あじさいのたまご
   


韓国の総選挙は4月15日である。文政権は、地方選挙を巡って大統領府が介入した事件の起訴状の全文公開を拒否した。与党が、総選挙で不利になると判断したためであろう。これまで、起訴状は全文公開が慣例であった。それを覆してまで、与党を守るという露骨な動きである。

 

文政権は、進歩派を名乗っている。現実に行なわれている執政姿勢は、真の進歩派イメージから遠く、政権という利権を守るに汲汲とした姿を露呈している。進歩派であれば、自陣営に不利な事件でも起訴状を慣例通り全文公開して、事件再犯を防止するのが筋であろう。こうした真っ当な判断すらできないほど、追い詰められている。

 

『朝鮮日報』(2月5日付)は、「青瓦台の選挙介入、秋美愛法相が起訴状の全文公開を阻止」と題する記事を掲載した。

 

韓国法務部(省に相当)は4日、韓国大統領府(青瓦台)による2018年蔚山(ウルサン)市長選挙介入事件の核心に触れる内容が記された検察の起訴状を「国会に提出しない」と発表した。政権レベルの選挙不正の嫌疑が詳細に公開されることを防ぐため、法務部は通常の前例すら覆している、という批判が出ている。

 


(1)「法務部は4日、「事件関係者の名誉およびプライバシー保護、被疑者についての被疑事実公表の可能性などを考慮し、今後はほかの事件についても起訴状の全文を公開はしない」と発表した。法務部は先月30日、検察から国会提出用としておよそ60ページの起訴状全文を渡された。だが法務部は、これを4ページに要約した内容のみを4日に公開した。検察内部からは「要約文では、大統領府の選挙介入の核心となる内容が全て抜けている」という声が上がった」

 

下線部のように、60ページの起訴状全文がわずか4ページに圧縮されているという。国民には分からないように煙幕をはった積もりであろう。だが、すでにメディアを通じて国民は事件の全貌を知っている。文政権は、隠せば隠すほど不利な事態へ追い込まれるのだ。韓国国民が、こういう政治工作で騙されると見ているとすれば、過去の政権が辿ったと同じ道である。

 

文政権は、前政権が弾劾によって追放された異常な事件の後に誕生したものだ。それだけに、政権特有の隠蔽体質の一掃が期待されていた。それが、歴代政権の辿った同じ道を歩んでいる。4月の総選挙で国民が、どのような判断を下すか、おぼろげながら予測できるであろう。

 

『中央日報』(2月5日付)は、「国民半分の大統領」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のコ・ヒョンゴン論説室長である。

 

(2)「ちょうど進歩と保守が「ろうそくの火」(注:朴・前大統領弾劾要求デモ)の下で一つになっていた。2017年5月の文大統領の就任当時、支持率は80%台まで上がった。ほぼすべての国民の祝福の中でスタートした。文大統領は就任演説で「国民全員の大統領になる」と約束した。しかし口だけだった。すぐに分裂の刀剣を振り回し始めた。民主化闘争をしたという道徳的優越感が毒になった。あらゆる事案を味方と敵、善と悪、正義と不正の二分法で裁断した。積弊清算のスローガンのもと、3年間も反対陣営を残忍なほど追い込んだ。恨みを晴らしているように見えた

 

保守派を「反日」と同一視して、積弊清算のスローガンを声高に叫んだ。それが、文政権である。敵と味方に分けて、敵を徹底的に追い込む。それが、韓国進歩派の常套手段である。

 


(3)「2006年(の盧武鉉政権)で「強者の貪欲」を云々して、国民を20対80に分けた核心メンバーが現政権のあちこちに布陣している。分裂と憎悪を煽って闘争の強度を高め、自分たちの勢力を最大化するのに慣れている人たちだ。昨日の同僚でも路線が違えば無情に烙印を押しながら生き残った人たちだ。そして「先に行くから生者よ続け」と声高に歌った人たちだ」

盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も、現政権と同じ手法を採用していた。その政権下で権力を振るった人たちが現在、大統領府の主要ポストを占めている。進歩派特有の「敵・味方」論を持ち込んでいるのだ。

 

(4)「現政権は執権後、手を多くの血で染めた。保守を壊滅させるという覚悟で臨んだ。そうであるほど保守陣営の怒りも強まった。2016年末の「ろうそく集会」に参加したことを後悔する人たちが増えている。感情の溝を埋めるにはもう遅いという印象がある」

 

(5)「政府もこうした殺伐とした状況を知らないはずはない。彼らが生き残る道は手段と方法を総動員し、4月の総選挙と2年後の大統領選挙で勝利して政権を守ることだ。このために国民を猛烈に組分けし、お互い憎悪するよう導きながら、理念のジャングル、政治の過剰状態に追い込むのは間違いない。選挙が近づくほど、検察の捜査が続くほど、支持率が落ちるほど、なおさらそうするだろう現政権の核心人物らが2006年の地方選挙を控えて使った方法の再現だ。ところがそれは国民が背を向けて惨敗に終わった方法でもある

文政権は、敵側に憎悪の念を強めることで、味方陣営の結束を固めるという古い手法を採用している。こういう常套手段に国民は気付いている。「いつか来た道」であることを。4月の総選挙は与党敗北予想が濃厚である。