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米国は、民主主義の真骨頂である人権擁護の刃を中国に突付けた。香港人権法がそれだ。トランプ大統領の署名が27日に終わって発効した。トランプ氏は、中国と通商交渉の真っ最中だけに、この法案の影響を考慮して署名を延ばすのではという観測もあった。こうした予測を覆し、通商と人権擁護は別問題という原則から、署名に踏み切ったと見られる。

 

中国は早速、反発して「報復」を公言している。報復策としては、何をするのか。米国との通商協議を打ち切ることであろう。困るのは中国である。国内経済は一段と疲弊し減速している。

 

中国財政省は11月27日、来年の特別地方債発行枠のうち1兆元(1420億7000万ドル)を今年に前倒しすることを明らかにした。今年の発行枠の47%に相当するという。来年執行する予定の地方債発行枠の約半分を、繰り上げ発行せざるを得ない事態だ。インフラ投資を繰り上げ実施しして、GDP成長率を維持する事態に追い込まれている。

 

「中国財政省は地方政府に対し、特別債をできる限りに早期に発行・利用するよう指示。「来年初めに確実に成果が出るよう、できる限り早期に景気を効果的に押し上げるべきだ」と表明した。多くの地方政府は、減税や景気減速に伴う歳入の減少で財政が悪化しており、中央政府が景気対策として期待を寄せる大型インフラ事業の実行が難しくなっている」(『ロイター』11月27日付)

 

中国経済は、まさに「尻に火がついている状況」である。ここで米国に報復したら、中国経済自体が真っ逆さまに落込むリスクを抱える。よって、報復は不可能だ。

 

『ロイター』(11月28日付)は、「米大統領、香港人権法案に署名、中国は報復を警告」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領は27日、香港の反政府デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法は成立した。中国政府は28日、「断固とした報復措置」を取ると表明し、香港に干渉しようとする試みは失敗すると警告した。中国外務省は声明で、香港を巡り米国が「独断的な行動」を続ければ、米国は中国の報復措置の影響を受けることになるとした。

香港政府は、同法の成立はデモ参加者に誤ったシグナルを送り、香港の内政に「明らかに干渉」するものだと反発した。

 

(1)「法案は前週、上院を全会一致で通過し、下院では1人を除く全員による賛成で可決された。中国は内政干渉で国際法違反に当たると強く反発していた。香港に高度の自治を保障する「一国二制度」が守られ、米国が香港に通商上の優遇措置を与えるのが妥当かどうか、少なくとも1年に1回検証することを国務省に義務付けている。香港で起きた人権侵害の責任者には制裁が科せられる。 トランプ氏は香港港警察向けに催涙ガスや催涙スプレー、ゴム弾、スタンガンなど特定の軍用品を輸出することを禁じる法案にも署名した」

 

香港人権法は、米議会でほぼ100%の支持で可決されたものだ。米国民の総意と言える中で、大統領が署名拒否することは不可能である。来秋の大統領選で不利な戦いを強いられることは明白である。

 

(2)「トランプ氏は声明で「習近平中国国家主席と香港の市民に対する尊敬から、これらの法案に署名した。中国と香港の指導者と代表者が対立を友好的に解消し、長期的な平和と繁栄をもたらすことを願うものだ」と説明した。来年の大統領選に向けて中国との通商合意を最優先とするトランプ氏は、これまで法案に署名するか拒否権を発動するか明確にしていなかった」。

 

トランプ氏は声明で、中国と香港の指導者が香港市民と平和的な関係が維持できるようにと希望を託した。中国にとって、香港デモに対して弾圧を加えることは不可能になった。痛手であろう。ということは、香港市民が民主化要求デモを自由に行える保証を与えられたに等しいからだ。

 

(3)「関係筋によると、議会が法案を可決した後、トランプ氏が支持した場合に通商交渉に悪影響が及ぶかどうか大統領の側近が協議した。最終的には大半がデモ参加者への支持を示すために署名することを勧めたという。法案が圧倒的賛成多数で議会を通過しており、拒否権を行使しても再可決される可能性があったことや、香港の区議会選挙で民主派が圧勝したことも、判断材料になったとしている。共和党のルビオ上院議員は、トランプ氏の署名を歓迎する立場を表明。「中国が香港の問題に介入したり影響力を行使したりすることを阻止する新たな意味のある手段を米国は手にした」とする声明を発表した

 

ルビオ氏は、対中強硬派として知られている。次々と対中強硬法案を超党派で成立させている。将来は共和党候補として、米国大統領選に出馬する可能性を秘めた「成長株」と見る。ルビオ氏が、下線で引いた部分で指摘しているように、中国は香港へ干渉する手段を今回の「香港人権法」で封印された。中国の受けるダメージは計り知れないだろう。