a0960_008707_m
   

世界最貧国の北朝鮮が、世界覇権国の米国を脅迫する図は滅多に見られるものでない。何が北朝鮮をそこまで駆り立てているのか。それは、北朝鮮の経済逼迫がギリギリの段階まできている証拠だ。背に腹はかえられぬ。ここは、一か八かという賭けに出て来たのだろう。その裏には、米国は、軍事行動を起こすまいという「甘え」が前提になっている。いざとなれば、韓国が止めてくれる。文在寅氏の「人の良さ」を利用しようとしている。

 

北朝鮮による「年末」と時間を区切った米国への威嚇は、29日現在では実施されていない。あれだけ大言壮語しながら控えているのは、米軍の厳戒体制がある。妙な動きをして、米軍の奇襲攻撃を受けたら元も子もない。ひとまず、「年内」は矛を収めているのかも知れない。

 

北朝鮮が朝鮮労働党の中央委員会総会を12月28日に開催し、総会で示される新しい戦略路線や政策に関心が集まっている。2017年以前は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射などを行って米国と対立した。その時の強硬路線に回帰するか、挑発と対話の硬軟両様であいまいで戦略的な選択をするか注目されるのだ。

 

ここで北朝鮮が党大会を開催したのは、カムフラジューにみえる。あれだけ米国を脅迫しながら何もやらなかったとすれば、米国が脅迫に驚かず、逆に厳戒体制を敷いて北朝鮮を締め付け、動けぬ状態に囲い込んでしまった結果だ。そこで、北朝鮮は党大会を開催して戦術の練り直しをしている、と読めるのだ。

 


ここで、北朝鮮の外貨事情を見ておく必要があろう。

 

今年3月頃では、北の外貨保有額は30~70億ドルと推算されていた。対北制裁の余波で1年に約10~15億ドルずつ消えているとすれば、現在の対北制裁が維持される場合、最悪なら今年中に、少なくとも来年中に保有外貨がなくなる可能性がある、と予想されていた。この外貨事情に狂いがないとすれば、この年末に「一勝負」賭けてくることは十分に根拠がる動きだ。

 

『聯合ニュース』(12月29日付)は、「北朝鮮、大規模な党中央委総会開催、情勢認識反映した新路線注目」

 

北朝鮮は今回、異例の形式で総会を開き、現在の情勢を重大に受け止めていることをうかがわせている。北朝鮮が朝鮮労働党の中央委員会総会を28日に開催し、総会で示される新しい戦略路線や政策に関心が集まっている。今回の総会は事前予告から期間、参加者数などが従来と異なる。総会は通常、政治局常務委員や委員、候補委員、約200人の党中央委委員らが出席するが、今回は党や内閣、中央機関の幹部、道人民委員長、市・郡党委員長、武力機関の幹部など、北朝鮮体制を支える重要関係者が傍聴した。歴代の総会のうち、最も大きな規模とみられる

 


(1)「北朝鮮の最高指導者が党大会や党代表者会で実施していた「国家事業全般に関する報告」を金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)が総会で行ったことも注目される。また、総会を1年に2回招集し、1日以上行うことも金日成(キム・イルソン)政権の時期を除けばなかったことだ」

 

経済的に逼迫しているので、改めて党内の引締めを図る目的があろう。ここで、対米強硬路線を決めたところで成算があるわけでない。米軍が、厳戒体制をとっており、トランプ氏が妥協して経済制裁を緩めるはずがない。来年の大統領選を控えて弱気を見せれば、トランプ氏が大統領選で不利になる。北は、成算なくして突っ込めば、正恩氏の座を脅かすことにあろう。こう見れば、北が正常な感覚に戻らざるをえないであろう。

 

(2)「規模が大きくなり、期間も長くなった総会は、今後追求する路線の決定や政策方向などが示される可能性を示唆する。朝鮮中央通信は総会の議題について、「現情勢下でわが党と国家の当面した闘争方向と、革命の新しい勝利を獲得するための重要な政策的問題」と伝えた。また、「革命発展を一層加速させ、党建設や党活動、国家建設と国防建設に関する重大な問題を討議するため」に総会を開いたと報じた」

 

一言で言えば、党内の引締めであろう。経済的に超劣勢の北朝鮮が、米国に対抗できることは、罵詈雑言しかないことも事実だ。米軍の厳戒体制が、北朝鮮の士気を挫く有力な手段であろう。

 


(3)「国家と国防建設の重大な問題を討議したと発表したのは、北朝鮮がこの2年間取ってきた硬軟両様の対応を取りやめ、新しい重大決定を行うことを予想させる。具体的な内容は公開されていないが、米国との対話ではなく、強硬路線の道を選ぶ意思を確認する可能性がある。「変化した対内外の情勢の要求に合わせ、国家の戦略的地位と国力を一層強化し、社会主義建設の速度を高めていくための闘争路線と方略」が示されるとしており、核保有国の地位に再び言及し、核武力やICBMなど戦略兵器の開発を強化する宣言が出る可能性もある」

 

核武力やICBMなど戦略兵器の開発を強化する宣言が出れば、米国は一段と経済制裁を厳しくするだけだ。北朝鮮を屈服させるには、軍事力を使わずとも経済制裁に加えて金融制裁を行なえば、大きな効果が上げられるという。北朝鮮と取引した企業の決済を止めてしまえば、世界中で北朝鮮と取引する国はなくなる。最後は、その急所を締上げることだ。

 

(4)「総会では外部に依存する急速な経済成長ではなく、時間がかかっても「自力更生」による経済成長を続ける路線を維持するとみられる。国連など国際社会の制裁が続く中、北朝鮮が体制の維持のためには自力更生以外に別の選択肢がない状況だ」

 

北朝鮮が「自力更生」の道を選ばざるを得ない以上、韓国へも圧力がかかってくる。文政権は、隙があれば「経済支援」したがっている。米国は、これを止めなければならず、米韓でこの問題が最大の軋轢要因になりそうだ。