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民族主義者を側近にした不幸

二大制約条件の一つ人口問題

環境破壊で華北は炎熱地獄へ

二酸化炭素の排出ゼロが急務

 

習近平中国国家主席が、もっとも輝ける時期は終わったようだ。2012年11月中国共産党総書記に就任、翌年3月中国国家主席の座へ。以来、不動産バブル経済を背景に恣に振る舞い「中華復興」を唱え、内外で威勢を振るってきた。膨張したバブル経済が、中国の実力であると見誤ったのである。

 

当時、中国の経常収支黒字は他国を圧倒していた。2015年には3041億ドルを稼ぎ出して世界1位になった。それが、2018年には490億ドルに縮小して、世界11位と大幅な後退である。経常収支黒字は、多くは外資系企業の輸出が稼ぎ出したものだ。それを、中国企業と錯覚して、前記の「中華復興」という夢を語らせたのであろう。「他人の褌で相撲を取っている」ことに気付かず、有頂天になったのだ。

 

民族主義者を側近にした不幸

習氏は2017年、有力側近に民族主義者である王滬寧(ワン フーニン)氏を序列5位の中央政治局常務委員に選んだ。この人事が、習氏の外交政策を大きく変えさせ、米国と対決する路線に誘い込んでしまった。王氏は、米国留学経験を持つが、「真面目」に米国で学んだのでなく、米国の欠点ばかりをあげつらう異端児であった。これが、米国軽視を習氏に吹き込んだ背景である。

 


習氏には、留学経験がない。毛沢東と同じである。周恩来や鄧小平はフランスに「遊学」している。だから、前記の二氏は国際感覚を持ち、米国と交渉でき基盤があった。習氏の場合、留学経験はない。選んだ側近が、米国を軽視する民族主義者であるという悪条件が重なり、今回の米中貿易戦争では、無残な敗北を喫したのである。東条英機が、外務省の米国通外交官の意見を無視して、米国と開戦し大敗北を喫した経緯とよく似ているのだ。

 

習近平氏は、2035年までに米国経済へ追いつき、抜き去るという目標を立てた。この裏には、前記の王滬寧氏が采配を振るったことは容易に想像できる。この夢の計画は、国家主席任期制限撤廃とともに、2017年の中国共産党大会で了承された。この前提には、「中国が6%成長、米国が2%成長」を継続するという非現実的な仮定が置かれている。そもそも、こういう非現実的な目標を立てたこと自体、中国の奢りがみえみえだ。

 

中国が、2035年までに米国経済を追い抜く夢が、儚く消える運命になってきた。この計画は、もともと人口問題(労働力供給)と環境破壊という、100%予測できる問題を無視した不完全な計画で、大きな誤解を生むものである。

 

経済予測に当っての絶対不動の条件は、人口制約と環境制約である。これらは、短期的に動かせない要因であり、「所与の条件」として受入れざるを得ないのだ。驚くことに、中国は深刻な人口動態や環境破壊の実態を無視して、「バラ色」のデタラメ計画をつくっていた。日本が、太平洋戦争開戦時に行なった国力調査と大差ない代物であろう。中国に都合のいいデータだけを集めたに違いない。ここまでした、中国がGDP世界1位の夢に憧れた理由は何かだ。

 

それは、中国共産党の統治能力の高さを内外に示して、国内政治の安定化を実現する。同時に、米国から覇権を奪って「中華の夢」を実現する。名実ともに、世界の盟主交代によって、世界を共産主義化するというのであろう。このシナリオ・ライターが、王滬寧氏であることは間違いない。日本で言えば、軍部の若手将校を操った大川周明という役どころであろう。あるいは、帝政ロシアの怪僧ラスプーチンになぞらえる人物と思われる。習近平氏は、大変な人物を抱え込んでしまったのだ。(つづく)