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中国は、厚かまし振る舞いが多い。GDPで世界2位であるにもかかわらず、世界銀行からの低利融資を利用するずる賢い面がある。世界銀行は文字通り、発展途上国で安定した低利の資金調達ができない国を対象にした融資だ。ところが、中国はAIIB(アジア・インフラ投資銀行)を創設して、中国経済圏の拡大を図っている。また、「一帯一路」プロジェクトで、これまで数千億ドルの融資をしている国である。

 

その中国が、低利安定資金を求める多くの極貧国向けの融資を横取りすることは許されない。臆面もなく、今年もまた世界銀行に融資を申し込み、世銀で最大出資国の米国が、反対を表明した。当然である。中国へ融資する分を、極貧の諸国へ融資して生活基盤の向上に寄与させるべきであろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月6日付))は、「米、中国への世銀融資に反対、年10億ドル超」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ムニューシン米財務長官は5日の米下院金融サービス委員会の公聴会で、中国に年間10億ドル(約1100億円)以上を融資する世界銀行の金融支援に米国として「反対した」と述べた。世銀による対中融資を支持しない姿勢を鮮明にしたものだ。トランプ米政権は対中追加関税の第4弾を15日に発動するとしており、中国への圧力を一段と強めている」

 

世銀の前総裁が、辞任に追い込まれたのは中国との癒着が目立ったからだ。中国は世銀から有利な融資を受けて、その資金を「一帯一路」などで高利運用して、結果的に「サヤ」を稼ぐというあくどい商法を行って来た。

 

日本は、中国へODA(政府開発援助)の低利融資をしてきた。一方、中国は1990年ごろからアフリカへ融資・援助する資金に回していたのだ。これに怒った日本は、2005年を境にODAを打ち切った。その際の中国が何と言って抵抗したか。「日本がODAを打ち切れば、日中友好に影が指す」と脅かしてきたのだ。

 

中国は、こういう国である。一銭でも儲かることならば、恥も外聞もない国だ。今回、世銀から年間10億ドル超の融資を受けるという中国スキームは、AIIBからの融資か、「一帯一路」資金を回せば済むことなのだ。

 

(2)「ムニューシン氏が反対を表明したのは、2020年から5年間にわたり中国に融資する世銀の「国別支援フレームワーク」だ。同氏は公聴会で、中国による世銀への資金提供が受取額(注:返済額)を上回ったことに言及した。米中貿易戦争が続くなか、トランプ政権内や米議会では、中国を途上国として扱うべきではないとの見方が広がっている。与党・共和党のチャック・グラスリー上院議員は「なぜ米国の血税が中国への低利融資を支援するのか米国民は疑問に思うだろう」と発言した」

 

中国が、2020年から5年間で、総額50億ドル超の融資を受けるのは、この間の返済額を上回るものだという。これは、融資の累増を意味するもので、中国がドルの資金繰りに利用している疑いが濃い。中国は2020年以降、国際収支の経常収支が赤字スレスレとなる見通しである。そうなると、年間10億ドルでも貴重な「資金源」である。世銀融資でまんまとカバーする「セコイ」考えに至ったのだろう。「窮すれば鈍する」の典型例だ。              

 

(3)「米国が対中融資を拒むことで、ムニューシン氏とトランプ米政権で財務次官を務めた世銀のマルパス総裁との路線対立が鮮明になる可能性もある。マルパス氏は4月の総裁就任後、中国をけん制する姿勢を和らげたとみられている」

 

下線を引いた部分は、考えすぎであろう。米政権の意向で世銀総裁を任命するのだから、マルパス総裁が、米国の意向を無視すれば、前総裁と同じ辞任という道しか残っていない。それにしても、財務次官当時のマルパス氏は、中国への強硬論者であった。それが、半年余で中国寄りになったとすれば、中国の強い「供応」が成功したのだろうか。それ以外に「変心」の理由は考えられない。