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習近平国家主席にとって、武漢の新型ウイルス事件は政治的にも厳しい問題を突きつけている。年1回の全人代(国会)は、3月5日開催である。あと40日足らずである。この間に、猛威を振るい始めた新型ウイルスが解決せず、全人代が延期されるような局面になると、習氏の権威は大幅な失墜である。

 

中国は、SARSの経験を生かして対策を取っていると言われてきた。だが、武漢当局は昨年12月、新型ウイルスの発症をSNSで訴えた者を拘束するという「見当違い」のことをしていたことが判明している。すでに、本欄で報じた通りだ。SARSの経験は生かされていなかったのだ。

 

皮肉な話だが、監視カメラで全国民を監視している。だが、衛生管理は完全に抜け落ちていた。中国は、監視する対象を間違えていた。人間を監視するのでなく、ウイルスなど衛生面の監視が必要なのだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「習政権、危機封じ込めへ非常手段、政治日程に影響も」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が湖北省武漢市で発生した新型肺炎を封じ込めるため、前例のない非常手段に打って出た。武漢市の「封鎖」に続き、27日からは海外への団体旅行を禁じる。背景には感染の拡大に歯止めがかからず、政治や外交の日程にも影響が及びかねないという強い危機感がある。

 


春節(旧正月)の25日午後、人影もまばらな北京の中心部は突然、ただならぬ空気に包まれた。「体温を測らせてください」。主な地下鉄駅に白い防護服で身を固めた多くの係員が配置され、簡易体温計で一人ひとりの乗客をチェックし始めたのだ。「2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が猛威を振るったときと雰囲気が似てきている」。当時を知る40代の男性は不安げに語った。

 

(1)「35日には全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕する。全国から代表が北京に集まる全人代の前後は、中国の政治カレンダーで最も敏感な時期になる。新型肺炎の感染が収まらず、全人代の開催そのものが危ぶまれるような事態に陥れば、習政権が受ける政治的な打撃の大きさは計り知れない。手荒にも思える矢継ぎ早の強硬策は、カレンダーから逆算して打ち出している面が大きい」

 

全人代が、3月5日に開催されなければ、習近平氏に与えられている「領袖」の称号に傷がつく。ここまで権力を集中させながら、なんら効果が上げられなかった国家主席では意味ない。そういう批判が出てもおかしくはないのだ。言論統制してきた弊害が、新型ウイルス事件で一挙に表面化した。SNSがオープンになっていれば、情報交換も早く行なわれ、ウイルス発生の把握が容易であったであろう。惜しい機会を逸して、被害を中国のみならず世界中に広げてしまった。

 


(2)「北京の外交筋の間では、「トランプ米大統領の早期訪中が難しくなるのではないか」と、そんな観測も浮上している。米中両国は15日に貿易交渉をめぐる「第1段階の合意」に署名した。トランプ氏が2019年末、第1段階の署名後に「北京を訪問して第2段階の協議を始める」と表明してから、その時期をめぐってさまざまな臆測が飛び交う。北京に駐在する外交官の一人は「2月訪中も十分にあり得る」とみていた。ウクライナ疑惑をめぐる米議会上院の弾劾裁判が本格化するなか、トランプ氏が自ら訪中して第2段階の協議をぶち上げれば、11月の大統領選に向けた大きな得点になるからだ。新型肺炎の拡大で、早期訪中はもはや想定しにくい。4月には、習氏が国賓として日本を訪れる。それまでに事態が沈静化しなければ、訪日の日程にも影響が出かねない

 

早ければ、2月にも米国トランプ大統領の訪中が見込まれていたという。今回の新型ウイルス発症で、その期待は消えてしまった。4月の訪日計画も予定通り行なわれるか疑問符がつく。すべて新型ウイルスの感染終結が前提になる。ウイルスが、外交日程にまで影響する事態になった。