あじさいのたまご
   

韓国は、政治的に未熟な国である。検察が、大統領府を家宅捜査したことに、大統領府と与党が怒り狂っているというのだ。これを、側面から応援するような『ハンギョレ新聞』にも失望を禁じ得ない。『ハンギョレ新聞』は、文政権支持のメディアであることは有名だが、普段は論理的な記事を書くのに、大統領府が家宅捜査という「一大事」では俄然、本領を発揮して政権擁護に回る。恥ずかしい報道である。

 

事件の顛末は、次のようなものだ。

『聯合ニュース』(12月4日付)が、側近の監察もみ消し疑惑」と題する記事を掲載した。
 

(1)「韓国のソウル東部地検は4日、柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市経済副市長への監察打ち切り疑惑と関連し、青瓦台(大統領府)秘書室を家宅捜索した。柳氏は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の盟友である故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が在任当時、盧氏の随行秘書などを務めた人物。先月末、収賄容疑などで逮捕された」

 

柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市経済副市長の賄賂事件が、大統領府の関与で捜査が打ち切られた経緯を捜査しているもの。盧武鉉元大統領と深いつながりがあるとされている人物の疑惑である。それだけに、大統領府が関与したのでないかた疑がわれている。

 

(2)「2017年に青瓦台・民情首席室の特別監察班が柳氏の不正情報を入手して監察を行ったが、上層部の指示で監察が打ち切りとなったとの疑惑が持ち上がっている。当時はチョ国(チョ・グク)前法務部長官が民情首席秘書官を務めていた。 同地検は「軍事上の秘密の保持が求められる大統領秘書室の家宅捜索はその責任者の承諾が必要だ」として、「対象機関の特殊性から、家宅捜索の方法は対象機関の協力を受け、任意提出を受ける形で必要な資料を確保する」と説明した」

 

下線部分は、この疑惑事件が政権上層部と繋がっているのでないかと疑っている。事件が途中でもみ消されたのでないかと今回、検察が本格的な捜査に乗り出したもの。

 

(3)同地検は17年当時、柳氏への監察がどの程度まで進められていたかなどを確認できる資料や報告書などを確保しようとしたようだ。柳氏への監察が原因不明の理由で打ち切りになったとみて、監察をもみ消した人物の特定に力を入れている。また、チョ氏や与党「共に民主党」のシンクタンクである民主研究院の白元宇(ペク・ウォンウ)副院長(当時は民情秘書官)らが会議を行い、柳氏の監察の打ち切りを決めたとの疑惑についても調べている同地検は昨年12月、特別監察班が民間人の監視・情報収集などを行っていたとの疑惑に関連し、民情首席秘書官室の反腐敗秘書官室と特別監査班の事務所などを家宅捜索した」

 

これだけ明白に、疑惑の証拠が取り沙汰されている。疑惑があれば、捜査するのが常道であろう。この捜査という「「常道」が、大統領府・与党・ハンギョレ新聞には不愉快千万としている。文政権の権威も地に落ちたものだ。

 

『ハンギョレ新聞』(12月4日付)は、「『検察は何も変わっていない』信頼も限界に沸き立つ与党・大統領府」と題する記事を掲載した。

 

(4)「大統領府を正面から攻撃するような様子を見せている検察の捜査に対し、大統領府と与党が沸き立っている。大統領府の怒りは、ユ・ジェス前釜山市経済副市長の監察もみ消し事件よりも、「民情秘書官室地方選挙介入疑惑事件」に向かっている。特に、選挙介入を既成事実とするような話が検察側から流れており、検察の取り調べを受けた元特別監察班員が自ら命を絶ったことで、大統領府と与党が攻勢に転じている。共に民主党は、早ければ今週末に任命される見通しの法務部長官が検察を特別監察すべきだと要求した

 

検察が、文政権に関わることを捜査するなと言っているようなものだ。検察は、捜査のプロである。素人が、それを非難することが正しいのか。現在、「チョ・グク氏」の法相辞任で空席になっている。さも、法相不在のために大統領府の家宅捜査が行なわれたような言い分で、司法の尊厳を著しく損ねる発言であろう。

 

(5)「大統領府のこのような対応は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が重ねて「公正な捜査慣行、人権保護の捜査」を呼びかけたにもかかわらず、改革を約束したはずの検察の態度が変わっていないという、より根本的な判断も作用したものとみられる。参謀たちの間では「検察は何も変わっていない」という激しい反応が出ている。大統領府内部では、ユン・ソクヨル検察総長に対し文大統領はこれ以上信頼を保つことが難しいだろうとみる人々が多い」

 

下線部を読むと『ハンギョレ新聞』は、メディアの保つべき中立の視点を捨てて、政権側と一体になっている。これでは、韓国メディアが健全な発展ができる訳もない。完全に、政権の「御用新聞」に成り下がっている。