響いていないのだ。中国は、トランプ氏の足下を見ながら通商協議をすれば、大穴に飛び込むリスクの方が高いようだ。