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世界一の老人大国・日本では、高齢者によるペダルの踏み間違いによる痛ましい事故が頻発している。これを防ぐには高齢者が免許証を自主返納するしかない。だが、高齢者にとっては、歩行が困難になって自動車はますます必要になるケースも増えるのだ。

 

こういう矛楯を解決すべく、政府が21年以降の新車に自動ブレーキを義務化することになった。自動ブレーキが作動すれば、不幸な事故も防げるだろう。高齢社会にまつわる課題先進国・日本が、いち早く前向きの対応することは、世界への実験データを提供するという意味もある。

 

もう一つ、自動運転車の実用化に向けて、間もなく「レベル3」(条件付き自動運転)に入っていく。この場合、自動ブレーキの役割は大きい。ここから得られるデータは、自動運転車にとって貴重なデータになる。

 


国際欧州経済委員会(ECE)が2019年2月、日本や欧州連合(EU)など40カ国・地域で「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」の導入を義務付ける規則の原案に合意した。
自動ブレーキ義務化は、日本とEUが主導している。米国や中国、インドは参加していない。米国などでは、自動車メーカーレベルで自動ブレーキの搭載が進んでいる。2020年以降は、自動ブレーキ非搭載の車は対象国で販売できなくなる可能性もあると言われている。

 

日本では7割以上の新車に自動ブレーキが搭載され、各自動車メーカーでは自動ブレーキを取り入れた安全運転支援システムの導入が進められている。日本国内では、すでに自動ブレーキが普及している。日本政府は、2020年に新車の9割に衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)を搭載するという目標を掲げている。

 

『サーチナ』(12月29日付)は、「どうして日本は世界に先がけ、自動車への自動ブレーキを義務化するの?」と題する記事を掲載した。

 

中国メディア『東方網』(12月27日付)は、日本政府が2021年以降に発売される新車への自動ブレーキ搭載を義務付ける方針を示した背景について解説する記事を掲載した。記事は、日本では21年よりあらゆる車種の新車に対して自動ブレーキシステムの搭載が義務付けられることになると紹介。既存の自動車も25年までに自動ブレーキに対応させることが求められており「今後はどんな車にも自動ブレーキが配されることになる」と伝えた。

(1)「中国では多くの自動車に自動ブレーキシステムは搭載されておらず、搭載されているのは一部の高級車に限られると説明。この点からも日本の自動ブレーキシステム導入の動きは中国を大きくリードしていることが伺えるとしている。そして、自動ブレーキシステムの主な機能は、前方の車両が減速したことに気づくのが遅れて発生する追突を回避すること、低速走行時に歩行者をはねないようにすることであり、スマート運転技術の基本的な部分であると解説した

 

中国で自動ブレーキが搭載されているのは、一部の高級車だけという。日本はすでに7割の新車が搭載している。自動ブレーキは、自動運転車の基本的技術である。中国は、自動ブレーキ義務化の国際ルールに加盟していない。世界最大の自動車王国が、このルールを採用しないのは、技術的に難しいという事実があるのだろう。



(2)「そのうえで記事は、日本が早い段階で自動ブレーキシステムを義務化する理由について「実は言いにくい悩みがあってのことなのだ」とし、日本社会で高齢化が急速に進み、ドライバーに占める高齢者の割合が増えて事故を起こすリスクが高まりつつあることが背景にあると説明。「高齢者は反応が遅いため、自動ブレーキによるアシストを取
り付けなければ、交通の安全が保証できないのだ」と伝えた」

ここでの指摘はその通りである。ただ、日本の人口が高齢化するだけでなく、車の追突防止は、世界的な課題でもある。

 

(3)「運転をアシストする各種機能は最新技術を取り入れたものである一方、そのターゲットは高齢などの理由により運転能力が落ちている人がメインという特徴を持つ。高齢化が進み、実際に高齢者による各種交通事故が社会問題化している日本では、今後もさらに世界に先がけてアシスト技術の導入が進んでいくことだろう」

 

ECEの発表によると、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)が搭載されると低速走行時の衝突は38%減、EU内で年間1000人超の命を救えると試算されている。また、搭載の義務付けが開始になると、EUでは年間1500万台以上、日本では400万台以上の新車が対象になると発表された。