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文大統領の任期は、2022年5月である。仏のマクロン大統領と4日違いだ。任期は、双方5年である。どちらが業績を上げて退任するか。興味深いものがある。マクロン氏は、強大な労組と対決して経済再生を図っている。文大統領は、巨大労組の顔色を伺い最低賃金の大幅引上げによって、経済破壊に進んでいる。

 

この対照的な二人の大統領を比較すると、政治家としての度量の違いが浮かび上がる。文氏は、国家の利益を忘れて、ひたする自らの支持基盤の労組へ忠実に振る舞っている。マクロン氏は、フランス経済再興のために、反対勢力を説得しながら進んでいるのだ。どちらの国民が幸せか。言うまでもあるまい。

 次に、両国の実質GDP成長率を比較したい。

 

        フランス   韓国

2014年   1.0%   3.2%

  15年   1.1%   2.8%

  16年   1.1%   3.0%

  17年   2.3%   3.2%

  18年   1.7%   2.7%

  19年          2.0%


フランスは2017年、マクロン大統領になってから実質GDP成長率は、それ以前の1%強から抜け出た感じで2.3%や1.7%になっている。経済改革が功を奏し始めているのだ。韓国とは対照的である。上り坂のフランスと下り坂の韓国である。

 

『中央日報』(1月24日付)は、「メシアはいない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ジョンミン論説委員である。

 

相次ぐデモに苦しんでいるフランスのマクロン大統領の評価が韓国で急上昇している。保守政権10年の「積弊」と積弊清算を呪文のように唱えながら執権し、「新積弊」を生み出した進歩政権に失望した韓国の人々に清凉剤となっている。

 

(1)「マクロン大統領は2017年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4日の差で就任した。マクロン大統領は経済・産業・デジタル相を辞任し、「アン・マルシュ」を結成して大統領選挙で当選した。左派でも右派でもない中道を標ぼうして旋風を起こした。「過去の数十年間、左派・右派政治家は公共支出を増やし、未来の世代に負担を押しつけた。現実に立ち向かう勇気がなく、子どもたちに耐えがたい負債を押しつける卑怯な行為をした」。フランスを低成長・高失業の泥沼に陥れた政界の無能を攻撃し、「フランス病」の治療を訴えた39歳の青年の覇気に有権者は喝采を送った」

 

下線部分は、文政権にそのまま当てはまる。経済の失政をすべて、財政支出で隠しているからだ。韓国は、健全財政路線を歩んできた。文政権になって、すべて財政支出でカバーする「ポピュリズム」政治に落込んで恥じず、だ。国家財政を食い物にしている政権である。

 


(2)「マクロン大統領の真価は、「雄弁」でなく「実践」で表れた。執権するとすぐに富裕税廃止、法人税引き下げ、福祉予算削減を一瀉千里に進めると、2018年には油類税引き上げまで断行した。パリ郊外に暮らして自動車で出退勤する中産層・庶民が油類税引き上げに反発した。自動車事故に対応するため車内に義務的に備えている蛍光色の黄色いベストを着た運転者のデモは、マクロン退陣運動にまで広がった。支持率は20%台に落ちた。しかし失業が減り、景気が反騰したことで、危機から免れた。「解雇しやすい環境」を作ったところ、企業の雇用が回復したのだ

 

下線部分は、抵抗を受けやすい政策である。既得権益をはぎ取るからだ。既得権益を維持すると、財政硬直化を招く。「働かざる者は食うべからず」という原則を打ち立てる。それが、経済を活性化させる道だ。韓国は、労組に新たな既得権益を与えてご機嫌伺いをしている。最低賃金の大幅引上げがそれだ。労働市場の流動化とは、「解雇しやすい」環境づくりだ。企業はこれをテコに、新部門へ挑戦する余裕が生まれる。こうして、一斉に新部門へ取り組めば、結果として雇用増に結びつく。労組的な発想では、雇用増が実現不可能なのだ。

 

(3)「今度は年金改革に注力している。「より多くの労働をしてより少なく受ける」年金改革は歴代政権がすべて失敗した深刻な問題だ。抵抗は全国民的だ。フランス鉄道労働組合は過去最長ストライキ記録を連日更新している。マクロン大統領は退職後の大統領特別年金(月2500万ウォン)を放棄する背水の陣を敷いて労働組合を説得している。国家大討論会を開き、労働組合と向き合った。自身を「企業寄り」と攻撃する労働者の前で、はっきりと犠牲を要求した。「仕事をせずにより多くのお金を稼ぐことはできない。税金を減らして政府の支出を増やすことはできない」。「企業を守らず労働者を保護できると考えるのは間違っている」と指摘する

韓国労組は、「仕事をしないが、雇用を保障して、年功賃金を払え」という虫の良い要求をする。これは、高度経済成長期に実現できたが、低成長経済では不可能である。経済環境の変化を理解しない韓国労組に、どうやって現実の厳しさを教えるか。心情的に最も近い立場の文政権が、説得する以外にない。文政権は、労組を説得するどころか煽っている。韓国与党には、「ステーツマン」が一人もいないのだ。

 


(4)「マクロン改革の成敗を予測するのは容易でない。しかし票が減ることを覚悟しながら国民に犠牲を要求する指導者の堂々とした態度とリーダーシップがマクロン大統領を輝かせる。選挙ではなく国家の明日を考える政治家らしい品格だ。キッシンジャー元米国務長官の警句を思い出す。「この時代の根源的危機の兆候は、国民に犠牲を要求する指導者が登場しなくなったところにある」。意味深長な言葉だ」

文氏は、保守派を毛嫌いしている。これでは、大統領の資格がない。進歩派がいれば、必ず保守派が存在するもの。健全な世論は、そういう中でバランスを取りながら形成されるのだ。文氏の希求する「進歩派で永久政権」は、進歩派独裁体制を意味する。もっとも危険な道を「党利党略」目的で突き進んでいる。マクロン大統領の念頭には、フランス国民とともに歩む理想図がある。文大統領には党派性しかないのだ。