テイカカズラ
   

『環球時報』と言えば、中国官営メディア『人民日報』の姉妹版であり、過激を売り物にしてきた。その環球時報が、予想外にも米国との摩擦問題で中国が冷静に対応すると報じている。これまでの過激性から言えば、想像もできない事態である。この裏には、中国経済が不動産バブルによって瀕死の重傷を負っていることがある。

 

中国においては、下部構造の経済が脆弱であれば、上部構造の政治・外交が、強硬対応できない理屈だ。中国が、米国に対して融和姿勢を取らざるを得ないほど、経済実態が悪化していることを言外に言っているのだろう。これまでの姿勢では、中国が対米貿易戦争で勝つまで戦うと息巻いていた。それが、完全に論調を転換した。

 

『レコードチャイナ』(12月7日付)は、「米中新冷戦をはねのけよ、中国は最後まで笑う中国メディア」と題する記事を掲載した。

 

中国メディア『環球時報』(12月6日付)は、「米中新冷戦をはねのけよ、中国は最後まで笑う」と題した記事で、現在の米中関係に中国がどう向き合うべきかを論じた。

 

(1)「記事は「米中関係はこれまでにない岐路に立っており、一部の米国人からは建設的な米中関係を徹底的に破壊しようという強い意思が感じられる。そういった人々を根本的に変えようというのは難しいことだ。われわれにとって、どのような行動を通して米中の今後の在り方を変えるか、また、どのようにして米中に新冷戦を引き起こそうとする勢力を食い止めるかということは、挑戦しがいのある課題となっている」と論じた」

 

中国は、米国との新冷戦を望まないとしている。従来の強硬論であれば、「われわれは最後まで屈しない」と言った形容詞を使っていた。それが消えていることに注目すべきである。ただ、これは本心でないことも事実だ。一時的に嵐を避けて、チャンスが来たら米国へ戦いを挑むという「革命理論」が死んだわけがない。

 

(2)「記事は米中の新冷戦をかつての米ソ冷戦と比較。「当時の冷戦は決して突然始まったわけではなかった。両者が激しくやり合った結果、最終的に後戻りができなくなったのだ。だが、米中の現在の状況はそれと本質的に異なる」とした。中国が、米国に対して採るべき態度としてまず、「米国は総じて冷静さを欠いており、一部の権力者や影響力のある政治エリートの態度は少しおこがましい。しかし、われわれはそれでも、『米国が米中関係をソ連のときのようにする力はない』と確信していなければならない。米国の挑発に対してわれわれが適切な戦略を採る限り、中国の利益は守られ、冷戦を仕掛けるという思惑もはねのけることができる」とした」

 

このパラグラフで注目すべきは、かつての米ソ冷戦時のソ連と比べ、現在の中国にはそのような力がない、と「確信」しなければならないとしている。この意味は、当時のソ連は孤立経済であったがそれでも、あれだけの経済力を維持した。現在の中国はグローバル経済下にある。米国が遮断すれば、中国は生きていけないという経済環境にある。よって、中国は、米国と対立して発生する経済的なブーメランが、極めて大きいとしている。これは、冷静な判断である。

 

(3)「さらに、「そのために、われわれは十分な戦略力を持つとともに、米国のあらゆる挑発の前に自信を保ち続けなければいけない。また、米国の挑発が実際にもたらす損害の程度を適切に評価しなくてはならない。われわれは米国の挑発に対応し、必要なら問題解決のために話し合うが、自ら摩擦や衝突を拡大させたり、特定の出来事が全体に影響を及ぼすよう促したりはしない」と続けた」

 

これは、米中貿易戦争の当初、中国がいきり立って「戦線を拡大」し現在の経済的な苦境を招いたことを反省している証拠だ。昨年5月、米国が打ち出した関税引上げ時に、米国を刺激する発言を繰り返し結局、現在の事態を招いた痛烈な反省が基本にあるためだ。

 

下線を引いた部分は、中国の反省を示している。努めて冷静に対応して、間違っても事態の拡大を行なわない、としている。随分としおらしくなったものだ。この裏に、経済の破綻がある証拠だ。

(4)「そして、「中国は米国を含む外部への開放を絶えず続けなければならない。このプロセスを米国の挑発に対する反撃と結びつけることで、どこかがおろそかになるという状況を防ぐことができるだろう。中国の対外開放戦略には、長期的に見れば米国の急進的な政策を頓挫させるという効果があると信じるべきだ。その結果が次第に表れるのを辛抱強く待つべきだ」と訴えた」

 

下線部分は、経済改革派の主張である。民族派が後退して、経済改革派が実権を握ったのだろうか。一瞬、そのように思わせるほど、市場開放を拡大してゆく方針を示している。市場開放こそ、中国は米国の要求する経済改革に対応する路線である。このことにより、米国の急進的な政策が「頓挫」するとしている。つまり、米国の対中国要求は、経済改革であり、市場開放であることを熟知している。

 

(5)「このほか、「米国に対抗して強硬な姿勢を示そうとする必要はない。中国はその粘り強さと柔軟性においてゆうに米国を超えている。戦略力と機動力に関してはなおさらだ。これは中国が米国と渡り歩く中で誇りにもなっている。米国のエリートが繰り広げようとする冷戦を失敗させ、米国の劣悪な態度の前にも中国の発展を順調に続けよう。最後まで笑うのは私たちなのだ」とも論じた」

 

下線のように、中国は新冷戦に乗らない、としている。米国と真っ正面から軍事面を含めた対決しないと言っている。本心かどうかは不明だが、「緊急避難的」発言であることは間違いない。

(6)「最後に、「米中関係は今後決して、過激な米国エリートが思い描く台本の通りには進まない。われわれは卓越した表現を用いて本当の米中関係を描き出そう。人類の大国同士の歴史において初めて、『トゥキディデスの罠(覇権国と新興国の間で戦争が不可避になること)』から逃れるのだ。これこそが中国の、そして米中両国の成果となるだろう。中国の台頭は人類の21世紀にふさわしいものとなるはずだ」と結んだ」

 

下線の部分が真実とすれば、「革命理論」の放棄である。米中共存を目指すとしている。だが、それを信じる証拠は皆無だ。領土拡大、人権弾圧、技術窃取 過激なスパイ活動。一つも改まったことはない。必要なのは、論より証拠なのだ。