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中国で習近平第2期政権発足時に、現在のような経済危機に襲われると予想した者はいなかったであろう。民族派は、意気揚々と「米国経済衰亡」、「中国経済飛躍」という妄想を習氏に吹き込んでいた。これを真に受けた習氏は、「米国覇権に挑戦する」、「2050年頃には経済力・軍事力で米国を抜く」とバブル経済に酔っていたのだ。

 

現在の中国は、酔いから冷めて深刻な事態だ。失業の嵐が吹きまくっている。無慈悲な首切りが行なわれており、突発的な社会騒乱発生を警戒せざるを得ない状況だ。バブル崩壊後、失業率はどの程度、高まるのか。日本を例に見ておきたい。

 

日本の失業率(%)

1990 2.10 (1月4日、株価大暴落)

  91 2.09

  92 2.15

  93 2.50

  94 2.89

  95 3.15

  96 3.37

  97 3.40 

  98 4.10

  99 4.67

2000 4.73

  01 5.04

  02 5.36 (失業率ピ-ク)

  03 5.24

  04 4.73

  

日本は、終身雇用制で人員整理せず、「社内失業」でカバーしたが、それも1998年ころから限界にぶつかった。それ以前の急速な円高で輸出不振に陥ったことも影響した。

 

こういう日本のバブル経済崩壊後に辿った「失業の大波」は、必ず中国経済にも表れる。特に、日本のような終身雇用制(当時)で守られていないだけに、失業が中国経済に及ぼす影響は甚大であろう。

 

『大紀元』(12月28日付)は、「中国当局、雇用安定再強化の指針を発表『失業ラッシュ』強く意識」と題する記事を掲載した。

 

中国国務院(内閣に相当)は12月24日、雇用安定の再強化に関する指針を発表した。指針は「規模性失業風険(大規模な失業リスク)」との文言を複数回用い、失業問題に対して中国当局が神経をとがらせている様子を映し出した。

 

(1)「李克強首相が署名した『国発(201928号文件』は、「国内外のリスクや課題が増える中、雇用の安定化の圧力が強まっている」との認識を示した。指針は、2019年下半期以来、企業が粗雑に従業員を解雇したケースが急増していると指摘し、「雇用の安定化をさらに重要な位置づけにする必要がある」と強調した。また、「大規模な失業リスクを全面的に回避・防止し、雇用情勢の安定を全力で確保しなければならない」と発表した

 

下線部分で今年下半期以降の首切り旋風が起こっていたことを示している。

 

(2)「同指針は、民間企業や零細企業向け融資を拡大し奨励すると唱え、雇用の促進や失業者への失業保険や生活保護費の支給も強調した。その一方で、「各地方政府は、大規模な失業による突発的な抗議事件に対応する体制を整えなければければならない。対立の激化と事態の悪化を防ぐ必要がある」「突発的で、大規模な失業リスクに備えて、条件のある地域では、失業リスク準備金を設立することも可能だ」と提唱した。さらに中国当局は、失業問題について「プロパガンダ宣伝を行い世論を導く」よう地方政府に要求し」

 

突発的な失業の発生を警戒している。これは、「金融連鎖倒産」に伴うもので、実態はここまで悪化してきた。同時に、これがもたらす社会騒乱の発生が警戒されている。まさに、臨戦体制だ。中国経済も落ちぶれたものである。

 


(3)「大紀元コメンテーターの李林一氏は、同指針は今後、広範囲に人員が削減されるだろうという中国当局の見通しを反映しているとした。「民間企業は国内約9割の雇用に貢献している。景気後退と米中貿易戦の先行き不透明感で、数多くの民間企業が経営破たんに追い込まれた」

 

中国一の富豪とされる、アリババ集団創業者の馬雲氏はこのほど、国内で行われた企業家フォーラムで、1日に5人の友人から借金を頼まれたことを明かした。馬氏は、中国民間企業の「難局は始まったばかりだ」と発言している。これは、馬氏の持論でもあり、中国経済の将来に警戒感を持っている。危機は、これから本格化するという立場だ。

 

(4)「国務院の指針に関して、中国版ツイッター「微博」では波紋が広がった。次のような書き込みがされている。

1)このニュースを見た途端、もうすぐ失業ラッシュが本当に起きるのだなと思いついた。2020年は大変な一年になりそうだ

2)企業はすでに社員をどんどん解雇しているけど、報道されていないだけだ。(当局が)このニュースを通して、今までの深刻な状況を認めたということか?それとも、(当局が)企業に対して『穏やかに』リストラしなさいというメッセージを送っているのか?

3)会社に解雇されたばかりだ、リストラされた、というネットユーザーらもコメントを書き込んだ」

 

失業とこれに伴う騒乱問題が、2020年のトピックスになる懸念が強まっている。解決策はない。米中貿易戦争を回避せず、粋がって買って出た民族派の失敗である。米国経済の実力を見誤った結果だ。同時に、市場経済が持つ経済調整力を軽視したことも、致命的な結末をもたらすであろう。