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米中貿易戦争は、ようやく休戦に向かっている。米中は13日、「第1段階」の合意を発表した。中国側は詳細を発表しなかった。米国側の発表では、中国が2年間で農産物500億ドルの輸入を約束した。

 

米国側は、次のような対応をとる。中国からの輸入品1560億ドル(約17兆円)相当への新関税を中止した。この関税は15日にスマートフォン、玩具、家電を対象に発動する予定だった。米国は約1200億ドル分の中国製品の関税率を現行の15%から7.5%に引き下げることにも同意した。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月13日付)が報じた。

 

今回の米中貿易戦争を振り返って分かることは、米国が主導権を握っていたことだ。中国は、関税面で報復措置を取ったが、米国のような多彩な報復を行えなかったことだ。口先では「強がり」を言ってみたものの、関税率引上げ以外には何もできなかた。

 

中国は一時、レアアース(希土類)の輸出禁止で対抗する噂を流した。習近平国家主席が、わざわざレアアース工場を視察し、TVで放送させるなど「やる気満々」であった。実際は、これを見送っており、米国をさらに刺激することを避けたのだ。

 

レアアースは、高度の軍事機器の制作過程で不可欠の素材である。元々は、米国発祥の技術であったが、今や米国は輸入国へ転落している。代わって、中国が世界最大生産国にのしあがった。鄧小平が、レアアースを戦略物資として位置づけ、貿易面での切り札に使うように指示していた素材である。ただ、2010年の尖閣諸島を巡る日中紛争で、レアアース輸出規制を行い、大失敗した経験がある。日米英三ヶ国が、WTO(世界貿易機関)へ提訴して、中国が敗訴したもの。

 

中国は、こういう手痛い打撃を受けているので、レアアース輸出規制を断念したのであろう。米国は、レアアースが軍事的に重要な素材であることから、いよいよ軍事用については自給体制を取ることにした。

 

『ロイター』(12月11日付)は、「米軍、兵器開発用のレアアース自給へ、中国依存を警戒」と題する記事を掲載した。

 

軍事兵器・エレクトロニクス機器の製造に用いる鉱産資源の国内供給体制を確立するため、米軍がレアアース加工工場建設への投資を計画していることが明らかになった。ロイターが米政府の資料で確認した。実現すれば、第二次世界大戦時の最初の原子爆弾製造以来、米軍が実用規模のレアアース生産に投資する初めての例になる。

 

この計画は、ドナルド・トランプ大統領が今年初めに出した命令に対応した動きだ。その中で同大統領は、戦略的鉱産資源を他国に依存していることが米国の防衛を損なう可能性があると警告し、米軍に対して希少原材料のサプライチェーンを刷新するよう命じた。

 

(1)「レアアース精錬量で世界首位の中国は、こうした特殊な鉱産資源の米国向け輸出を停止する可能性をほのめかしており、米国との貿易紛争において、自らの独占的な地位を武器にしようとしている。アラスカでレアアース関連プロジェクトの開発に当たっているユーコア・レアメタルズの最高経営責任者ジム・マッケンジー氏は、「米国のレアアース業界は中国との競争に向けて大きな支援を必要としている」と語る。「資金面だけではなく、政界からの幅広い支援が必要だ」

 

レアアースの鉱石掘削現場は、環境破壊の最たるケースと言われている。そこで、米国を筆頭にレアアース生産から撤退した。この裏には、中国が世界のレアアースで独占的強味を発揮すべく、一時的に価格を引下げる乱売によって、他国を撤退させた裏事情がある。中国は、最初からレアアースを戦略的に扱う「黒い意図」があった。鄧小平は、「アラブに原油があるように、中国にはレアアースがある」と豪語していたほどだ。

 

(2)「米政府資料によれば、米陸軍で軍備の検証を担当する部門は先月、鉱業企業各社に対して、いわゆる「重レアアース」を生産する試験的生産プラントのコストについて提案を募った。兵器利用に向けた需要の高い、特殊な鉱産資源のなかでもさらに希少な種類である。

提案の提出期限は12月16日。企業各社の関係者やこの件に詳しい情報提供者によれば、ユーコア、テキサス・ミネラル・リソーシズ、ライナスと株式非公開のブルーラインによる合弁事業などが応じるものと予想されている。米陸軍は、精錬企業が負担するコストのうち、最大3分の2を出資する予定。対象プロジェクトは少なくとも1つだが、複数になる可能性もあるという」

 

下線を引いたように、 米陸軍は精錬企業が負担するコストのうち、最大3分の2を出資する予定とされる。こうすれば、民間企業は安心して製造に取り組めるという配慮であろう。

 

(3)「レアアースをめぐる米中間の緊張は、少なくとも2010年には始まっていた。中国がこの年、外交上の対立を受けて日本へのレアアース輸出を制限し、希少鉱産資源の価格が急騰したことから、中国が米国に対しても同じ策を取るのではないかという懸念が米軍全体で生じたのである。業界幹部によれば、レアアース加工のための試験的生産プラントのコストは、立地や規模その他の要因にもよるが、500万2000万ドルになると思われ、本格的な実用プラントであれば総工費1億ドルにも達する可能性があるという。「国防総省がこの産業への資金的な支援に関心を示しているというのは素晴らしいことだ」と企業から歓迎されている」。

 

レアアース工場を建設するには、約1億ドルが必要とされる。この3分の2が政府補助で賄われるとすれば、生産への立ち上がりは早くなろう。中国は結局、レアアースを武器に米国を屈服させることはできなかった。