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韓国の文大統領と北朝鮮の金国務委員長との間では今、全くコミュにケーションができない状態である。文氏は理想主義を語り、金氏が冷徹なリアリストという水と油の関係であるからだ。それでも、2018年までは両者は同じ方向を向いていたが、今は完全に逆方向を向いたままである。

 

金正恩氏は、文在寅氏の言い分を聞いていれば、米朝会談が上手く進むという期待感であったのだろう。だが、期待は裏切られており、米朝間の対立は激化している。文氏が、この対立を調整してくれる実力もないのに、さもありそうに振る舞い、理想論を語っている。正恩氏は、そのことに我慢ならなくなったのであろう。文氏が、「仲人口」で期待感を煽りすぎたのだ。

 

文氏は、米国からも浮き上がっている。北との宥和論を説いており、米韓が一体になって強硬姿勢をとるべきなのに足並みを乱しているというもの。結局、文氏は米朝双方から誤解される、きわめて損な役回りになっている。

 

文氏は、原理主議者である。あるべき姿をストレートに発言しているだけで、それをいかに実現するかという点になるとお手上げである。ここが、社会派弁護士出身の限界であろう。主義主張だけ言い放していれば、ことが済んでいたのが弁護士稼業に違いない。政治家は、成果を求められる。文氏は、それが苦手である。大統領になるべきでなかったのだ。

 


『中央日報』(12月26日付)は、文在寅大統領『南北鉄道・道路連結』周辺国とともに繁栄する道」と題する記事を掲載した。

 

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は12月26日、「韓国は橋梁の役割を通じて『人間中心の共生繁栄の平和共同体』を成し遂げたい。南北間の途切れた鉄道と道路をつなぐことは東アジアの平和と繁栄を先導する、橋梁国家へ進む第一歩」と明らかにした。

(1)「文大統領は世界の著名人のコラムを載せる「プロジェクト・シンジケート」に、「無数の行動が作り出す平和・韓半島平和構想」という題名で寄稿文を出しこのような考えを示した。文大統領は、「新北方政策は大陸に向け走って行く韓国の抱負」として「中国とロシアだけでなく中央アジアと欧州に協力の基盤を広げ、北東アジア鉄道共同体として多者協力、多者安保の礎石を置きたい」と話した。また「新南方政策は海洋に向け走って行く韓国の抱負」とし、「東南アジアとインドとの関係を周辺主要国水準に格上げし、共同繁栄の協力関係に発展させていくだろう」と明らかにした」

 

朝鮮半島がユーラシア大陸の一部であることから言えば、南北朝鮮が敵対関係に終止符を打つことは、無限の発展の可能性を秘めている。それは、誰もが認めることである。ただ、「核」の存在が大きな障壁になっている。それを、どのように取り除くかだ。文氏には、その知恵が欠けている。そうであれば、いたずらに理想論を語ることが、かえって空々しく聞えるのだ。正恩氏の「核保有」は私益である。公益は、それを捨てることを求めている。私益と公益が対立している以上、解決策は存在しない。

 

(2)「大統領は、「平和を通じて韓国が進もうとする道は究極的に平和経済。平和経済は分断がこれ以上平和と繁栄に障害にならない時代を作り、南北が周辺国と連係した経済協力を通じてともに繁栄し、再び平和を強固にする好循環を作り上げる道」と明らかにした」

 

平和経済は、核を捨てることによって成立するものだ。そうであれば文氏は、米国や国際社会と同一歩調で進むしかない。米朝の間に立って調整することは不可能であると覚るべきだろう。北朝鮮に「核」を捨てさせる決意をさせることこそ、文氏の役割である。北に、秋波を送れば送るほど、北をいらつかせるであろう。実現もできないことを演じているからだ。

 


『レコードチャイナ』(1月6日付)は、「文大統領の朝鮮半島平和構想、北朝鮮には届かず?」と題する記事を掲載した。

 

『ソウル新聞』(1月6日付)は、によると、韓国の文在寅大統領が発表した「朝鮮半島の平和構想」について、北朝鮮が「詭弁だ」と批判した。

 

(3)「文大統領は12月26日、評論サイト「プロジェクト・シンジケート」に朝鮮半島の平和構想に関する文章を寄稿した。これを受け、北朝鮮の対韓国宣伝サイト「わが民族同士」は今月6日、「真実は隠せないもの」と題する論評で「ばかばかしいのは、南朝鮮の当局者(文大統領)が朝鮮半島における対話・平和の流れをまるで自分たちが主導しているかのように自画自賛し、ずうずうしく弄んでいること」と批判。また「南朝鮮当局は我田引水の詭弁を並べるのではなく、現実を直視して恥知らずな無駄口をたたくのをやめるべきだ」と主張したという」

 

北朝鮮が苛立っているのは、経済的に行き詰まっていることの反映であろう。米朝の間に立って仲介するような素振りを見せる文氏の振る舞いにも怒っているのだ。言葉は要らないと拒絶している。文氏の八方美人的な言動が、北側をイライラさせているとすれば、結論をはっきり言うことだ。「核を捨てろ」。この一言が最も効くはずである。

 

(4)「北朝鮮の別の宣伝メディア「メアリ」も、「2019年に南側は米朝間における仲裁者としてあちこち走り回ったが、結局は米国だけを意識して米朝関係の結果を待つ水準にとどまった」と批判し、その理由について「米韓同盟の枠に自分自身を閉じ込めていたため」と指摘したという

 

下線部分は、正しい指摘である。米韓同盟の枠にありながら、仲裁者にはなれないはずだ。韓国は、基本的にこの点の認識が足りない。今はっきりと米韓同盟の立場に戻り、「核放棄」を強く言うべきである。その方が、相手は聞く耳を持つだろう。