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米国の総合科学会社デュポンが、半導体の核心素材「極端紫外線(EUV)用フォトレジスト」の生産工場を韓国に建設する計画を発表した。EUV用フォトレジストは、日本が昨年韓国への輸出手続きを規制した3大品目の一つである。早ければ、来年から韓国で生産可能になる見通しだという。日本への依存度が高い素材・部品・装備の調達の多角化に一歩近づいた、と韓国は評価している。

 

デュポンは、世界的な総合科学会社である。ただ、この分野を手がけるのは初めてである。フォトレジストも、製造工程に馴染むのは大変とされている。長年の日本製品にマッチした工程になっているという。その相性が、最終製品の歩留まりに大きな影響を与えるからだ。

 

デュポンの投資規模は、2021年までに計2800万ドル(約328億ウォン、約30億円)。生産工場は天安(チョンアン)に建設される予定だ。デュポンは韓国の素材・部品・装備自立の動きをチャンスと見なし、新しい市場に参入することになったという。デュポンのケンプ社長は、「今後、韓国国内の需要企業と製品実証テストを進めるなど、緊密に協力していく計画」と述べたという。この状態に小躍りしている韓国メディアが表れた。文政権支持の『ハンギョレ新聞』である。

 


『ハンギョレ新聞』(1月13日付)は、「結局、自分の足の甲を踏んだ安倍政権の輸出規制6カ月」と題する社説を掲載した。

 

(1)「日本経済新聞は、グローバル企業のデュポンが韓国にフォトレジスト生産施設を建てることにしたとのニュースを伝え、「デュポンのような動きが増えれば、日本企業の競争力に影響を与える可能性もある」と報道した。安倍政権が輸出規制を行ってから6カ月が過ぎた今、日本経済にブーメランとなって戻って来るはずだという警告が現実に現れている。韓国の輸入企業より日本の輸出企業がより大きな打撃を被っている。韓国政府と企業が代替供給先の発掘だけでなく、主要な材料の国産化に拍車をかけているからだ。安倍政権の経済報復を乗り越えようとする企業の努力と政府の支援が明らかな成果を出しているのだ」

 

半導体3素材の輸出手続き規制は、戦略物資管理において不可欠の問題であった。韓国は、管理不備を認めて体制強化に努めている。日本側の見通しでは、短期間に体制整備が終わらないと見られている。韓国自体に問題があったから、輸出手続き規制が行なわれたのである。『ハンギョレ新聞』は、メディアの義務としてこの間のプロセスをしっかりと把握、報道する義務があろう。

 

(2)「安倍政権の輸出規制は初めから誤った判断だった。輸入規制ではなく輸出規制で貿易報復をする国はほとんどない。輸出規制は自国企業にも被害を与える。一種の自傷劇だ。また。グローバルサプライチェーンまで揺さぶり、国際的な反発を買うことがあり得るため争いを拡大させるのが難しい。それなのに安倍政権は韓国経済の中心である半導体産業に脅威を与えれば韓国政府がすぐに屈服すると判断して無理強いをしたようだ」

 

下線部分は、輸出手続き規制の原因が、韓国にあることを棚に上げて日本を批判している。はなはだ、責任回避しており遺憾である。いくら文政権支持とは言え、「正邪」をはっきり区別すべきである。このパラグラフは、認識においてすべて間違えている。

 


もう一つ、この問題には「徴用工賠償問題」が絡んでいる。歴史問題が経済問題に発展したものだ。日本側の度重なる話合いを拒否した韓国政府に、警告を与える狙いがあった。徴用工賠償問題は、法的には解決済みである。これ以上、この問題について繰返さない。

 

韓国は、徴用工賠償問題で文国会議長提案の法案が上程中である。これは、韓国が自主的に徴用工問題解決に取り組んでいる証拠だ。韓国は、徴用工問題解決後に「ホワイト国除外」撤廃を日本に要請している。日本は、正当な権利行使で「ホワイト国除外」を行なったもので、韓国から指図される問題でない。要するに、韓国が日本へ向かって「諭すような」発言資格を持たないのだ。その点をはっきり自覚して、日本に対し慎重な発言をするべきだ。

 

(3)「韓国国民の日本商品不買運動の熱気もなかなか冷めない。日本政府の観光局統計を見ると、日本を訪れた韓国人観光客の数は去年11月には65.1%も減った。7月は-7.6%、8月は-48%、9月は-58%、10月は-65.5%と急減傾向が続いている。九州や北海道などの日本の地方観光地の被害が雪だるま式に増えている。去年7月、「韓国の不買運動は長続きしないだろう」と発言したユニクロの岡崎健最高財務責任者は、10日の記者会見では「非常に厳しい状況が続いている」と打ち明けた。日本車とビールも相変わらず苦戦している。安倍政権は自ら自分の足の甲を踏む愚かな行動をやめなければならない。名分も実益もない輸出規制を撤回しなければならない。それが日本経済にも役に立つ道だ

 

韓国は、自国は無傷という前提である。だが、韓国は、「NO JAPAN」という幟を立てた不買運動で、韓国の消費者に政治的不安を呼び起こし、それが個人消費の大きな落込みを招いている。2019年のGDPは、2月早々に発表されるが、惨憺たる結果が予想されている。

 

OECDの最新予測によると韓国は、去年の名目GDPが1.4%である。日本の同1.6%を下回った。ただ、GDPデフレーターが、韓国は大幅マイナス予想である。GDPデフレーターのマイナスは、深刻な不況の象徴である。GDPデフレーターがマイアンスになると、その値が名目GDPに加わって、実質GDPは、嵩上げされる。よって、2%弱の実質GDP成長率になろう。一昨年が、実質2.7%成長であるから、韓国の受けた傷は大きいのだ。経済の実態は、名目GDP成長率によって表わされている。日韓摩擦で負けたのは韓国である。この現実を素直に受入れるべきだ。