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韓国は、THAAD(超高高度ミサイル網)設置に絡んで中国から経済制裁を受けてきた。現代自動車やロッテが、中国市場で不買運動の対象にされたほか、中国人の韓国旅行も制約されるなど、酷い目に遭わされた。それでも、抗議もせずに泣き寝入りである。

 

これに懲りた韓国は、中国への輸出依存度(約4分の1強)を下げるべく、ASEAN(東南アジア諸国連合)10ヶ国への接近を図っている。だが、ASEANは完全に「日本の庭」になっている。日本は、太平洋戦争で甚大な被害を与えたが、戦後の賠償とODA(政府開発援助)で、経済復興を支援してきた。これが、「災い転じて福となす」で、日本が深い信頼を得ている。

 

韓国は、こういう日本とASEANの関係を理解していないのだ。「反日発言」の定番では、日本が「アジアの孤児」と憎まれ口を叩いている。実態は、逆である。世論調査によると、ASEANでの日本評価は、全体の6割から高評価を得てい。後の4割は、中国や韓国である。

 

日本は、ASEANにおける絶対的な評価を得ている中で、韓国がASEAN市場へ乗り出すのだ。韓国は、経済的なメリットを求めると同時に、ASEANの結束力に乗って、北朝鮮問題解決の一助にしたらどうか、という提案が出て来たので取り上げたい。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月9日付)は、「韓国のASEAN接近、トクするのはどちら? 」と題する記事を掲載した。同紙のアジア総局長 高橋徹氏の記事だ。

 

対馬海峡を臨む韓国第2の都市、釜山。11月25日から2日間にわたり開いた東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議が開かれた。175月に就任した文大統領は、同年11月に訪れたジャカルタで、ASEANとの連携を深める「新南方政策」を表明した。「新」の接頭語が示すように、朴槿恵(パク・クネ)前政権が進めたASEAN関与政策の焼き直しだが、切実感は増している。

 

(1)「文政権の外交は、四面楚歌(そか)ならぬ三面楚歌に陥っている。「西」の中国とは、在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を巡って関係が悪化し、韓国経済は大きな打撃を受けた。「東」に目を向けても、米国と軍駐留費交渉がこじれ、日本とは元徴用工の問題に端を発した深刻な対立の出口が見えない。看板である「北」との融和も立ち往生したままだ。活路は「南」、人口6億人を超す成長市場のASEANしかない。文氏は199月にタイ、ミャンマー、ラオス歴訪を終え、まだ5年任期の半ばながら、ASEAN10カ国を訪問した初の韓国大統領となった」

 

文大統領は、就任と同時にASEANに注目し、すでに10ヶ国を訪問するなど、積極的である。


(2)「対ASEAN関係で、韓国がライバル視するのは日本だ。ASEANとの窓口となるジャカルタの各国政府代表部に、日本は15人を駐在させている。新南方政策の表明後、韓国は人員を増やし、現在は日本を上回る。それでも存在感が見劣りする理由は、経済協力の数字をみれば分かる。ASEANとの直近の貿易額は日本の7割の水準。直接投資は3割、政府開発援助(ODA)はわずか1割強にとどまる。唯一の例外はベトナムだ。08年にサムスン電子がスマートフォン生産で進出して以降、韓国の対ASEANの貿易・投資の半分を占め、日本を大きく上回る。それでも日本の政府関係者は「サムスンはすごいが、それだけ。ASEAN外交で我々が気にする相手じゃない」と冷静に分析する」

 

ASEANと韓国の関係は次のようなものだ。

1.直近の貿易額は日本の7割の水準

2.直接投資は同3

3.政府開発援助(ODA)は同1割強

 

以上のデータを見れば、ASEANに対する日韓の差は大きい。韓国経済の衰退を計算に入れれば、韓国がASEANで日本の位置に接近することは不可能に見える。となれば、韓国がASEANと深める絆は、北朝鮮への「絆」に活用することだ、という視点が浮かび上がる。ASEANは、北朝鮮と関わりが深いからだ。

 

(3)「(韓国の)ベトナム偏重が不満なASEAN各国は、もちろん韓国からの投資・援助の拡大を歓迎する。その半面、人口5千万で成長率も鈍る韓国は、輸出市場としての魅力に乏しい。米中や日本と違い、安全保障での協力をあてにできるわけでもない。では新南方政策の利得は韓国が上回るのか。そうとばかりもいえない」

 

ASEANは、韓国を輸出市場としてみれば人口5000万で魅力は大きくない。日本の半分以下である。韓国は、経済面よりも他の面でASEANと協力強化できるはず。それが、北朝鮮への斡旋期待である。南北朝鮮は、同じ民族ゆえに、反発しやすい面もある。そこをASEANに斡旋して貰うという「迂回路」にASEANルートを重視するのだ。

 

(4)「小国の集まりであるASEANは、束になることで国際的な発言力を確保し、大国間の「緩衝材」となってきた。日米中韓やインド、ロシアを招き、毎年開く「東アジア首脳会議」はその最たる例といえる。韓国がASEAN市場の成長を取り込むだけでなく、ASEANも朝鮮半島の安定に関与し、国際社会での発言力を高める互恵の関係がみえてくる

 

このパラグラフは、新鮮な提案である。韓国が多面的な外交を展開するには、ASEANルートは貴重な存在となろう。同時にそれは、日本にとっても同じことだ。