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本欄で報じた富士フイルム富山化学工業の発売している「アビガン」が、新型コロナウイルス治療薬の有力薬剤に挙げられている、と加藤厚労相が発言した。

 

『ブルームバーグ』(2月22日付)は、「新型インフル薬『アビガン』活用も、新型肺炎の治療薬にー加藤厚労相」と題する記事を掲載した。

 

加藤勝信厚労相は22日、日本テレビ系の番組に出演し、新型コロナウイルスの治療薬として、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の活用に前向きな考えを示した。

 

加藤厚労相は、「新型コロナウイルスに対する治療薬は確定していないが、できることはやる」と説明。所定の手続きを踏まえた上で、「アビガンをはじめ、さまざまな薬について効くかどうかしっかり確認し、効くのであれば全国に展開して、新型コロナウイルスの治療の一つに使っていきたい」と述べた。同日付の読売新聞朝刊は、政府は新型コロナウイルスの感染者を対象にアビガンの投与を推奨する方針を固めたと報じた。試験投与したところ、軽症の患者や無症状の感染者で効果が確認されたという。加藤厚労相が近く製薬会社に増産を求めるとも伝えた。「アビガン」は富士フイルムグループの製薬会社である富士フイルム富山化学が開発した」

 

「アビガン」については、過去に開発過程が報じられている。『週刊現代』(2014年11月29日号)が、次のように取り上げている。

 

「米メディアによると、ペンタゴンは2012年3月からアビガン(「Tー705」)を生物テロ対策の薬剤に指定しており、開発費用として140億円を助成しているという。そのペンタゴンが音頭を取って、米国内でも大規模な臨床試験が進められていった。今年(2012年)8月、ペンタゴンが「アビガン」をエボラに効く可能性のある治療薬の候補として発表。緊急措置としてスペインでは二次感染した女性看護師に投与され、完治した。ドイツではエボラ出血熱を発症したウガンダ人に投与され、回復傾向にあると現地で報道されている。今後もアビガンによってエボラウイルスから一人でも多くの命が救われることが期待されている」

 

「アビガン」は、大きな特色を持っている。それは、ウイルス耐性を持ちにくいという点である。ウイルスは増殖の過程でどうしても薬の耐性を持ってしまうが、増殖そのものを抑える効果を持つので耐性ができにくいとだ。これは、感染症治療において大きな優位性になっているという。

 

以下に、本日の当欄の記事を再掲する。

 

日本、「特効薬?」新型ウイルス治療薬、神奈川県が富士フイルム系薬品使用を政府に「要望」

新型コロナウイルス病原菌は、日本で分離に成功したことから「特効薬」出現の期待が高まっている。NHK・TV(21日21時)に出演した専門家は、「週単位」という近時で、特効薬の発表があるのでは、と示唆する発言が出ている。急ピッチで、研究が進んでいるようだ。

 

神奈川県知事が21日、新型コロナウイルスの感染者を受け入れている県内医療機関で、富士フイルムの抗インフルエンザ薬「アビガン(一般名ファビピラビル)」の投与を認めるよう政府に要望書を提出した。新型コロナウイルス向けの臨床試験は未実施だが、中国国内では同様の成分を持つ医薬品に同ウイルスに対する効果が認められているという。以上は、『日本経済新聞 電子版』(2月21日付「神奈川県、抗インフル薬の投与承認を国に要望」)の報道による。

 

この記事を見て、富士フイルム富山化学工業の製剤であると思い調べてみたが、まさにそうだった。私は記者時代、富山化学工業を取材担当していた。その際、新薬「パンフラン」(感染症治療薬)の開発に成功したと報じた私の記事が、株式市場で大いに注目されたことがあった。富山化学は小世帯ながら、「研究開発の魂」のような企業という記憶が残っている。今回、富士フイルム系企業の開発という記事を見て、「富山化学」の名前がピントきた理由である。

 

パンフランは当時、赤痢治療薬であったと記憶している。もし、この製品開発系列の過程で今回、注目の抗インフルエンザ薬「アビガン」が製品化されたとすれば改めて、製品開発の長い歴史の持つ重要性を認識させられることになろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(2月21日付)は、「治療薬の暫定結果、3週間以内に判明、新型肺炎でWHO」と題する記事を掲載した。

 

(1)「世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は20日、記者会見し、新型コロナウイルスの治療薬の臨床研究の暫定結果が3週間以内に判明すると述べた。WHOを中心とした研究開発チームが抗エイズウイルス(HIV)薬と、別の抗ウイルス薬を試験しているという。効果が見られれば治療が大きく前進する可能性がある」

 

下線部のHIV(抗エイズウイルス)薬が、新型コロナウイルス治療薬として注目されているのは、「新型コロナウイルス」の遺伝子が操作されており、HIV型の配列になっている結果だ。武漢市の研究所が、こういう遺伝子操作を行なっていたことが判明している。

 

(2)「WHOは各国の専門家と連携し、治療薬の開発に取り組んでいる。テドロス氏によると、研究開発チームは抗HIV薬「ロピナビル」と「リトナビル」を組み合わせたものと、22日には、タイ保健省がこの抗HIV薬の組み合わせとインフルエンザ薬を併用して重症患者に投与したら、症状が劇的に改善したと発表している抗ウイルス薬「レムデシビル」を試している。」

 

新型コロナウイルスの遺伝子は、一部がHIV型に操作されているので抗HIV薬が治療効果を挙げて当然であろう。

 

(3)「WHOは週2回、中国で患者治療にあたる臨床の専門家と電話会議をし、患者の状況や治療法について情報共有を図っている。臨床医がオンラインで匿名の患者の情報を共有できるシステムも構築した。現時点で正式に有効と確認された治療薬やワクチンはまだない」

 

WHOは、まだ有効な治療薬の発見にいたっていない。どこの国の医薬品が、治療上で著効をもたらすか。科学レベルの競争でもある。