a0960_004876_m
   

文大統領は、臆面もなくお世辞を言う名人であるようだ。これが、米国トランプ大統領と「ケミストリ」(相性)が合わない理由かも知れない。もっとも、トランプ氏は、初対面の人物と会ったとき、旧知のように振る舞うという。その点で、安倍首相もトランプ型で如才ないタイプと聞く。ならば、文氏もトランプ氏と波長が合うはずだが食い違っている。なぜか。文氏には「一物」を持って、表面だけ繕っているのかもしれない。「ディールの天才」と自称するトランプ氏から見れば、文氏は腹を割って話せるタイプでないのだろう。

 

首脳間のギクシャクは、外交面に表れる。トランプ氏は、本当に韓国(文大統領)が嫌いだという。できれば、韓国へ行きたくないと安倍首相に愚痴っていると報じられている。この「韓国嫌い」が、米韓防衛費負担問題で揉める原因である。米軍の韓国駐留費分担問題で、米国は約50億ドルを請求して大騒ぎだ。一挙に前年の5倍も引上げたのだから、すんなり決まるはずがない。ただ、韓国も考え直す部分があろう。米韓同盟国として、中国へ「色目」を使わないことだ。これが、どれだけ米国の神経を逆なでしているか分からない。

 

朝鮮戦争で救ってくれた米国をぞんざいに扱い、侵略してきた中国や北朝鮮に神経を使い、丁重に対応している。これは、常識外れである。とりわけ、中国へは最大の敬意を払っている。旧宗主国・中国という思いが消えないのだろう。過去の問題で、日本には謝罪と賠償を求める。中国には、一切の恨み言を言わず最敬礼している。不思議な国である。

 


『中央日報』(1月19日付)は、「トランプ、『韓国がTHAAD費用100億ドル出さなければ米軍撤収と言及』」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領がミサイル防衛(MD)システム費用100億ドルを韓国が負担すべきと主張し、在韓米軍撤収にまで言及した事実が公開された。『ワシントンポスト』は17日、自社の記者2人が書いた本『非常に安定した天才』に収録された2017年米国防総省ブリーフィングのエピソードを紹介した。


(1)「報道によると、トランプ大統領は2017年7月20日に米国防総省で行われた内部ブリーフィングで、「韓国がMD費用100億ドルを出すべき」と話した。「われわれの兵士がそこにいる代価を払わせなければならず、われわれは全てを使って金を稼がなければならない」としながらだ。同紙はMDシステムが韓国軍と在韓米軍を北朝鮮の短距離・中距離ミサイルから保護するために考案されたものと説明した。トランプ大統領は韓国に「賃借料を出すべき」と話し、10億ドルを負担しなければ在韓米軍を撤収しようという提案をしたと同紙は伝えた」

 

トランプ氏は乱暴な言い方をして誤解を受けている。ただ、同盟国のあり方として、米国が大半の駐留経費を払うことは、いつまでも継続できるはずがない。仮に、米国と同盟を結び安全保障が維持され、国土が侵略されないメリットを計算すれば、応分の負担は当然であろう。韓国の場合、文政権になって米国への態度で、「裏表」が目立っている。韓国国防部の上層部は、定期的に中国人民解放軍幹部と面会しているという。こういう隠れてコソコソやっていることが、米国の信頼を裏切っているのだ。

 

(2)「実際にトランプ大統領は、2017年4月のインタビューで「韓国が高高度防衛ミサイル(THAAD)システム費用を払うのが適切で、その費用は10億ドルになるだろうと韓国に通知した」と明らかにした。しかし当時は曲折の末に米国が費用を負担することで合意案が採択された。一方、当時のブリーフィングはマティス元国防長官、ティラーソン元国務長官、コーン元国家経済委員会(NEC)委員長らが企画した。彼らは第2次世界大戦後に形成された核心同盟関係に関するトランプ大統領の無知に驚きを隠すことができなかったと同紙は伝えた」

 

下線部分は、これまで指摘されてきた点である。不動産王が米国大統領になったのだから、専門家の目からみれば、「無知」であっただろう。一つ良い点は、文氏が戦争嫌いということだ。なまじ、軍事知識を持っていて、積極的に軍事面で口を出されるのも困ったものだろう。

 


(3)「マティス元長官はさまざまな資料を動員して米軍が韓半島(朝鮮半島)とアフガニスタン、イラン、イラク、シリアなどでどのような役割をしているのか詳しく説明した。各種チャートとグラフィックが活用されたこのブリーフィングは、トランプ大統領向けの一種の授業だった格好だ。しかしトランプ大統領は授業のような雰囲気にかんしゃくを起こし不平を言い始めたと本は記述した」

 

トランプ氏は、中国を仮想敵としている。これは、米国の超党派の見解でもあり、トランプ氏が「ディール感覚」で中国と取引するのでないかと危惧されているほどだ。米議会では、トランプ氏が「中国と取引」させない強硬姿勢を見せている。トランプ氏は受け身である。

 

米国は、「インド太平洋戦略」を策定して、アジアでの中国の膨張抑制に動いている。これは、安倍首相のアイデアに基づくもので、日本外交が世界を俯瞰している例だ。日本は、米国と安全保障政策で共同歩調を取ることはきわめて重要だ。日米が一体化すればするほど、中国は日本を攻撃することのリスクの大きさを自覚する。これが、平和を維持する上に寄与するのだ。戦後の一時期、中立が戦争に巻き込まれない防止策といわれた。だが、最近は中立ほど危険であるという認識が深まっている。安全保障論の進化である。

 

(4)「合わせてトランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)を無価値だとこき下ろした。彼は「滞納された」という不動産用語を使ったりもした。その上で「あなたたちは受け取れなかった借金がある! あなたたちが事業をしていたなら完全に破産しただろう」と怒ったと同紙は報道した」。

 

NATOは、米国に依存しっぱなしである。防衛費も対GDP比で低位である。第二次大戦終了後、今年は75年を迎える。米国に依存しすぎるのは、トランプ氏ならずとも怒って当然であろう。安全保障に、「フリーライダー」は許されない。