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中国武漢で発症した新型ウイルスは、感染しにくいとされてきた子供の感染例も一部で出始めた。最年少の感染者は生後9カ月といい、中国メディアは「子供を含めた全ての人が感染する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。感染の拡大ペースは、SARSを上回るのではないかと指摘されている。

 

この調子でいくと、どこまで感染が拡大するか分からなくなってきた。すでに、日本への影響も出ており、中国人観光客のキャンセルが増えている。日本経済への影響をチェックする段階になってきた。

 

『ロイター』(1月27日付)は、「東京五輪に忍び寄る新型肺炎、日本経済への影響を読む」と題する熊野英生氏(第一生命経済研究所主席エコノミスト)の寄稿を掲載した。

 

中国人の訪日客は頼みの綱だった。中国の団体旅行の禁止や、国内移動の制限はいつまで続くのだろうか。仮に東京五輪の手前で非常態勢が解除されても、すぐに日本への訪日客数が元に戻るかどうかもわからない。通常、旅行の手配は2~3カ月前に行われるからである。従って、非常態勢からの脱却は、7月の2~3カ月前の2020年4~5月までに行われてほしい。

 

(1)「最近の訪日外国人の状況からすると、今回の中国の肺炎はさましく最悪のタイミングであった。日韓関係の悪化や香港情勢の緊迫化という2つの事件を受け、2019年の訪日外国人数は韓国からは前年比25.9%減と大幅に減り、香港からも伸び率が鈍化した。2019年の3188万人(前年比2.2%増)という数字は、2つの要因がなければもっと伸びていたに違いない。ラグビーワールドカップの追い風に支えられ、加えて中国人観光客の伸びに助けられていた。2020年に入ってからは、ラグビーワールドカップの効果はなくなっているので、中国人の訪日客だけが頼みの綱になっている。そうした苦しい局面での新型肺炎であった。4月には、習近平国家主席が国賓として来日する。そこまでに新型肺炎が鎮静化していれば、日本政府は訪日客の促進策についての議論を進めることもできよう」

 

4月には、習国家主席の国賓として来日する。それまでに、新型ウイルスが収束しなければ、延期となろう。7月には、東京五輪がある。どんなことがあっても、それまでには「解決」できるように祈るほかない。

 

(2)「新型肺炎の打撃は、インバウンドだけに止まらない。中国経済の減速を通じた日本経済への影響がより警戒される。人口1100万人の武漢市が封鎖されると、中国経済にも打撃は大きいはずだ。武漢市のある湖北省は人口5902万人で、工業生産額の約2割を自動車関連産業が占めている。日本貿易振興機構(JETRO)によると、武漢市には約700人の日本人が駐在しており、進出している日本企業は自動車など約160社に及ぶ。すでに中国全土から多くの駐在員やその家族が帰国しており、日本から中国への渡航もかなり慎重になっている。日本企業への影響は必至とみてよい」

 

武漢市に進出している日本企業は約70社である。湖北省は、中国工業生産の約2割を占めている。それだけに新型ウイルスによる工場操業停止は痛手だ。

 

(3)「マクロ的には、中国経済の減速が、日本からの輸出減少につながる点が不安である。現地に進出した企業の生産停滞が、日本から輸出している部品や素材の需要を減少させることもあろう。貿易統計によると、日本から中国向けの実質輸出は3四半期連続プラスで推移(季節調整値)してきた。次世代通信5G需要の立ち上がりが、電気・機械や生産用機械の輸出を最悪期から脱出させていたところだった。せっかくのその流れが阻害されることになれば、新型肺炎の影響は誠にタイミングが悪いと言わざるを得ない」

 

日本から中国への輸出は、3四半期連続プラスである。それだけに、せっかくの上昇カーブが途切れることは痛手という。ただ、日本にとってはどうにもならない「事故」だけに、諦めるほかない。