あじさいのたまご
   

文大統領は、4月の総選挙を前に人気を高める可能性があれば、なんでもやる姿勢だ。北朝鮮への個人旅行案もその類いである。以前に、金剛山観光で韓国人女性が射殺される事件が起こっている。これが引き金になって、韓国人の北朝鮮旅行を中止した。

 

こういう問題含みの場所へ、個人の観光旅行を認めるとなれば、身の安全をいかに保証するか、北朝鮮と話合わなければならない。現状では、そういう南北協議さえ実現していないのだ。肝心の北朝鮮が、韓国国民を受入れるか、という基本問題が未解決である。文氏は、アドバルーンを打ち上げて、反応を見ただけかも知れない。

 

「東亜日報」(1月23日付)は、「中国旅行社、『北で個別観光許可の動きはなし』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「新年の辞」と新年記者会見を通じて北朝鮮への個別観光を推進する構想を明らかにしたが、北朝鮮が関連措置を取ったことは確認されていない。北朝鮮が韓国人にビザを発行する場合に北朝鮮観光の拠点となる中国の主要旅行社を東亜(トンア)日報が接触したところ、「北朝鮮が韓国人の旅行を許可することに政策を変えたという情報を確認していない」と答えた。中国の旅行社は、「韓国が推進中の北朝鮮への個別観光と関連して準備していることはあるか」という本紙の質問に、多くが「北朝鮮の立場が変わったとはまだ聞いていない」という反応を示した」

 

北朝鮮が、韓国人旅行を受入れなければ、文大統領がいくら頑張っても実現不可能だ。文氏はこの問題で、事前に北朝鮮へ打診したわけでなく、「アドリブ」で言ったに過ぎない。

 


(2)「中国・瀋陽にあるA旅行社は、「北朝鮮の政策が変わるなら、私たちが韓国人観光客を北朝鮮に送ることもできるだろう」としながらも、「まだ(観光政策に関連して)北朝鮮内部の変化はない。今は韓国の旅券所持者を北朝鮮に送ることはできない」と話した。北京にあるB旅行社も、「(韓国)政府の政策をよく知っている」としつつも、「まだ議論が進行中であるだけではないのか。結果がどのように出るか見守るだけ」と話した。また別の中国のC旅行社は、「現在のところ(韓国人の個別観光と関連して)何の計画もない。全ては仮定の状況」と話した。個別観光が実施される場合、仲介役を担うとみられるこれらの旅行社も、まだ北朝鮮のムード変化を全く感じていないのだ」

 

中国の旅行会社の感触を聞いてみると、従来と全く変らないという。となれば、文大統領は実現困難であることを知りつつ、景気づけのために言ったという印象が強い。事情を知らない国民は、「大統領発言」に期待を持っただけで終わる話だ。文字通り、「選挙対策」である。こういう、実現しそうにないことを言って良いものか。文氏への信頼を落とすのだ。

 

(3)「これらの旅行社は、韓国人観光客の安全問題については、「北朝鮮は安全な国」という原則的な立場だけを示した。A旅行社は、「インドに行くならインドの風習どおり豚肉を食べないのではないのか。北朝鮮でも北朝鮮の規則に従いさえすれば大丈夫だ」と説明し、C旅行社は「北朝鮮の文化と法を尊重するなら安全だ。極度に安全だ」とまで述べた。韓国人だからといって他国人と差別化される追加的な安全措置を取る必要性がないという考えを示したのだ。統一部は、北朝鮮の沈黙と個別観光に対する安全問題の憂慮にもかかわらず、政策を推進していく考えを再確認した。李相旻(イ・サンミン)統一部報道官は22日、定例会見で、「民間交流拡大次元の案の1つとして個別観光を考えている」とし、「(個別観光と関連した)安全問題もそのような次元で検討していく予定だ」と話した」

 

中国の旅行会社は、韓国人だからと言って特別の安全措置をとることはない。韓国統一部は、具体的な「安全策」をすでに考えている様子でもない。文大統領が、こういう状態で自国民の北朝鮮旅行を勧めるのは、きわめて無責任である。所詮、選挙のために「一票」欲しいというレベルの話であろう。