テイカカズラ
   


中国経済が順調であれば、台湾総統選も露骨に介入したであろうが、もはやその力を失っている。1月11日に迫った総統選では独立志向の強い蔡総統の再選が濃厚となっている。

 

中国は、台湾総統選に介入したくても「香港民主化デモ」ですっかり風向きが悪くなっている。これまで中国は、台湾に対して香港と同じ「一国二制度」を持ちかけてきた。その香港で民主化デモが止まず、中国は強硬策に出て警察に手荒な取締をさせ人気急落である。

 

これが、台湾総統選で蔡総統の支持を増やし、中国に近い国民党の支持率を急落させている。もはや、中国は手の打ちようがなく、蔡総統の再選が有力になっている。この裏には米国の強い台湾支持がある。米上院外交委員会は昨年9月中旬、台湾を防衛する「台北法」法案を上院本会議に上程することを全員一致で決定した。

 

同法案の狙いは、台湾を孤立させないことだ。米国が台湾と自由貿易協定を結ぶことや、台湾がより多くの国際機関に加盟すること(これに対する中国の妨害は激しさを増している)を目指している。また同法案は米国務長官に対し、外国政府に台湾との関係を強めるよう働きかけるよう指示し、台湾との関係を弱める国への経済・軍事支援を控えるよう促すことになる。台湾にとっては、願ってもないこと。米国という強い味方を得れば、中国の脅迫は問題外であるのだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月3日付)は、「台湾総統選、最終盤も蔡氏優勢、中国圧力 米援護射撃で防御」と題する記事を掲載した。

 

11日に投開票が迫る台湾の総統選は、対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)現職の蔡英文総統(63)が優勢を維持したまま最終盤に入った。香港の政情混乱を受けて高まる対中警戒感が追い風となっている。中国は軍事・外交などで蔡政権への揺さぶりを強めるが、米国の台湾接近の動きが世論の動揺を防いでいる。

 

(1)「台湾では1日から世論調査の公表が禁じられた。民放TVBSが直前の昨年1229日に実施した最新調査では、蔡氏の支持率は45%と、対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜(ハン・グオユー)高雄市長(62)に16ポイント差を付ける。美麗島電子報の調査ではその差は約28%に開いている。蔡氏は支持固めに向け中国への対抗姿勢を一段と鮮明にする。1日に総統として発表した新年の談話では、中国が「全面的に(社会に)浸透している」と情報工作への対策強化を訴えた。「民主主義と専制は同一国家で併存できない」とし、中国が目指す(高度な自治を認めるとする)一国二制度を用いた統一を拒否すると強調。香港の二の舞いを避けようとする市民の危機感に訴える」

 

香港民主化デモで中国の脅威を知った香港市民は、台湾への移住希望者が増えている。こういう状況では、台湾総統選で中国支持派の国民党候補が勝てる可能性はきわめて低くなっている。

 


(2)「国民党は、自ら劣勢に拍車をかけた面も大きい。総統選と同時実施の立法委員(国会議員)選を巡り11月、比例区名簿の2位に香港デモの民主派を「暴徒」と切り捨てた元大学教授を組み込んだ。4位の元陸軍中将は退役後に度々訪中し、中国・北京の人民大会堂で習近平(シー・ジンピン)国家主席の演説に聴き入る姿がテレビに映されたこともある人物だった。最悪のタイミングで党への親中懸念を引き起こした格好だ。韓氏は親中色の払拭に躍起だが、直近のテレビ討論会で対中政策への言及を避けるなど苦しさが目立つ。「蔡政権が続けば庶民の生活は一段と悲惨になる」と経済格差に不満を持つ人々に訴えるが、対中警戒感が強い若者や無党派層に支持が広がらない」

 

国民党は本来、日本へ接近していた。それが、「一国二制度」という目眩ましを受けて、中国への接近を始めたもの。香港問題さえ起こらなければ、経済低迷で不評を買っていた蔡総統が不利な見通しであった。経済問題は現在、米国の強い支援で米台貿易協定も視野に入っており、明るい展望が描けるようになってきた。

 

(3)「対中関係(悪化)は蔡氏の弱点になる可能性もあった。蔡政権は中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を認めず、中国は圧力を強める。しかし対中関係を悪化させたとの蔡政権への批判は盛り上がらない。「米国との関係強化が衝撃を和らげている」(民進党関係者)からだ。中国は16年の蔡政権発足以降、台湾周辺での軍事演習を活発化。昨年3月末には中国軍機が中台の実質的な停戦ラインである台湾海峡の「中間線」を越えて台湾側空域に侵入した。一方で米国は同年に戦車やF16戦闘機など重要兵器を台湾に売却すると相次ぎ表明し、台湾の防衛強化に踏み込む姿勢を示した

 

米国からF16戦闘機66機80億ドルの大量購入も決まった。これで中台の空軍戦闘力のバランスでは、台湾が大幅に回復したとされている。中国の台湾に対する軍事解放という「脅迫」は、その現実性において、大きく減殺されている。