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中国では、「広大な国土・4000年の歴史・人口世界一」の3セットで、世界トップの地位は不動と錯覚している。考えて見れば、自慢になるものは何もないのだ。今後の世界経済を予測する上で確定的な事実は二つある。それは、環境悪化と人口高齢化である。この二大要因によって、その国の経済の運命は決められる。

 

中国は、環境と人口高齢化で落第である。冒頭に挙げた中国自慢の3セットのうち、「広大な国土・人口世界一」は逆効果に転じる。4000年の歴史も「革新阻害」要因になっている。未だに民主化できず、専制政治が続いているからだ。結局、中国は他国に自慢できる要因は何もないという悲劇的な結論になる。

 

中国は、この現実を受入れようとしていない。監視カメラで国内を弾圧し、海外への領土拡大で米国覇権に挑戦できると思い込んでいる。その有力な手段が、中国の膨大な人口を利用したデータをAI(人工知能)で分析・活用すれば、資本主義経済の市場による資源配分より効率的な経済成長が可能と信じ込んでいるようだ。

 


『日本経済新聞』(1月5日付)は、「逆境の資本主義(4) 自由より国家、走る中国」と題する記事を掲載した。

 

(1)「クリントン米政権で国防次官補を務めたハーバード大のグレアム・アリソン教授は、中国の国家資本主義が新しい産業競争で優位性を持ちうると、次のように警告する。「経済発展には個人の自由が不可欠と言われてきたが、中国は必ずしもそうでないことを証明している」。人工知能(AI)などがあらゆる産業の基盤となる21世紀には、いかにして多くのデータを集めるかが雌雄を決する。個人のプライバシーよりも国家の利益を優先する中国は間違いなく優位な立場にある

 

下線部分は、過去の中国経済の発展が「人口ボーナス論」によって100%説明可能である点を見落としている。後講釈で国家資本主義(注:計画経済)が、市場経済に優るという結論は出せないはずなのだ。現に、中国は不動産バブルによる過剰債務で信用崩壊寸前にある。このような経済は、国家資本主義によってもたらされたものだ。日本の平成バブルを上回る過剰債務を積み上げており、市場経済システムが作動していれば、ここまで悪化せずに調整できたであろう。

 

市場経済と計画経済の比較論は、古くて新しい問題である。1920年代から40年代にかけて盛んになった経済計画論争、或いは経済計算論争と呼ばれる論争で行なわれたもの。この時、ノーベル経済学賞受賞のハイエクは次のように主張している。「必要な情報の収集に成功し効率的な価格付けと資源配分を行えるのは、分権的なメカニズムとしての市場メカニズムだけである」という展望を示した。

 

中国経済全体が計画経済であり、市場メカニズムを尊重しない経済政策の下では、AIで分析する資源配分が、政府の政策意図によって歪められる危険性がきわめて高いのだ。そういう国家資本主義経済へ、外資企業が喜んで参入するだろうか。企業内部に共産党支部(地区委員会)を強引に作らされるところへ進出するメリットはない。しかも、時間の経過とともに人口高齢化が進む中国市場は、魅力が低下する。AIが、中国経済活性化の切り札にはなり得ない。私はこう見るのだ。

 

(2)「電子商取引のアリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は、ビッグデータとAIを組み合わせれば、国が資源配分を差配する計画経済が機能すると言い切る。アダム・スミスが成長の源泉とした「見えざる手」と対極をなす中国式の「見える手」経済は成功を収めるのだろうか」

 

市場経済の「見えざる手」から計画経済の「見える手」は、習近平氏が唱えた言葉だ。中国の抱える膨大な債務残高の存在を見れば、「見えざる手」による市場機能の有効性が、すでに立証されている。中国は、それを無視したから現在の苦境に落込んだのである。

 

中国は、この苦境をAIで解決するというのだ。皮肉な話だが、膨大なデータを分析すれば、中国の適性経済成長率は、現在よりもはるかに低く出てくるはずだ。広大な中国の国土が公害で汚染されている。これを修復するにはどれだけのコストがかかるか。すでに明らかにされた試算では、環境破壊分を差し引けば実質のGDP成長率は2~3%に落込んでいる。中国政府は、AI分析か弾かれたこの数値を素直に受入れるだろうか。

 

問題は、ここにあるのだ。政治の論理でAI分析を受入れない強引さがつきまとうことである。習氏は、AI分析で出てきた結果をそのまま受入れれば、即座に辞任を迫られるはずだ。共産主義という専制政治は、真実を覆い隠すことで生きながらえてきたのである。この原則は永遠に変らず、AI分析を生かせない政治的動機が働くはずだ。