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中国経済は深刻である。「習のカーテン」で遮られて、中国内部の深刻な経済状態は、外部になかなか伝わってこない。だが、中国の政治状況をウォッチしていると、外郭は掴めるものだ。

 

中国国営メディアは過去、習近平国家主席を「人民の領袖」と呼ぶことがあった。今回は共産党の中央政治局会議で、この言葉が用いられた。これは、中国経済の深刻さを表わすもので、習氏を毛沢東のように「偉大なる領袖」と位置付け、全党が一丸となって進まざるをえない事情を示すものであろう。 中国経済はここまで追い詰められているのだ。

 

その具体例の一つが、地方政府に財政逼迫である。中央政府は、GDP押し上げ目的で非効率なインフラ投資を行なっている。多くは、地方政府の負担によるもの。高速鉄道が華々しく開業している裏では、地方政府の財政負担が限界を超えている。負担にあえぐ地方政府は頼る先がないので民間企業に「たかる」という最悪事態だ。民間企業の株式の一部を州政府に寄付させる。そういう強引な手法で財源難を補うのだ。こういう事態が、いつまで続けられる訳ではない。いずれは、破綻する運命だ。

 

戦時中の日本では、「聖戦遂行」という合い言葉で、一般家庭にある貴金属を含めた鉄類を供出させたほどだった。現在の中国は、民間企業の株式を「供出」させている。「負け戦」では、こういう強引な「資金集め」が行なわれるのである。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月28日付)は、「中国の蒸留酒メーカー、地方政府に株式譲渡、財政支援」と題する記事を掲載した。

 

中国の高級白酒(蒸留酒)メーカーの貴州茅台酒は、約80億ドル(約8760億円)相当の株式を地方政府の傘下企業に譲渡すると明らかにした。重債務に苦しむ貴州省の財政支援につながるとみられている。

 

(1)「茅台酒の株価はここ1年で2倍近くまで上昇し、時価総額は2000億ドルを上回る。主力の白酒の販売が大きく伸びており、上海証券取引所に上場する同社株には国内外から買いが集まっている。 同社が本社を置く貴州省は財政難が続いている。中国国有の中国銀行によると、同省内の総生産(GDP)に対する債務残高比率は2018年に約73%と、省別で最も高かった」

 

茅台酒(まもたいしゅ)は、コーリャンを原料として作る蒸留酒である。貴州省の茅台でしか製造できないという。天然酵母によるものと言われ、この地域を外すと「質」が落ちるという銘酒である。これまで賄賂によく使われ、一時は大幅に販売が制約されるという被害を受けている。それだけ、希少価値が高いのだろう。

 

この茅台酒製造会社の株式を、地方政府に譲渡させるとは驚きである。強引というか、経済の原理原則を無視した行動である。昔の軍部が戦地でよく行なった「徴発」という手段だ。中国経済は、こういう非常事態にあることを示している。

 

(2)「茅台酒の株式約62%は、地方政府資産管理当局の系列企業が保有する。茅台酒の親会社は、これとは別の貴州省政府の完全子会社に茅台酒の株式4%を移管するよう命じられた。上海証券取引所への提出文書で明らかになった。株式を譲渡しても同社に対する公的管理そのものは変わらないものの、貴州省政府の財政ひっ迫は緩和される可能性があると一部のアナリストは指摘する。国泰君安証券(北京)のチーフエコノミスト、花長春氏は、配当金がそのまま省の財源になることも考えられるとの見方を示した」

 

貴州省政府は、自らの完全子会社へ茅台酒の株式4%を移管するように命じた。これは、「徴発」に相当するもので不当行為である。会社側は、抵抗できないのであろう。この4%の株式(約80億ドル=約8760億円))から得られる配当金で、税収不足を補うという。中国経済が、ここまで疲弊してきたとは驚きである。