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中国の新型コロナウイルスの新規感染者は、最も多かった2月4日の3887人をピークに減少傾向に向かっている。特に湖北省以外で新たに確認された患者の数は8日間連続で減って、11日は377人と最も少なくなった。こうした状況で、中国の国家衛生健康委員会の報道官は、12日の記者会見で「依然として状況はかなり厳しいが、一連の対策によって全体的に見てプラスの変化が出ている」と指摘し、状況が改善しつつあるとの認識を示した。

 

ただ、感染症の専門家で中国疾病予防センターの曽光氏は12日、SNS上で、ピークに達したものの、今後およそ1億6000万人が帰省先などから都市部に移動することを考えると、再び患者が増加する可能性もあるという見方を示した。改善傾向が続くかは、なお予断を許さない状況のようである。

 

「感染症研究の第一人者で中国政府の専門家チームを率いる鐘南山氏はロイターのインタビューに応じ、中国国内における新型コロナウイルスの流行は2月にピークを迎え、4月ごろに終息する可能性があると予想。「今月の半ばか下旬にピークを迎える可能性がある。その後はやや横ばいのような状態になり、それから収まるだろう」とし、「4月ごろに終息すると望んでいる」と述べた」。『ロイター』(2月11日付)が報じた。

 

以上のように、楽観的な見方が出ているが、これを否定する慎重な見方を取り上げたい。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月12日付)は、「ウイルス感染は鈍化、根拠なき楽観論は禁物」と題する記事を掲載した。

 

(1)「アナリストは新規感染者数の伸び鈍化について、米国株が先週大きく値上がりした理由の一つだと説明している。それはアナリストリポートでも大きなテーマとして取り上げられた。ブリーン・キャピタルのエコノミストは7日のリポートで、感染の拡大ペースが抑えられているとし、「感染の拡大はさらに減速していくようだ」とコメントした。だが、新たに確認される感染者の増加ペースに基づいて今後の展開を推測するのは危なっかしい。データにはノイズも多く、報告の遅れがある。症状が軽い人や、症状のない多くの人が検査を受けずにいるかもしれない」

 

下線部分のような錯誤が混ざり込んでいる可能性を指摘している。

 

(2)「しかも、コロナウイルスを検査する医療システムの対応能力には限界があり、日々の検査件数を超える新規の感染者数が報告されることはあり得ない。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の疫学者マイケル・ミナ氏は、「1日で5件の感染を報告し、35日後に10件報告する」こととは別次元の話であり、「1日で5000件の新たな感染例を報告して35日後に1万件を報告するには、膨大なリソースを要するが、そんなリソースは存在しない」と語っている」

 

ここでは、単なる感染者数の推移で見るべきでないと指摘している。

 

(3)「コロナウイルスの新たな感染者数の伸び鈍化は感染拡大の減速を示すとの見方に加え、日々確認される新規感染者数が間もなくピークに達し、減少に転じるとの期待もある。例えば ゴールドマン・サックス のエコノミストは、3月末にかけて新規感染者数が急減するとの見通しを基本シナリオとしている。 UBS のエコノミストも同様に、1-3月期中にウイルス感染が封じ込められると想定している

 

下線のように、1~3月にウイルス感染が封じ込められるという想定も出てきた。

 


(4)「こうした予測の前提となっているのは、コロナウイルスが2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と似たパターンをたどるとの見方かもしれない。SARSの初の感染例が報告されたのは02年遅くで、感染報告件数は034月下旬にピークをつけた。世界保健機関(WHO)は同年7月までに、流行が抑えられたと発表した。ただ、コロナウイルスの感染者数はすでにSARS5倍に達している。感染が報告された国の数もすでにSARSと同じほどに上る。感染の流行曲線はSARSと完全には一致していない。テキサス大学オースティン校のローレン・アンセル・メイヤース数学・疫学教授は、データの圧倒的多数が依然として武漢で発生したものであることを踏まえれば、コロナウイルスがどんな曲線を描くか現時点で見極めるのは困難だと指摘する

 

下線部分は、冷静な分析を求めている。コロナウイルスの感染者数はすでにSARSの5倍に達している。感染報告国の数もSARSと同じほどに上る。感染の流行曲線はSARSと完全に一致していないのだ。この点から見て今後、コロナウイルスがどんな曲線を描くかは未知であるという。

 

(5)「それでもコロナウイルスがSARSと同じパターンをたどり、早期に封じ込められる可能性はある。こう語るのはハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のマーク・リプシッチ教授だ。ただし現時点では、その確率は5%未満とみている。むしろ、パンデミック(世界的大流行)となった後、何らかのワクチンで抑えられる可能性の方が高いかもしれないという。あるいは、一般的な風邪の症状を引き起こす季節性コロナウイルスの新種となるかもしれない。ただしその症状は、はるかに重い。リプシッチ氏は、「何が起こるか分からない」「われわれは未知の領域に入っている」と語る」

 

早期に封じ込められる可能性は5%未満という。むしろ、大流行した後に特効薬が出る可能性を否定できないようだ。そう言えば、中国寄り発言をして批判されたWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は11日、新型ウイルスの感染拡大は「世界全体に非常に重大な脅威」を及ぼすとし、「世界は目を覚まし、このウイルスを最大の敵だと認識する必要がある」と指摘した。また、1年半以内に新型コロナウイルスのワクチンの用意が整う可能性があるとの見通しも示した。

 

ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のマーク・リプシッチ教授とテドロス事務局長が、期せずして特効薬の出現に触れている。これは、特効薬が出現しない限り沈静化しない、という認識が深まっているのかも知れない。これまで楽観論に立っていたテドロス事務局長が、一転して警戒論になっている。要警戒の段階であるようだ。