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中国は、世界の工場といわれてきたが、米中貿易戦争の影響と製造工程の急速なAI(人工知能)化によって、その座を揺さぶられている。米国は3年後、製造業のオペレーションで大卒者が現場に大量採用されると予測されている。結果的に、人件費は大幅に削減され、中国で製造するより、トータルコストが安くなる時代を迎える。中国は、世界一の人口に胡座をかいている時代でなくなった。

 

米中貿易戦争は、覇権戦争である。中国は、習氏が国家主席に就任以来、米国と覇権を争う姿勢を宣言したことが命取りになってきた。米中経済の将来性を考えれば、誰でも「米国有利」と判断する。企業は、勝ち馬に乗るべく米国へ付き従うのだ。習氏の妄言が、中国経済の足を引っ張っている。いずれ、習氏の責任追及の声が、中国に起こるだろう。

 

現実に、中国へ進出している米国企業の41%が撤退を計画する衝撃的な事実が判明した。外資企業の撤退は、中国にとっては「死の宣告」である。輸出減少がもたらす経常黒字圧縮によって、中国は大幅に海外活動を制約される。これまで、外資系企業の稼ぎ出す輸出という「他人の褌(ふんどし)」が利用できなくなるのだ。

 

『大紀元』(12月27日付)は、「中国離れ加速、米企業41%が中国転出を計画、33%が投資見合わせ」と題する記事を掲載した。

 

在中米国商工会議所の最近の調査によると、41%以上の米国系企業が中国からの転出を計画しており、33%以上が中国での投資を見合わせ、またはキャンセルを検討している。欧州や日本、韓国、台湾などに進出する企業も増えている。同所が在中の米国企業239社を対象に調査した。それによると、2019年、中国からサプライチェーンを移転することを決めた企業は22.7%だった。また将来、一部あるいは全部を中国から転出すると決めた企業は19.7%、投資の取りやめまたは延期した企業は33.2%だった。

 

(1)「この調査は、米国の対中関税が在中の米国企業に及ぼす影響を評価するものだ。シンガポールAT貿易コンサルタントによると、米中貿易戦争の前から、多くの外国企業が中国市場への過度の依存を懸念し、既にサプライチェーンの見直しに着手していた。米中貿易戦はこの動きを加速しただけだと分析した。すでに、アップル、ホームデポット、アマゾン、ヒューレットパッカード(HP)、デル、グーグル、ハズブロなど、米企業が中国での生産ラインの移転を計画している。台湾、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナムなどがその移転先となっている

 

人件費が、製造コストで大きな比重を保つ製品では、中国から周辺国へ転出している。ベトナムが、最大の受益国になっている。

 

(2)「アップルは、サプライヤーに対し、1530%の生産能力を中国から東南アジア諸国に移転するよう求めた。台湾の兆利はアップルのMacbook軸受のサプライヤーで、すでにタイ工場に500万ドルの投資計画を発表した。台湾の大手技術4社である鴻海(HonHai)、広達(Quanta)、英業達(Inventec)、仁宝(Compal)は、複数の米企業のサプライヤーだ。鴻海傘下の冨士康(Foxconn) は、インド・チェンナイの周辺工場でアイフォンXRの本格的な生産を開始した。同社幹部は、アイフォンの生産を中国からベトナム、インド、メキシコ、インドネシア、マレーシアなどへ移す計画があるとコメントを出している」

 

中国は当初、周辺国への転出が、インフラ関係の未整備で困難であろうと高をくくっていた。だが、急ピッチの環境整備で楽観論は消えている。アップルはサプライヤーに対し、中国から15~30%の生産能力を東南アジア諸国に移転するよう求めている。

 

(3)「米デルとHPのサーバーを手掛ける仁宝は、米国向けノートパソコンの生産ラインを台湾に戻し、中国工場への依存度を下げて、一部の小型家電製品の生産ラインをマレーシアに移そうとしている。アップルのコンピューターサプライヤーである広達は、生産ラインの一部を台湾に移転し、東南アジア市場を拡大するため、タイで子会社を設立した。また、米国のデータセンターも拡張した。またアップルの別のベンダーである仁宝も生産ラインを台湾に移し、ベトナムでの生産能力を増強している」

 

米国IT企業は、サプライヤーに「脱中国」戦略を取るように進めている。米中貿易戦争は将来、「冷戦」になると考えるのが常識になっている。

 

(4)「欧州企業も中国から移出している。12月初め、中国の欧州連合(EU)商工会議所の報告書によると、調査対象となったヨーロッパ企業174社のうち、10%は既にサプライヤーを替え、8%は一部の業務を中国から移転、あるいは移転させる計画がある。また、15%は中国への投資を延期させている。日本企業はスズキ、トヨタなど生産ラインの移管を検討している。マツダは一部をカンボジアなど東南アジアに、日本精工は特定の製品の生産を国内に戻す考えだ。韓国の現代(ヒュンダイ) 自動車と起亜 (キア) 自動車は、中国から部分的に撤退して、インドネシアとインドでの生産を増やした」
  

欧州企業も、米国企業と同じ動きである。日本企業、韓国企業も中国から生産ラインを周辺国へ移す動きが増えている。