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中国は、対米関係が日に日に悪化状態である。経済面でも追い詰められてきた。そこで、急浮上してきたのが日本の役割だという。米国トランプ大統領と安倍首相が「ツーカー」の関係である。この密接な日米関係を利用して、米中関係悪化の打開を目指すという狙いだ。

 

その中国の対日司令塔が王岐山国家副主席とされている。習近平国家主席の盟友だ。習―王のコンビで、日本仲介による米国対話ルートを確保しようという布石が打たれつつあるというのである。王岐山氏は、先の天皇陛下即位礼に出席しており、日本とのパイプを太くしている。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月10日付)は、「習近平経済・外交は危機、盟友の王岐山氏も日本シフト」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集委員兼論説委員の中沢克二氏である。

 

習近平は17年共産党大会までの第1期で苛烈な「反腐敗」運動によって権力をかなり掌握した。しかし、2期目以降、目立った業績はない。むしろマイナス面ばかりが目につく。対米関係が緊迫し、経済は厳しい。香港のほか、新疆ウイグルを巡る問題でも国際的な非難を浴びつつある。

 

(1)「苦境は政治局会議が開かれた6日夜の国営中国中央テレビニュースのラインアップと、翌7日付の共産党機関紙、人民日報1面を見れば一目瞭然だ。経済の危機回避を訴えた政治局会議の中身がトップ。そして米下院で可決された「ウイグル人権法案」を非難するニュースがいくつか続く。その間 に割り込んだのが何と日本絡みのニュースだった。国家副主席の王岐山(ワン・チーシャン)が、訪中した国家安全保障局長の北村滋と会談した映像が長々と流れる。堂々の4番手。異例の目立つ扱いである。中国の主要な報道は共産党の宣伝部門が仕切る国内、対外宣伝の手段だ。日本の登場には意味がある」

 

夜のテレビニュース番組の4番手に日本ニュースが登場したという。王岐山氏が、訪中した国家安全保障局長の北村滋氏と会談した映像が長々と流れたのだ。なぜ、「反日ドラマ」が常時、流されている中で、日本関連ニュースが好意的に扱われたのか。理由は、中国の日本接近である。

 

(2)「(米国の)ウォールストリートに知己が多い王岐山は、長らく経済面から対米関係の調整を引き受けてきた。だが、その神通力はトランプ政権になって失われつつある。最近、出番に乏しい。その代わりとして対日関係を担い始めたのだ。10月には天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に合わせて来日している。北村と会ったのも習近平からの直々の要請だった。中国のひょう変には理由がある。対日関係は、米国からの圧力に抗するため最大限、利用すべきターゲットだ。最優先は来年4月とみられる習近平の国賓訪日の実現である。7年前、中国各地で起きた激しい反日デモで多くの日本企業が襲われた経緯を思い返せば隔世の感がある

 

中国が日本へ接近しているのは、米中対立の中で「調整役」を日本に期待しているためだ。日本以外に、米国へ強いパイプがある国はない。中国は、これまで日本を「対米追随」と悪口を言ってきたが、その日本の仲介に期待せざるを得ない。不思議な役回りである。中国は当面、日本を批判できない立場になった。

 

(3)「対日急接近は、習近平の外交・経済政策が壁に突き当たった苦境の裏返しでもある。これは1989年の天安門事件の後、西側先進国の経済制裁に苦しんだ中国が、まず日本との関係改善に突破口を見いだした歴史と重なる。先に北京で拘束された北海道大学教授の早期解放もここに大きく関係している」

 

天安門事件の時も、日本が救いの手を差し伸べた。今回の米中対立。中国の運命を狂わす大事件である。中国の上から目線で米国に対応したなら、一発でやり返されるだろう。米国の持つ同盟国の数と外交力、経済力、金融力、どれを取っても中国の比ではない。日本は、中国を牽制する役割を基本としつつ、慎重に立ち回ることだ。

 

中国は、米国の持つ基本的な国力(知財・経済力・軍事力・人口動態)から見て、敵対できる次元にない。この厳しい現実を認識しないと、国力を消耗するだけの事態に追い込まれる。人類の歴史では、過去に戻ることはなかった。中国の政治制度は、未だに専制制度であり民主主義へ脱皮できずにいる。中国国民を監視カメラでコントロールできると考えているならば、思考停止状態だ。専制政治は、人類発展の通過地点の制度である。これを乗り越えて、民主主義に辿り着いたのだ。中国は、これから専制政治を克服する動きが始まるはず。共産党が、永遠の統治形態であるはずがない。

 

(4)「逆説的だが、もし中国経済が極めて順調で、対米関係も安定していれば日本の価値は大幅に薄れる。それは7年前の反日デモで証明済みだ。当時は日本をいくらたたいてもよいという雰囲気だった。こうした国際政治の厳しい現実を受け止めながら、日本側の利益に合致する新時代の日中関係を探る必要がある」

 

中国の日本接近は、便宜的手段である。日中の価値観が180度異なる以上、日中の政治的な友好関係は永続しまい。中国が、日本を利用価値がないと見れば元の「敵対関係」に戻るだろう。中国は、一時的に日本へ接近するだけである。