テイカカズラ
   

習近平国家主席は、中国の権力を一手に掌握しているものの焦っている。今年が、2010年比でGDPと国民所得を倍増させる計画達成年であるからだ。目標達成には、5.8%成長が不可欠である。その重要な節目の年に、「新型コロナウイルス禍」の直撃弾を浴びた。今年のGDP成長率は、4%以下の見通しが圧倒的である。こうなると、習氏はますます焦らざるを得なくなるのだ。

 

『韓国経済新聞』(2月28日付)は、「習近平、『経済活動再開促す』日常復帰急げば『2次拡散』の危険」と題する記事を掲載した。

 

中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡散の勢いが沈静の兆しを見せると習近平国家主席が「経済社会の発展のためにも努力しなければならない」と求めた。新型コロナウイルスの追加拡散阻止と経済活動再開という二兎を同時に得ようということだ。しかし、企業の生産活動や市民の日常生活の再開を急ぎすぎれば、移動と接触が増えて2次拡散が起こるかもしれないという懸念も出ている。

(1)「2月27日、官営の『新華社通信』によると習近平主席は前日、共産党中央政治局常務委員会会議で「全国の新型コロナウイルス防疫の状況が好転している」とし「今後は経済回復も加速しなければならない」と指示した。習主席は続けて「こういう時ほど各部門に対して徹底した党中央の方針と指導が必要」とし「絶対に安どしてはならず、経済社会の発展にも緊張を遅らせてはいけない」と強調した。また、習主席は企業の生産回復と労働者の復帰、交通・物流、市場供給業務への支援が必要だと述べた」

 

習氏の指示を見ると、かなりの焦りを感じる。病み上がりの病人に対して、全力疾走で走れと命じているような感じを抱かせるからだ。

 


(2)「このような方針に基づいて中国の13の省級行政区域が新型コロナ対応レベルを下げた。広東省・陝西省・江蘇省・四川省など6省の対応レベルを1級から2級に下げた。遼寧と雲南省、青海省など7地域は1級から3級に一度に2段階下げた。中国は重大突発公衆衛生事件を特別重大(1級)、重大(2級)、比較的に重大(3級)、一般(4級)に分けて管理している上海など新型コロナのリスクが低い地域は経済活動を完全に正常化し、道路通行制限を解除した。山東省は省内の企業の操業を80%まで引き上げたと伝えられた。江蘇省でも省内の75%に及ぶ3万4000工場が稼動を始めた。中国民用航空局は、新型コロナウイルス拡散により中断した航空便運航を湖北省を除く路線から順次再開することにした。民用航空局は、他国の航空当局にも中国行きの国際線運航を再開するように要請する方針だ」

 

下線部では、いち早く全力疾走の体制を取っている。だが、農民工の工場復帰が不十分である。中国政府は、国内の航空便を早期に再開させて、他国の国際線運航を再開させる呼び水にしようとしている。工場再開を急がせている背景は、海外向けのアピールという目的も隠されている。

 

(3)「中国政府は新型コロナ事態で苦しんでいる自営業者、農村からの出稼ぎ労働者のために大規模な減税と融資拡大も迅速に行う計画だ。地方政府では不安感が高まっている。企業の積極的な経済活動を支援するためには、工場再稼働の手続きを簡素化し、労働者の自由な移動を保障しなければならない。しかし、そうして新型コロナウイルスの感染者が再び増えかねないという政策の負担を抱え込まなければならない。重慶市と湖南省、陝西省などで工場の稼働を再開したが、従業員が感染した事例が確認され、再び工場を閉鎖したことが報じられた

 

感染者が陰性になって退院しても、再び陽性になるケースが出ている。病原菌が内臓に残っていることが理由とされる。従来の感染症と違った根治の難しさを見せている。

 


(4)「経済活動の正常化のための条件がまだ十分に備わっていないという指摘も出ている。春節(旧正月)の連休後も自己隔離と公共交通機関の運行制限、外出制御など中国本土内で移動制限措置の適用を受ける人口は未だ数億人にのぼることが分かった。日本の野村證券が中国最大の検索プロバイダ、百度の資料を分析した結果、先月春節連休に北京・上海・深センなど大都市を離れた人の3分の1しか職場に戻っていないことが分かった。

 

大都市を離れた地方の農民工は、帰郷後の地方で足止めされているケースも多い。北京・上海・深圳の職場に戻った農民工は3分の1程度とされる。しかも、14日間は隔離される生活である。

 

(5)「ある江西省関係者は、「旅行や移動などの制限措置を緩和することは極度に注意しなければならない」とし、「まだ新型コロナの不確実性が続いているため、今まで注力してきた私たちの努力が水の泡になるのは見たくない」と述べた。『ウォール・ストリートジャーナル』は、「中国の政策当局者は伝染病の制御と経済発展の均衡を合わせなければならいという矛盾に直面した」と報じた」

 

WHO(世界保健機関)の終結宣言が出た訳でもない。依然として、感染再燃のリスクを抱えて薄氷を踏む状況である。習氏の焦りが、中国経済の危機を立証している。