a0960_005040_m
   

中国は後から振り返ったとき、新型コロナウイルスが中国経済の転換点であったと気付くことになるかも知れない。「世界の工場」としてサプライチェーンの核であったが、今回のウイルス禍でその危険性を立証したからだ。集中よりも分散というメリットの再確認を迫っている。「卵は一つの籠に盛るな」という諺の通り、分散が最大の安全策である。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(2月7日付)は、「新型肺炎、世界のサプライチェーンに激震」と題する記事を掲載した。

 

中国中部の河南省鄭州市にある富士康科技集団(フォックスコン)の大工場では、普段の日なら、この世界最大のiPhone製造工場からは毎日大量のアップル社製スマートフォンが出荷されていく。税関職員はアップルがスムーズに製品を輸出できるように協力しているほどだ。世界のハイテク産業は中国に築いた生産ネットワークに大きく依存し、在庫を極力持たない「ジャストインタイム」と呼ばれる効率的な委託生産を行っており、新型肺炎の流行による経済活動の停滞で最大級の打撃を受ける。

 

(1)「投資評価会社のモーニングスターでアナリストを務めるドン・ユー氏(シンガポール在勤)は、「今回のウイルス大流行で、アップルは中国に生産を集中し過ぎていることに気づき、その問題に対処する何らかの措置を取るかもしれない」と言う。フォックスコンが10日に生産を再開できなければ、アップルは3月に予定されるiPhone次期モデルの発売を数週間延期せざるを得ないだろうとユー氏は付け加えた」

 

フォックスコンが、2月10日に生産再開できなければ、次期モデルの販売は数週間の延期になるという。アップルには、大変な機会損失である。中国に生産を集中した咎めを受ける。

 

(2)「フォックスコンは来週生産を再開する姿勢を崩していないが、鄭州市は4日、省内の他地域から同市に戻った人々には7日間自宅にとどまる在宅隔離をしなければいけないと発表した。流行がより拡大している省から戻った人々は14日間自宅にとどまらなければならない。同社の鄭州工場で働く労働者のための市近郊の団地では、1カ所を除いてすべての入り口を閉鎖した。その入り口には警備員が配置されている。地元の感染症流行対策委員会のメンバー、ジン・ボーヤン氏によると、流行が発生した湖北省を訪れた従業員は外出が禁止されている。その他の従業員は外出が認められているが、集会は禁止されているという。

 

河南省鄭州市では、同省内に人には7日間、他省から帰った人は14日間、それぞれ自宅に止まる決まりになった。こういう省によるバラバラの「自宅隔離」の違いは、大量生産体制にとって、きわめて不都合な事態を生む。全員が、揃って生産現場に立てないからだ。

 

(3)「台湾企業の製造拠点がある地域の多くは、河南省と同様に活動が規制されている。顧客がその他のEMSに生産を委託しようと思っても、数カ月が必要だという。「製造受託を実現するには委託先が派遣するエンジニアがしばらく受託先の現場で準備しなければいけない。しかし現状では、多くの企業がエンジニアを引き上げ、出張を減らしている」と台湾の部品メーカーの幹部は言う」。

 

製造受託(EMS)では、発注先の要望に従う必要上から数ヶ月の準備期間必要だという。それが、今回のような「空白期間」が生まれると、失った時間を取り戻すために多くの時間がかかるという。現在、それが起こっている。

 

(4)「各地の地方自治体が導入した様々な検疫規則や移動規制に加え、それらの実施方法の違いがさらなる混乱を生んでいる。「工場がいつ再開するのか、その時我々が職場に戻れるのか分からない」とiPhone向けに画面のガラス供給を担う香港の伯恩光学の従業員、リー・イーさんは言う。リーさんによると、広東省恵州にある同社工場の経営者は、従業員に210日までは戻ってこないように言った。李さんは「その時になっても自分は戻れない」と言う。李さんは荊州市の実家に滞在しているが、同市は湖北省で封鎖されている15の都市の1つだ」

 

下線を引いたように、各省によって自宅隔離期間が異なっている。それを乗り越えて現在、従業員を全員、同時期に就業させるメドがついていないのだ。鄭州市のように河南省とそれ以外の省では異なる。調整に時間がかかって当然であろう。

 


(5)「新型肺炎による危機はより大きな変化をもたらすと考える人々もいる。ロス米商務長官は先週、現在の危機で米企業が中国の生産拠点を米国に回帰させ、雇用も戻れば米経済に好影響になる可能性があると発言して、物議を醸した。南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院でグローバル・サプライチェーンを研究するニック・ビアス氏はこの状況が「最後の一撃」となるかもしれないと見立てる。「この危機が情報を隠蔽することが多い中国で起きていることから、不確実性と恐れが増幅される。製造業は製造工程を効率化し、在庫を減らし、グローバルに統合された生産システムを構築してきたがゆえに、この危機は全面的に混乱をもたらすだろう」とビアス氏は警告する」

 

中国は、公衆衛生観念が最も遅れた国の一つである。すでに、SARS(2013年)の事件を引き起こしている。今回で2回目である。野生動物を食するという「食文化」が存在する以上、三度目の感染症発症のリスクを抱えている。こういう中国で、ITの最先端製品を製造するリスクを再検討する必要がある。「脱中国」による、新たな生産基地の選定が迫られているのだ。中国は、時限爆弾を抱えている。

 

(6)「このウイルス大流行で、企業は製造ができなくなることに伴う負のコストを計算に入れなければならなくなる。国内あるいはより近い場所で生産する方が理にかなうという判断材料になる可能性もある」

 

一箇所で大量生産するリスクよりも、消費地に近い場所を新たな生産基地にする安全性が選択される環境が求められようとしている。中国は、とんだミスを引き起こしたものだ。ウイルス禍は、金融面での行き詰まりももたらす。共産党政権が招いた危機である。