あじさいのたまご
   

中国は昨年、1人当り名目GDPが念願の1万ドルを達成見込みという。今月中に正式発表される。だが、これで勢いをつけてさらに上の段階へ達するには大きな課題を背負っている。多くの発展途上国が、この段階で息切れして停滞局面入りしているからだ。いわゆる、「中所得国のワナ」問題である。

 

1万ドルまでは、豊富な労働力を生かせばどこの国でも実現可能な水準である。問題は、労働力枯渇化の中でいかに生産性を上げていくかである。中国では、それを阻む要因がきわめて多いのだ。

 

第1は、総人口に占める生産年齢人口(15~59歳)比率が。2010年をピークに下げ続けていることである。「人口オーナス期」というマイナス局面に入っており、扶養者が増え続ける状態になった。

 

第2は、義務教育さえ満足に受けていない人々が多く、高度の機械操作に不慣れなことだ。AI(人工知能)時代の現在、これが決定的な立遅れをもたらしている。

 

第3は、米中覇権競争の中で、米国が中国への技術移転を阻止していることだ。もともと、自力の技術開発が困難な国が、習近平氏によって米国へ対抗すると言ってしまった。これが、徹底的な中国囲い込みをもたらしている。自業自得の面が大きい。

 

第4は、不動産バブルによる債務残高の増加である。対GDPでの総債務残高は、300%を上回り、日本の平成バブル期以上である。まさに、「空前絶後」というバブル後遺症の中で、経済の活力維持は絶望的である。

 

中国が、1人当り名目GDP1万ドル近辺で足踏みすれば、「世界覇権」は夢のまた夢。ここ数年で、その全貌がはっきりしよう。いつまでも、実現不可能な夢に拘らず、地道な「経済再建策」を進めるべきであろう。

 


『人民網』(1月15日付)は、「中国のGDP平均1万ドル突破で中等所得の罠に警戒を」と題する記事を掲載した。

 

国家統計局は今月にも2019年の国民経済の成績を発表する。通年の国内総生産(GDP)は100兆元(1元は約15.9円)に迫り、国民一人あたりの平均GDP1万ドル(1ドルは約109.9円)の大台に乗る見込みだ。「経済日報」が伝えた。

 

(1)「平均GDP1万ドルを突破することは、中国の国力を示すとともに、人々の暮らしがより豊かになったことも示すものだ。しかし多くの人が平均GDPは、自分とは関係がないと考え、「自分は平均値や増加分の計算に入ってはいるが、実際の状況は違う」と考える人さえいる。実際、GDPと所得は異なる概念だ。GDPは一定の期間に国内居住者が生み出した富の総和で、所得は富が分配されて個々人の手に渡ったものだ。一部の人は平均GDPの伸びと自分の実感には「温度差」があると感じるのは、主に経済発展のアンバランスと不十分さによる一部の突出した問題がまだ解決されていないことによるものだ」

 

社会主義国の中国が、所得分配で不平等とは「社会主義国看板に偽り」あり、だ。中国では、共産党員が特権階級である。これが矛楯の原点だ。現在、社会主義国経済で起こってはならないことが、起こっているのだ。

 

(2)「北京師範大学統計学院の李教授の分析によれば、「所得格差を生み出すさまざまな体制・メカニズムがまだ整理されていない。市場経済の環境の中では、要素に基づく分配により、人々は生産要素をどれくらいもっているか、その質が優れているかどうかによって、所得格差が生じる。李氏は続けて、「全体として言えるのは、所得格差の問題を解決するには、やはり市場メカニズムと公共政策という2つの手段を十分に運用し、さまざまな側面から関連政策を充実させることが中心になる。しかし注意しなければならないのは、私たちは効率を過度に犠牲にしたやり方で公平さを獲得することは決してしてはならないということだ」と指摘した」

 

下線部分が重要な点である。中国が国有企業中心の計画経済思想を捨てない限り、市場機構に委ねた資源配分(社会の効率性と公平性維持に不可欠)が実現しないのだ。市場機構は、決して「資本主義経済」の独占物ではない。中国は、「特色ある社会主義」などという「寝言」を捨てて、効率と公平の概念に立てば、それが「社会主義」の道に通じるのだ。福祉社会の構築こそ、中国が目指すべき社会であろう。国民を監視カメラで縛り付ける。社会主義にあってはならない話だ。

 


(3)「中国政策科学研究会経済政策委員会の徐洪才副会長によれば、「平均GDPと可処分所得とは2つの異なる概念だが、両者には密接な関連がある。長年にわたり、国民の所得と経済成長は基本的に同じペースを保ち、これも同じく素晴らしい成果だ。より長期的な視点に立てば、中所得層の規模をさらに拡大し、『鉄アレイ型』の所得分配構造から『ラグビーボール型』の構造への転換を果たすことが『中所得の罠』から抜け出すためのカギだ」という」

 

中国が、「中所得国の罠」を脱するには、所得分配構造を変えること。「鉄アレイ型」から「ラグビーボール型」に変えるべきである。それは、努力した者が報われる社会を構築する道である。共産党革命の功労者の子孫は一生、安泰という現状を打破すべきなのだ。「紅二代」である習近平氏には、出来ない話であろう。習氏は、早く引退して「紅二代」とは関わりのない人物が国家主席になるべきだ。