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韓国の昨年の実質GDP成長率が発表された。辛うじて2%を維持した。この裏には、涙ぐましい努力があった。2%成長の中身を見ると、民間部門が0.25%ポイント。公共部門が1.75%ポイントの寄与となっている。政府部門が、支出を増やして1%台の成長率を阻止したことは間違いない。今年4月の総選挙を前に、「1%台成長」では不利と見たのだ。

 

政府はまだ隠し立てをしている。GDPデフレーターの数値が不明であるのだ。名目成長率が1%台であるが、GDPデフレーターがマイナスで「名実逆転」(名目成長率が実質成長率を下回る)になっていることを知られたくなかったのであろう。名実逆転であれば、韓国経済は、先行き不安を増幅するからだ。

 

韓国銀行のGDP統計発表数字を各紙で調べた。だが、GDPデフレーターが見当たらないのである。隠してしまったと見られる。IMF(国際通貨基金)による昨年10月予測では、GDPデフレーターは、前年比マイナス0.868%であった。すでに発表されている各四半期のGDPデフレーターは、1月から9月までマイナスを記録。3四半期のGDPデフレーター平均は、マイナス0.938%である。

 

韓国は、昨年のGDPデフレーターがマイナスに落込んだとすれが深刻である。普通の経済では、GDPデフレーターがプラスになる。つまり、輸入物価、生産者物価、消費者物価などを総合したGDPデフレーターは、上昇しているものだ。その意味で、GDPデフレーターは景気の基調を見る上で不可欠である。韓国のGDPデフレーターがマイナスに落込んだのは、韓国経済が長期不況色を強めていることを意味する。韓国銀行は、それを嗅ぎつかれないように隠したのでないか。私は、そう疑うのである。

 

『朝鮮日報』(1月23日付)は、「金融危機以降最低の2%成長、それも4分の3は税金」と題する社説を掲載した。

 

昨年の韓国の経済成長率が2.0%にとどまり、世界的金融危機以降10年ぶりの低成長を記録した。政府が年末に税金をつぎ込み、ようやく2%を死守したが、2%のうち企業や家計による民間の寄与割合は25%ポイントで、税金支出を意味する政府の寄与度が75%ポイントに達した。特に財政出動で総力戦が展開された昨年10~12月には政府が成長全体の83%ポイントを担うという正常ではない状況である。民間経済が停滞する中、政府が税金で無理に成長率をつり上げたことを示している。文字通り「税金主導成長」である。

 

(1)「政府があらゆる手段を使い、2%達成に全力を挙げたのは「成長率1%台」という成績表では総選挙を戦えないからだ。それで「予算を残せば不利益を与える」として、予算の早期執行を促した。地方自治体が給与の支給日を前倒しし、各地の教育庁は長期休業に入る前に教室の私物ロッカーや机椅子を交換するなどてんやわんやだった。真冬に木を植えたり、高齢者の就労事業を行ったケースもあった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は勤労・子女奨励金を執行するのに忙しかった一線の税務署にピザまで配った。税金を節約するのではなく、最大限気前よく使わないと大統領に称賛されない国になった」

 

下線部分には、政府10~12月にかけて財政支出を必死で増やして、GDPの下支え策に出た様子を示している。一昨年の10~12月期のGDPも政府部門の支出増で18年のGDP成長率を2.7%に押し上げている。昨年も同じ手を使ったのだ。だが昨年と同様に、今年1~3月期のGDPはマイナス成長になろう。

 

(2)「経済の至る所で成長動力が失速している。低成長の相当部分は政府の政策的ミスが原因だ。労組寄りで反企業・反市場的な政策が企業の意欲をそぎ、産業の活力を低下させた。全ての先進国が規制改革と減税、労働改革を通じて競争力を高める政策を取る中、韓国政府は逆行した。最低賃金と法人税を急激に引き上げ、硬直的な労働時間の週52時間上限制を強行し、コスト負担が高まった。規制改革どころか環境や既得権の保護を理由に新たな規制を大量に追加し、企業活動に足かせをはめた

 

文政権は、何よりも総選挙の敗北を恐れている。だから、支持母体の労組と市民団体の顔色を見て政策を行なっている。苦しむ国民を救うことよりも、「共に民主党」を総選挙で勝たせる。それによって、文在寅氏は安心して任期を全うして、検察捜査を受けずに幕引きできると踏んでいるのだ。

 

(3)「経済副首相と与党代表は2%成長について、「困難な環境でも善戦した」と自画自賛した。経済基調を転換するという言葉は全くなかった。税金主導成長は持続可能なものではない。既に財政赤字が急速に膨らみ、政府債務が初めて700兆ウォンを超えた。やがてこれ以上税金をつぎ込むことができない状況が到来する。現政権はそれが任期後に訪れると信じているのだろう」

 

文大統領は、韓国の大統領ではなく「共に民主党」の大統領である。これほど露骨に支持母体の利益だけを追及した政治家もいないだろう。それが、2019年の経済成長率の中身に表れている。