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韓国政府は16日、北朝鮮・金剛山への個人観光を認める意向を表明した。これをテコにして、南北協力構想を進めたい意向である。国連が、経済制裁している下で緩和措置に出ようとすることは、米韓関係に難題を持ち込むこととなった。文政権は4月の総選挙を前に、なりふり構わず「支持者引き留め策」に出ている。

 

一方、北朝鮮は韓国が建設した金剛山の観光施設撤去を要求している。北は、韓国の個人観光を受入れるかどうか分からないのが現状だ。こういうあやふやな中で、「個人観光問題」と「南北協力構想」だけが突出してきた。

 

『朝鮮日報』(1月17日付)は、「米に続き仏も対北制裁解除に反対しているのに文政権は独自に速度戦」と題する記事を掲載した。

 

韓国政府は16日、金剛山の個人観光を認める意向を表明するなど、北朝鮮制裁の迂回(うかい)路探しに乗り出した。韓国政府は「独自に推進する北朝鮮関連事業を選別中だ」とした上で「(米国などに)理解を求めたい」とコメントした。これに対して米国と日本はもちろん、フランスもこの日「北朝鮮に対する制裁は維持すべき」とする従来の考えを改めて確認した。国際社会が一致して反対する中、韓国政府だけが国際社会による制裁を避け、北朝鮮との事業を積極的に進める考えを明確にした形だ。

 


(1)「韓国統一部(省に相当)のある当局者は、この日「軍事境界線付近での協力と個別の観光などを検討している」と発言した。韓国外交部の李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長は15日(米国時間)、米ワシントンで北朝鮮への個人観光について「(米国に)一度話をしたい」「腹を割って話をし、相手側の理解を求めることが今最も必要なことだ」などと述べた。李本部長は16日、米国務省のスティーブン・ビーガン副長官と面会する。韓国大統領はこの日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開催し「朝米非核化交渉の実質的な進展に貢献する方向で、南北協力を推進する方策について話し合った」と説明した」

 

韓国政府は、南北問題になると必死である。経済問題の解決には見せないような熱意だ。だが、多くのリスクを抱えている。北朝鮮が頑なに韓国提案を非難している状況下で、韓国だけの意向でことが運ぶはずがない。個人観光を手がかりに南北共同事業につなげようという意図は丸見えである。

 

(2)「これに対して米国は北朝鮮に対する制裁を維持する考えを改めて強調した。ハリー・ハリス駐韓米国大使はこの日、外信記者団との懇談会で「韓国は北朝鮮と行ういかなる計画も米国と話し合わねばならない」と指摘した。ビーガン副長官は中国外交部の楽玉成・筆頭副部長と電話で会談し、北朝鮮との交渉を継続する考えを改めて伝える一方「制裁の完全な履行」を中国側にも求めた。米ホワイトハウスが明らかにした。フランス政府も同じ考えをすでに表明している。韓国政府による独自の動きに各国がブレーキをかけた形だ」

 

文政権は焦っている。GSOMIA破棄を決定した昨年8月の時と同じような雰囲気である。世論調査を行なって、支持率の高いことを掴んだ「刹那的動き」に見える。韓国は、北朝鮮への制裁解除につながる行為を慎まなければならない。経済制裁は、北に核放棄させる目的である。その恩恵を受ける韓国が、制裁に風穴を開けるとはこれ以上ない矛楯である。

 

(3)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、新年記者会見で南北協力構想を表明したが、これについて米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が15日(米国時間)、ホワイトハウスのある幹部に見解を尋ねたところ、「米国は、国連の全加盟国が安保理の全ての制裁決議を守ることを期待している」と述べた。この幹部はさらに「トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長はシンガポールでの会談で最終的かつ完全に検証された北朝鮮の非核化(FFVD)に合意した。米国はシンガポールでのこの共同声明を完全に履行することに専念している」「これは同盟国である韓国も全面的に支持した目標だ」などとくぎを刺した」

 

文大統領の南北協力構想は、米国からクギを刺された形だ。それを押し切ってやれば、米国がどのような反応するか。GSOMIA問題で経験済みである。それでも文政権は実行できるだろうか。問題はこれだけでない。北朝鮮が韓国の提案を拒否していることだ。

 

『中央日報』(1月16日付)は、「金剛山施設撤去、最後通牒、韓国政府が隠すと北朝鮮が公開」と題する記事を掲載した。

 

(4)「北朝鮮中央通信は15日、「金剛山は北と南の共有物ではない」という論評で、「我々(北朝鮮)の金剛山は民族の前に、後代の前に、我々が主人になって我々が責任を負い、我々の方式で世界的な文化観光地として立派に開発する」とし「金剛山観光開発に南朝鮮が割り込む余地はない」と主張した。続いて「時刻表が決まった状況で、我々はいつまでも通知文ばかりやり取りしながら意味なく歳月を送ることはできない」とし「11日に南朝鮮当局がつまらない主張に固執すれば施設撤去を放棄したものと見なして一方的に撤去を断行する断固たる措置を取るという最後通牒を送った」と明らかにした」

 

北朝鮮の厳しい姿勢を見れば、韓国は取り付く島がないようである。北がここまで強硬に出ているのは、中国が経済支援している結果だろう。そうならば、韓国の対北朝鮮関連事業提案は空転するだけだ。逆に、米韓関係を悪化させるという負の連鎖を生むだろう。