a0960_006628_m
   

香港区議選で、民主派は全議席の86%を獲得して大勝した。親中派は、わずかな13%である。残りは独立系の1%だ。中国指導部は、余りの大敗に腰を抜かし、中国本土での報道を禁じるという醜態を演じた。

 

中国国営の中央テレビは24日投票の区議選の直前まで、「投票に行って暴力を蹴散らそう」と、選挙の大切さを訴える香港各界のようすを伝えていたという。それが、声も出ないほどの惨敗に終わった。香港市民の民意を完全に見誤った理由を探っていくと、意外にも「官製情報網」の弱点が曝け出される。党組織の末端からは絶えず、習近平氏を称える情報だけしか上げられないシステムの欠陥というのだ。

 

戦時中の日本と同じだ。「大本営発表」のウソ情報が、日本全国を駆け巡っていた。日本軍の敗退・撤退は、「転進」と実態を誤魔化す手法が取られたのだ。現地部隊長の偽情報で、参謀本部すら実態を把握できずにいたケースもある。現在の中国も同じことが行なわれていると思えば良かろう。

 

『大紀元』(11月28日付)は、「香港区議選の結果に落胆した中国指導部、ニセ情報で情勢を誤判断か、民意を読み取れず」と題する記事を掲載した。

 

香港の親中派メディアは選挙後、「情勢を見誤った」との評論記事を次々と掲載した。ニュースサイト・香港0125日、情報筋の話を引用して、北京の最高指導部は選挙の結果に落胆したと報じた。報道は、「指導部は、今回の選挙は建制派にとって厳しい戦いになると予想したが、これほど『悲惨な』負け方は想像もできなかった。

 

(1)「情報筋によると、中国指導部は、「投票日前の2週間に起きた香港中文大学や理工大学での混乱、デモ隊による海底トンネルの封鎖、デモ隊が投げたレンガに当たって70歳の市民の男性が死亡したことなどで、「香港政府への不満より、デモ隊の暴力への嫌悪感の方が強いと考えていた」。この情報筋は、「当局は今後、暴力と混乱を制止するという現在の方針を見直すだろう」と指摘。米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は25日、同誌のジェームス・パーマー副編集長が執筆した評論記事を掲載した。記事によると、24日の香港区議会選挙後、中国各メディアの編集部は混乱し、「どうやって中国共産党に有利な報道をすればよいのか」と頭を抱えていたという」

 

パーマー氏が共産党機関紙・人民日報とその傘下の環球時報、英字紙チャイナ・デイリーの記者に取材したところ、この三大官製メディアは24日以前に、親中派の大勝を見込んで、あらかじめ記事を書き上げていたという。「得票数だけを空欄にしていた」というのだ。いわゆる「予定原稿」を事前に書けるほど、親中派の大勝を信じて疑わなかった。

 

(2)「中国習近平指導部が香港情勢を誤判した原因の一つは、指導部が得た情報はすべてウソだったということが挙げられる。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が10月半ばに行った報道によると、中国当局と30年間以上の付き合いのある米当局者は、中国の末端組織は中央政治局を含む上層部に偽情報を伝えていることを明らかにした。米当局者は「中国の末端組織は常にウソを言っている」と述べたという」

 

情報が隠蔽されている社会では、偽情報が罷り通るもの。中国が、極度に情報管理している結果、習近平氏もそれによって騙されるという滑稽な話になる。言論の自由を弾圧すると、こういう偽情報が末端から上がってきても、「真偽」を判定することができないのであろう。腹を抱えるほど笑えるニュースだ。

 

(3)「FT紙は、習近平政権が発足してから、中国共産党の全体主義を強めたことが、香港情勢を悪化させた主因だとの見方を示した。この体制下で、末端組織の幹部が上層部に「悪いニュースを伝える」ことが憚られている。「例えば、中国でまん延しているアフリカ豚コレラに関して、地方政府は中央政府に対して各地の感染の実情を報告できない」という。中国国内法学者の張傑氏は今年3月、米中国語テレビ放送・新唐人の取材に対して、地方政府の幹部は「失脚を恐れて、アフリカ豚コレラの感染状況を隠している」と指摘した」

 

中国では、毛沢東時代に経済の「大躍進運動」(1958~61年)を起こして、結果的に大失敗した。1500~2000万人の餓死者を出した背景には、末端からのウソ情報が悲劇を生んだ。食糧が増産されていないのに、逆の結果を報告して招いた事件だ。組織の末端は、目標未達の責任を負わされる。だから、ウソを報告する。GDP統計のウソも同じパターンである。

 

統制経済でなく市場経済が、ウソ情報を根絶させる。政治的には、言論の自由がウソの報告を見抜き、正しい情報が伝わるようになる。習近平氏の専制体制が、中国の経済・政治を歪めている。