テイカカズラ
   


武漢の新型コロナウイルスはいつ終息するか。これによって、世界経済の動向が読めるだけに関心が集っている。中国では、「2月8日説」を出している。根拠は不明だが、中国政府による突貫工事で建設中の二つの病院完成を理由と見られる。これまで、診察したくてもできなかった感染者を一挙に診察して、「ピーク感」を出そうという狙いに違いない。

 

これは、疫学的見地から言えば邪道のようである。一人の感染者がウイルスを他の人に移す割合が「1」を割らなければ、感染が「ピーク」を打ったとは言えないからだ。時間を置いてじっくり観察することがベストである。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月3日付)は、「新型肺炎、感染ピークは数週間後の可能性も」と題する記事を掲載した。

 

(1)「世界各地の公共衛生専門家が、中国で発生した新型コロナウイルスの感染者数を正確に把握し、その感染力を見極めようと懸命に取り組んでいる。ここ数日発表された研究によると、新型ウイルスの感染力は季節性インフルエンザより強く、2002年と03年流行した同様の病原体が原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じだが、致死率はSARSをはるかに下回るとみられる」

 

今回の新型コロナウイルスは、感染力がSARSと同じであること。致死率はSARSをはるかに下回ること、などが分かってきた。

 

(2)「米疾病対策センター(CDC)は、新型ウイルスが人から人へどれだけ感染しやすく、それがどの程度続くのかについては不明だとしているが、発症していない感染者に2メートル弱近づけば感染する可能性があると指摘する。移動パターンと各国で確認された感染者に基づく数学的確率モデルを用いた、米ノースイースタン大学の研究者らの研究によると、最初に新型ウイルスが発生した中国湖北省武漢市の感染者数の中央値は129日時点で31200人だったと推定される。同日の公式発表は2261人だった」

 

中国は、これまで診察体制が整わず放置されてきた感染者が多かった。1月29日時点の感染者数は3万1200人と推計されるが、公式発表は2261人と7.2%に過ぎない。現在、感染者数がうなぎ登りであるのは、検診体制が整備されてきた結果であろう。ただ、これまで放置されてきた感染者が二次感染、三次感染を生んでいる懸念は大きい。

 

(3)「最近発表された、いくつかの研究によると、1人の感染者が平均23人に新型ウイルスを感染させている。疫学者はこれを「再生産数」と呼ぶ。再生産数が2を超える場合、感染が急速に拡大する恐れがある。一方、1を下回れば終息に向かっていると考えられる。算出方法により再生産数の推定値はさまざまだが、スイス・ベルン大の疫学者クリスチャン・L・アルトハウス氏は「全て同じ方向を示している」と指摘。同氏が共同執筆する研究では再生産数の推定値は2.2だとし、「再生産数が下がらなければ、世界規模の流行になる恐れがある」と述べた」

 

感染拡大率は、再生産数と呼ぶ。これが、2を超えると感染は急拡大する。1を下回れば終息に向かうという。現在の新型コロナウイルスの再生産数は、2.2と推定されている。この状態では、世界規模の流行になる危険性が高い。

 

(4)「中国当局は、新型ウイルスの感染拡大は28日までにピークを迎えるか、終息に向かい始める可能性があるとしている。だが他国の一部専門家は、ピーク達成まであと数週間かかるかもしれないと示唆している。他の多くの要因も作用しているため、再生産数は必ずしもウイルス流行の深刻度を測る尺度にならないと中国当局は主張する。例えば、はしかの再生産数は1218だが、ワクチンが普及しているためそれほど急速には感染が拡大しない。 だが、新型ウイルスのワクチンはまだない」

 

中国当局は、感染拡大は28日までにピークを迎えるか、終息に向かい始める可能性があるとしている。これはきわめて楽観的だ。中国各地の診療体制は、当欄が取り上げてきたようにお寒い限りであった。医師がSNSで、マスクなどの寄付を求める悲痛な訴えが多かった。これを見れば、二次感染、三次感染は急速に進んだと見るほかない。

 

よって、中国側の主張は余りにも政治的、楽観的な見方である。他国の専門家のように、ピーク達成まであと数週間かかるかもしれないと慎重に見る賢明さが必要であろう。ここで、重要なカギを握るのは米国である。

 

米国は1月31日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためとして、「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。それによると、過去14日間に中国を訪れたことのある外国人の入国を拒否する厳しい内容だ。また、中国からの航空便の到着地は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港やハワイ州のホノルル国際空港など7か所に制限した。米国務省は、中国への渡航情報を最高レベルの「渡航中止」に引き上げたことを受けて、米国の主要航空会社は、中国とアメリカを結ぶ便の運航を順次、見合わせると発表した。

このように、米国は中国と航空機での往来も禁じる緊急措置に出ている。これが、いつ解除されるかがポイントを握る。中国の言う「2月8日ピーク説」の真偽は、米国が判定することになろう。米国の宣言が出ている間は、世界経済の回復に向けた動きは期待できない、ということだ。米国の動きに焦点を合わせるべきであろう。