a1180_012915_m
   

米中貿易戦争は12月13日、「第1段階合意」によって休戦した。その後、中国国内の報道では地味な扱いであり、「中国完敗」を裏付ける証拠とされている。こうして、政治談義好きな北京の人々の間ではインテリ、庶民を問わずこの話題で持ちきりと言われてきた。インターネット上の言論は、人工知能(AI)に監視されているため、顔を付き合わせてのひそひそ話も目立つという。『日本経済新聞』が、表に出にくい市井の大論争が戦わされていると報じるほど。

 

中国共産党機関紙『人民日報』は、「国紀平」名の12月31日付論説で「極めて複雑な現在の国際環境の下、中米が第1段階の経済貿易合意に達したことは中国と米国にとって有益であり、世界全体の平和と繁栄にとって有益だ」と強調した。秘密のベールを脱いで、「第1段階合意」が世界経済のために有益であると論じた。

 

注目すべきは、「国紀平」名の署名がされていることだ。「国紀平」は人民日報の著名な論説欄で、通常重大な国際問題について中国の立場と観点を詳述する、とされる。それだけに、ようやく共産党の見解が一本化されたという意味であろう。

 

習氏が議長を務め12月27日まで2日間にわたり開かれた会議で、中央政治局の委員25人は同氏の政策をビジョナリーとして、習氏を「人民の領袖」と称えた。これは、中国共産党創始者である毛沢東の栄誉を強く思い起こさせる呼び方である。中国の危機を乗切るべく習近平氏をあえて「領袖」と呼び、結束を固めたのであろう、

 

以上の国営メディアが伝えた政治局の表明には、畏敬の念が滲んでいた。習氏が、内外の政治的難題に直面する中で、党が結束して後ろ盾となっている様子を反映してものであろう。具体的には、中国が経済問題のほかに新疆ウイグル族や香港の人権弾圧で 世界の批判の矢面に立っている。共産党が一致して対応せざるを得ない訳で、危機の表れでもあるのだ。

 


『人民網』(12月31日付)は、「安定した中米関係は世界にとって有益」と題する記事を掲載した。

 

(1)「人民日報は、「国紀平」名の31日付論説で「中米双方が平等と相互尊重を基礎に第1段階の経済貿易合意に達すると、太平洋両岸、さらには全世界の市場が直ちに前向きな反応を示し、双方が問題解決の方向に向けて一歩前進したことを歓迎した」と指摘した。「大国間の関係において困難は避けがたいが、主軸は何か?相互衝突ではなく相互協力であり、相互抑止ではなく相互促進だ」と強調した」

 

米中貿易戦争は、昨年5月に署名するはずであった。それが、中国国内の保守派による反対で、反古にされた曰く付きのもの。米国は、中国への反発でさらに関税を引き上げて圧力をかける結果となった。中国経済は、これにより一段と悪化してガタガタになっている。

 

こういう中国側による情勢判断の誤りを糊塗すべく、下線部分のように自画自賛したものだ。中国は、明らかに米国の軍門に下った。

 

(2)「論説は、「今日、1年余り続いている中米経済貿易摩擦を詳細に見ると、人々はなおさらに次のような現実が理解できる。経済と技術は世界を一つに結んでおり、中米間の利益は融合が進んでいる。協力の中で溝が生じることは避けがたいが、強権が正義を押し潰すことはできず、協力こそが最良の選択だ。米側は対中貿易摩擦を仕掛けたが、中国側はいかなる最大限の圧力にも決して屈服せず、国家の核心的利益と国民の根本的利益を断固として守っている。戦いを恐れず、粘り強く交渉する。中国側は終始理性と冷静さを保ち、両国の共通利益と世界貿易秩序の大局を守る観点から、対話と協議による問題解決を堅持し、最大限の辛抱強さと誠意を持って米側の示した懸念に応じ、『小異を残して大同につく』姿勢で溝に適切に対処し、様々な困難を克服し、実務的解決策を示し、両国間の経済貿易協議を推進するために苦しい努力をしている」と指摘した」

 

米国は、中国に対して容赦ない要求を突付け、丸ごと飲み込ませたのだ。しかも、米国が合意事項の着実な実行を監視、査定・評価できるシステムまで盛り込まれている。中国経済が、信用不安に直面するという最悪事態で、もはやこれ以上「貿易戦争」を継続できないところまで追い詰められていたのだ。まさに、中国は「完敗」である。

 


(3)「1972年のニクソン米大統領訪中を振り返り、この訪問が人々にもたらした重要な啓示として「当時隔絶の硬い氷を打破して太平洋を越えた握手を実現するのであれ、現在困難を克服して溝を管理するのであれ、必要なのは非凡な戦略的観点と卓越した政治的知恵だ」と指摘した。
論説は、「40数年前の『ピンポン外交』が『ウィンウィン』をもたらすことができたのはなぜか?米側はかつて『ここに最大の勝者がいる。これは誰が卓球の試合に勝ったかよりも重要なことだ。その最大の勝者とは、米中両国民間の親善だ』と感慨を催した。これは後世の啓発となりうる知恵ある結論だ。40年余りの実践は、中米の共通利益を最大化するためにチャンスを創造することこそが正しい道であり、世界各国のウィンウィンを実現することこそが追求すべき最大の勝利であることを繰り返し証明している」と指摘」

 

米中復交当時の古い話まで持ち出している。中国は、これを機に経済近代化の道を歩み始めた。こういう故事来歴により、米中はさらに緊密な関係を樹立するというもの。苦し紛れもいいところだ。米国覇権に挑戦すると大言壮語したばかりに、現在の苦境を招いたのである。口は災いの元である。満足な基礎技術もない中国が、米国へ挑戦するなど、月に石を投げるような話である。

 

(4)「最後に、「中米が第1段階の経済貿易合意に達したという事実がすでに、双方が中米の経済貿易協力の互恵・ウィンウィンというメインストリームを終始把握し、相手国の尊厳・主権及び核心的利益を終始尊重しさえすれば、前進する中で生じる困難を克服し、新たな歴史条件の下で中米の経済貿易関係の前向きな発展を促進し、両国及び両国民に幸福をもたらすことができるということを物語っている」と強調した」

 

下線部では、中国のこれまでの核心的な利益を羅列している。経済的にゆとりを後ろ盾に、南シナ海・台湾などは「核心的利益」と称して強い姿勢を見せ世界を威嚇してきた。今や、吠え立てる力もなくなっている。経済失速が、中国から大言壮語する余力を奪ったのだ。