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けさ発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

メンツで生産再開を指示へ

今回とSARSの被害比較

人口動態から見て回復困難

1200ウォン割れの意味

 

中国政府は、背に腹はかえられぬとばかり、湖北省と北京市を除外した地方政府に、生産活動復活への指示を出した。2月22日の発表では、感染者増加ゼロの地域が、全国31省・直轄市・自治区のうち18に達したことから、その地方政府の管轄地域は生産現場に戻れというもの。現在は、小休止状態でも完全に沈静化していない段階である。ここで行なう生産再開が、感染者を増やすリスクを高めやすいだろう。

 

政府系メディアの『環球時報』は、「感染が深刻ではない大多数の都市は『静止』するな」と叫んでいる。住民の反発を最も受ける地方の政府官僚から言えば、いま少し生産再開時期を遅らせたいに違いない。中国経済の実態は、それを許さぬほど窮迫しているのだ。

 

メンツで生産再開を指示へ

中国指導部が生産再開を急いでいる背景には、今年が「第13次5カ年計画」の最終年に当たることもある。2010年比でGDPと所得を倍増させる公約の目標年であるのだ。習近平氏にとっては、何が何でも公約を達成したいはずだ。目標達成には、今年のGDPが5.7%成長にならなければ無理。大方の予測では、4%成長である。達成は、不可能なのだ。

 

中国はこれまで、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や2008年のリーマンショックなどの経済危機を大型財政支出で乗切ってきた。その結果が、現在の対GDP比で300%を超える債務残高を抱える経済体質へと劣化させた。

 


この脆弱体質をカムフラージュすべく、中国政府は「消費が60%に達している」とウソ情報を流している。世界の主要メディアまでが、この「消費60%説」を信じ切っているから困るのだ。実態は、民間消費と政府消費を合算して「消費」と称している。厳密には、消費=民間である。この民間消費支出はGDPの40%弱に過ぎない。財政支出が引っ込めば、景気は途端に落込む、痩せ細った経済構造になっている。米国の民間消費支出が、約70%弱であるのと比べ、中国は比較にもならない虚弱体質である。

 

こういう状況下で、今回の新型コロナウイルス感染症に陥った。既述の通り、財政支出依存による難局打開策は取りにくいのだ。もっぱら、金融緩和政策に頼る以外に道はなくなっている。だが、企業部門にさらなる債務負担を増やさせ、企業活動を促進させる余地はない。肝心の金融機関が、不確実性の高い企業に対し融資に応じる可能性は低いのだ。確実な担保(不動産)がなければ、融資は不可能な状況になっている。

 


ここで厄介な問題は、不動産価格の下落リスクが高まっていることだ。新型コロナウイルス感染の拡大で、人々の外出は大幅に制約されている。富裕階層ほど罹病を恐れ、外出を控えている。その結果、住宅展示場はどこも閉鎖された状況だ。こうして、不動産価格は値下がりに転じる前兆が強くなっている。不動産担保が、融資保証のテコにならなくなってきたのである。

 

この事態は、日本が経験済みである。値上り前提の不動産価格が、値下がりリスクを抱えた時、銀行の不動産担保査定は厳しくなって、企業は借り入れが困難になる。これが、平成バブル崩壊後の日本の実情である。中国も、この状況に追い込まれると見るほかない。中国が、過去に経験しなかった経済循環に放り込まれるのは間違いない。いつまでも、我が世の春が続くはずもないのだ。中国企業が今、初めて迎えた本格的な不況の中を、無傷で通過できる可能性はほとんどゼロであろう。(つづく)