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韓国では、昨年7月から燃えさかった「NO JAPAN」や「NO 安倍」の幟が消えてしまった。今は、安倍首相が韓国について発言したか、何を喋ったか、という具合に一変している。現実の経済や外交の環境悪化が、のしかかっているからだ。

 

韓国学生の就活は、日本企業を当てにしなければならなくなっている。韓国南部の自治体は昨年夏以降に、日本の自治体と長年続けてきた交流を断ち切る騒ぎを引き起こした。それが、12月には背に腹はかえられないとばかり交流を復活。日韓自治体の会議に出席し、学生就活の協議会をつくって、学生も参加させると張りきっている。この豹変ぶりに開いた口がふさがらないのだ。

 

『中央日報』(1月17日付)は、「安倍氏の一言に一喜一憂する韓国」と題する記事を掲載した。

 

「〔文在寅(ムン・ジェイン)大統領は〕非常に物腰が柔らかい、紳士ですね。もっと頻繁に会えるような関係が作れれば」先月末、韓国を騒がしくさせた安倍晋三首相の言葉だ。去年12月29日に放送された「BSテレビ東京」のインタビューだったが、収録は放送の2日前に行われた。収録当日の発言録を入手して読んだところ、韓国関連の部分は4分程度だった。

(1)「正式な首脳会談が15カ月ぶりに開かれてから3日後のことだったが、安倍氏の態度は以前と変わらなかった。徴用問題に対しても「約束が守られなければ国と国との関係は成立しない」と話した。その中で、文大統領について尋ねる司会者の質問に、仕方なく短く上記のようにコメントしたのがすべてだった。それでも韓国では会談以降、安倍氏の態度が大きく変わったかのように大騒ぎとなった。「韓国ではこの発言がなぜニュースになるのか」という日本人の知人の指摘に顔が赤くなるほかなかった」

 

韓国メディアは、安倍首相について「右翼」とか「民族主義」とか形容詞をつけることが多い。この記事では、さすがにそういう過激な言葉は姿を消している。韓国が、「安倍発言」に注目しているのは、韓国の経済や外交の行き詰まりで余裕を失って、突破口を探している事情もあろう。

 

中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の楊丹志(ヤン・ダンジー)氏は、日韓関係について、興味深い分析をしている。「まず外交について、『韓国は困難な時期にあるのに対し、日本は柔軟かつ現実的な議論を進めて効果をあげている』と指摘。『韓国は、米国、中国、日本のいずれとも関係が良くない。北朝鮮との関係はやや改善したが、行き詰まってから新展はない。日韓の争いが続く中、韓国は在韓米軍の駐留費問題などで米国から大きな脅迫と圧力を受けている。中韓もTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備をめぐる傷がまだ癒えていない』としている」(『レコードチャイナ』1月16日付)

 

韓国が、外交面でも八方塞がりの中で「憎い日本」を突破口にしたいという思いが強い。それが、安倍首相発言に関心を集めている理由と考えられる。韓国外交は、万一に備えた「逃げ道」を作らずに、やたらと対決姿勢を取り続けた結果である。

 

(2)「同じような事例は、首脳会談が開かれる10日前ごろにもあった。時事通信主催の講演会で壇上に立った安倍氏の発言が発端だった。「クリスマス・イブの日には、成都で日中韓サミットに出席し、これを機に習近平国家主席、李克強首相との首脳会談、文在寅大統領との日韓首脳会談を行う予定だ」。60分間の講演の中で韓国に対する言及はこの一言だけだった」

 

安倍首相は、韓国について言及することは少なくなった。ある面で、無視している結果だろう。日本の安保のパートナーとして、韓国は5位にランク落ちした。それだけ、外交面での重要性が低下しているのだ。韓国は、この現実を知らずにいる。反日をやれば、日本を困らせられると錯覚している。逆である。困るのは韓国である。

 

(3)「韓国では、「韓国と当然同時に出すべき首脳会談日程の発表を先に横取りした」「『韓国との対話』を外交成果として前面に掲げて各種スキャンダルで下落した支持率を挽回するという狙い」など大きく報じた。だが、日本は静かだった。外交成果を国民に知らせようとする狙いだったのなら、少なくとも「絶対的友軍」メディア数社はこれを大きく報道したはずだ。だが、新聞の中で「クリスマス・イブに文大統領に会う」という言葉を意味があるように取り上げたところはほとんどなかった」

 

日本では、安倍首相が文大統領と会談して、それが大きなニュースにならない背景がある。日韓の険悪な関係が改善しても、日本側に大きな影響がないのだ。韓国が考えるほど、日本における韓国の地位が高くない。

 

(3)「1993年に初当選した「“若い血”議員」安倍晋三氏は、当時も「条約で終わった問題を文書でまた謝罪したら、今後、韓国の大統領が新たに選ばれるたびに(謝罪を)繰り返さなければならない」と不満を爆発させた(宮城大蔵『現代日本外交史』)。新人議員の時から「日韓問題は1965年の基本条約と請求権協定ですでに解決済み」という確固たる考えを有していたことになる。このような「確信犯」水準の相手に対抗するために必要なことは冷静な状況判断と緻密な交渉戦略だ。すぐに熱くなってすぐに冷める態度では、相手に弱点だけを握られてしまう

 

下線部分は、韓国の自己採点である。韓国が、感情のままに「反日」を繰返していると、アジアの孤児になろう。日本と韓国の国際社会におけるウエイトは異なっている。韓国は、それを忘れて、遠い過去を持ちだして日本批判しているが、すでに「法的」解決済み問題である。それを忘れてあたかも昨日、起こったような感覚で取り上げている。日本が、まともに相手にしなくなるのは当然だ。