テイカカズラ
   


韓国文大統領による新年初の演説は、北朝鮮への平和統一呼びかけであった。文氏は7日午前、青瓦台(大統領府)で演説した。その中で、平和統一の意志を誓う(南北)合同行事をはじめ、金正恩委員長の答礼訪問のための環境が、一日も早く整うよう南北が共に努力することを望む、と述べた。

文大統領は、北朝鮮への熱い思いを語ったが、大統領府を防衛するパトリオットを付近の山へ据え付けたという。皮肉な話である。国防省が文氏の南北平和論の効果を信じていない証拠である。文氏の平和論は破綻した。

 

『聯合ニュース』(1月7日付)は、「韓国大統領府付近にパトリオット配備、北朝鮮ミサイルに対応か」と題する記事を掲載した。

 

韓国軍がソウルの青瓦台(大統領府)付近にある北岳山に弾道ミサイルなどを迎撃する地対空誘導弾パトリオットを配備したことが7日、分かった。北朝鮮の短距離ミサイルなどから青瓦台などの主要施設を守るためとみられる。政府消息筋が明らかにした。

(1)「対空砲などが配備されていた軍事地域にパトリオット砲隊を配置したとみられる。配備されたのはPAC2とPAC3とされる。韓国軍は通常、主に航空機を迎撃するPAC2と、主にミサイルを迎撃する改良型のPAC3の両方を運用している。韓国軍は2017年、南部の慶尚北道星州郡に米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」が配備されたことを受け、南部地域のパトリオット砲隊を首都圏に移転する計画を進めた。ミサイル再配置の一環として、北岳山にパトリオット砲隊が配備されたとみられる」

 

韓国は、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)を破棄していたら、今頃どうなっていただろうか。文政権は非難ごうごうであっただろう。先を読めない韓国政権が、ついにお尻に火がついた形で北岳山(大統領府の写真に映る後方の山か)にパトリオットを配置するという。韓国軍の主敵は、従来から「北朝鮮」と明記してあった。文政権は、それを削除して、暗黙裏に「日本」を想定する旨軍内部で秘かに通達していた。それが、この姿である。文政権の「感情100%」の政策が失敗した。

 

パトリオットを大統領府の付近に設置するという緊急事態になった以上、THAAD(超高高度ミサイル網)の増設も必要であろう。これも、中国に対して「増設しない」と約束(3不)したが、そんな悠長なことを言っていられる場合でなくなった。これも破綻した。要するに、「北朝鮮は平和主義」と信じていたことすべてが、間違った選択を招いたのだ。世にも不思議な「極楽トンボ政権」である。

 

状況が急変した裏には、米国がイランで行なった斬首作戦で、米国とイランの軍事対立が想定されることだ。イランと北朝鮮は、40年来の核開発の盟友である。北朝鮮は、米・イの対立の機に乗じて、韓国に向けて軍事挑発するのでないか。韓国防衛省が、こういう危機感を持ち始めたようである。

 

『朝鮮日報』(1月7日付)は、「核開発ではイランと同志の北朝鮮、米国を狙って正面突破」と題する記事を掲載した。

 

(2)「イランは2015年に欧米6カ国と締結した核合意からの脱退を宣言したが、これが北朝鮮の核・ミサイル挑発や米朝非核化交渉の全面的な決裂につながるかに注目が集まる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は先月31日に幕を下ろした朝鮮労働党中央委員会全員会議の席で、「核とミサイルのモラトリアム(試験・発射の猶予)破棄」をちらつかせたが、その一方で米国との交渉を完全に閉ざすことはしなかった。しかし北朝鮮と「核・ミサイルのコネクション」を維持してきたイランが核合意を破棄したことから、今後これが北朝鮮の非核化にもマイナスの影響を及ぼすという懸念も相次いでいる」

 

北朝鮮が、イランと共同歩調をとって「核放棄中止」宣言を出すかも知れない。韓国では、こういう警戒感がにわかに高まっている。となれば、北朝鮮へ向けて解いてしまった警戒体制を復活させなければならない。文政権のドタバタ劇である。

 

(3)「北朝鮮は両面的なシグナルを発している。朝鮮労働党の機関誌・労働新聞は6日「敵対的行為と核の脅威による恐喝が増大している以上、われわれには期待することも、ためらうこともない」と主張した。労働新聞はさらに「いかなる勢力であれ、われわれに対して武力を使用する考えさえできないよう、無敵の軍事力を質的・量的に引き続き強化していかねばならない」とも訴えた。米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を「ピンセット除去」したことを念頭に「軍事力強化」を強調したのだ」

 

韓国は、北朝鮮に対する一貫した見方がなかった。これは、冒頭で掲げた文氏に「南北平和論」にも表れている。安全保障政策がクルクル変ると、こういう醜態を演じるのだ。ともかく、文政権が「アマチュア政権」であることは、今回の一件でますます明らかになっている。