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中国は、先に米国主要3紙の記者10人超の記者証を取り上げる措置を行なった。これまでになかった強硬姿勢である。その裏に、中国内部の対立があるのでないか。本欄は、そういう見立てであった。どうやらその兆候が現れている。「紅二代」(共産党革命を実践した長老の二代目)が、習近平氏のコロナ対応や経済政策、米中対立について公然と批判。その投稿者が行方不明になっている。拘禁されたと報じられ、習近平氏が厳罰を命じたという。

 

習近平氏の行なう強引な政策が、現在の中国を世界的に孤立させている。新型コロナウイルスも、中国外交部報道官に「米軍拡散説」をSNSで投稿させる醜態を演じた。欧米の反発が強まると、駐米中国大使に全否定させたほど。こういうダブルスタンダード外交で、中国の評価を下げている。中国国内での「習近平批判」が高まるのは当然であろう。

 

『大紀元』(3月25日付)は、「中国『紅二代』が習指導部を批判、『中共肺炎』対策巡って」と題する記事を掲載した。

 

(1)「新型コロナウイルス」が世界中にまん延する中、中国当局は国内で言論の自由を抑圧し続けている。当局は、感染拡大防止政策を批判した「紅二代」(毛沢東らと共産革命に参加した長老らの子弟)の任志強氏を逮捕した。このほど、もう1人の「紅二代」がSNS上に、党中央政治局会議を開き、習近平国家主席の辞任を議論すべきだと呼び掛ける「建議書」を転載し注目された」

 

中国国内で初めて明らかにされた「習近平批判」である。「紅二代」が、習批判に立ち上がった裏には、相当の同調者がいると見られる。

 

(2)「321日以降、国内SNS上では、「政治局の緊急拡大会議の即時開催に関する建議」と題した記事が次々と転載された。 「紅二代」の1人で、香港の衛星テレビ放送「陽光衛視(Sun TV)」の陳平・会長も、SNS微信(ウィーチャット)で、同記事をリツイートした。陳会長は微信において、「匿名記事を転載しただけだ」と書き込み、執筆者について知らないと強調した。同記事は、政治局の会議を拡大して、習近平氏を引き続き中国共産党の総書記として適任かについて議論することと、中国当局が今国際社会でさまざまな敵を作り、米中関係を悪化させ、アフリカなどの途上国に資金をばら撒いたなどの問題を議論すべきだと提案した。また、記事は、台湾との関係、香港問題、中国当局の政治・経済政策も討論すべきだと指摘した」

 

このパラグラフで指摘されていることは、中国のみならず世界にとってもきわめて重要な点である。習氏は、「永久国家主席」というルール違反で、中国を乗っ取ろうとしている。この手法は、世界を飲み込む野心の表れでもろう。「紅二代」が、共産党革命の原点に立ち戻れと主張するのは当然だ。

 

(3)「陳平氏は、323日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材を受けた際、同提案書は現在、多くの国民、「特に共産党内部の人々」の考えを反映したと述べた。同氏は、現在難局に直面している中国共産党にとって、政治局拡大会議の開催提案は「解決案」を見つけるための方法だとした。陳平氏は、同じ「紅二代」の任志強氏(69)や王岐山・国家副主席、習近平主席とも長年の知り合いだと明かした。任志強氏は、不動産会社「華遠地産」の会長を務めた。公の場で体制を批判する言論を繰り返したため、「任大砲」との異名を持つ。3月初め、「任志強」と署名された投稿はネット上で拡散された」

 

習氏は、「紅二代」で自分と同じ立場の同志から批判されている。権力を一手に集めて、民族主義者として振る舞っているからだ。

 


(4)「記事は、中国共産党指導者と当局がコロナ肺炎の感染拡大を隠ぺいし、政府系メディアが虚偽の情報を流し、当局を称賛するプロパガンダを展開して、感染を警告する告発者の言論を弾圧したと非難した。また、記事は、習近平氏を名指ししていないが「皇帝になりたがる道化師」と暗に批判した。また、記事は、「党は党の利益を守り、役人は役人の利益を守っているが、君(習近平氏)は、(党の)核心としての地位と利益を守ろうとしているに過ぎない」「この体制の下、中国当局は事実を公表するのではなく、『噂を流布した』として、感染情報の伝達を阻止した。このため、疫病は制御不能にまでまん延した」と主張した」

 

ここでの批判は、良心のある人間であれば当然行なうべきことだ。習氏は、自分に責任がはね返ることを極端に恐れて、責任転嫁を始めている。中国人が、このプロパガンダにいつまで騙されているのか。コロナの「米軍拡散説」は噴飯ものであり、世界の憤激を買った。

 

(5)「312日、任志強氏が音信不通となったことが明らかになった。任氏の友人3人はロイター通信に対し、「非常に心配している」と話した。米ラジオ・フリー・アジア319日付は、情報筋の話を引用し、習近平氏が任志強氏について「必ず厳罰するよう」に、北京市規律検査委員会に命じたと報じた。同委員会が任氏を拘留しているとの情報がある。中国軍創立者の1人、葉剣英氏(故人)の養女である戴晴氏はこのほど、VOAに対して、80年代に党内部で活躍した改革派は、中国の現状を非常に危惧している。このタイミングに、一部の人が匿名で意見を述べたのは、この現状を変えたいとの思いがあるからだ」と話した。歴史学者の章天亮氏は、米中国語テレビ放送「新唐人」の「天亮時分」番組で、国内外の紅二代や知識人に「共産党に期待してはいけない」と呼び掛けた」

 

下線のように、改革派は世界との協調を重視する。習氏らの民族派は、中国の世界覇権を目指す。改革派とは、その立場が全く異なるのだ。中国が改革されなければ、世界が大迷惑と損害を受ける。今回の新型コロナウイルス事件はそれを証明する。