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韓国は、企業も家計も「ドル買い」姿勢を強めている。外貨取引は本来、為替レートの動きに従い、売買が起こるもの。だが、昨今の韓国は、「ドル飢餓」状況である。ともかく、ドルを保有しようという動きが強まっている。新型コロナウイルスの世界的な感染の中で、何が起こるか分からない不安心理が、「ドル買い」へ走らせている。

 

こういう潜在的ドル需要が続く限り、韓国のウォン安相場が続く見通しが強い。ウォンの「マジノ線」とされる1ドル=1200ウォンを割り込んでいる現状は、早急に変わらない情勢である。慢性的ウォン不安心理が、今後とも続くことになれば、ちょっとした悪材料で、ウォン相場は大きく崩れるリスクを孕んでいる。

 

『韓国経済新聞』(3月27日付)は、「韓国の家計・企業もドル買い、『ドル高で売る』という公式も崩れる」と題する記事を掲載した。

 

5大銀行の米ドル預金残高が今月に入って4兆ウォン(約3580億円)以上増えたことが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外国為替市場が大きく動き、企業の「ドル買い」需要が急増したからだ。今年に入って減少傾向だった日本円やユーロなどほかの外貨預金規模も今週は急増するなど、国内為替市場が不安感から大幅な値動きを見せているという分析だ。

 

(1)「金融界によると、5大銀行(国民、新韓、ハナ、ウリィ、農協)のドル預金は25日基準で432億2600万ドルだった。先月末(396億9200万ドル)に比べ35億3000万ドル増えた。今週に入って急増が目立った。20日(409億9800万ドル)から5日間で22億2765万ドル増加した。外貨預金の大半は企業だ。輸出入企業のドル買いが反映された数値というのが業界の説明だ。大企業の関係者は「先週、韓米通貨スワップが締結されたが、ドルを確保しようとする企業の動きが強まり、銀行資金関連部署の業務はまひした」とし「ドル確保に死活をかけているが、うまくいかない状況」と伝えた。ユーロ、日本円、人民元などほかの外貨預金の動きも激しい。金融界の関係者は「当分は為替レートの騰落よりも新型コロナ事態による景気の動きが国内為替市場の最大変数になる可能性が高い」と述べた」

 

韓国企業は、米韓通貨スワップ協定(正しくは、為替スワップ)によるドル供給でも、安心できない心理状態が続いている。1ドル=1200ウォンを割り込んだままであるからだ。日韓通貨スワップ協定という「鬼に金棒」状況になれば、不安心理も収まるのだろうが、そういう「好材料」は現れそうにないのだ。

 


(2)「韓国国内の外国為替市場でドルの需要が増えている。ドル高になれば売ってドル安になれば買うという「公式」も崩れた。5大銀行のドル預金規模は先月から急増している。米国経済までが不安定になると、企業が万が一の事態に備えて「買い」に出たという分析だ。ドルを除いたほかの外貨預金は大幅な動きを見せている。当分は為替レートよりは市場不安感が為替市場を動かす見通しだ。通常、外貨預金の推移は為替レートの動きに従った。ドル高になれば相場差益を得る動きが出て外貨預金規模も減少した。一方、ドル安になれば安値にドルを確保しようという需要が増えて規模が増加した。今年に入ってこうした「公式」が崩れた。5大銀行のドル預金は20日現在409億9862万ドルと、過去1年間で最もウォン高ドル安となった昨年6月(405億238万ドル)水準だ。都市銀行の関係者は「市中でドルを買うのは難しい」とし「普段は国内に支店がある外国系銀行を通じて調達したが、今はそれもふさがった状況」と伝えた」

 

ドル買いは、ドルの外貨預金増加に表われている。3月20日のドル預金は、約410億ドルに達している。昨年6月のドル安・ウォン高時を上回る規模だ。これまでの相場観では、ドル高=売却という図式であった。この構図はすでに崩れている。ひたすら、「ドル買い」である。

 

「ドル買い」と言えば、昭和恐慌時(1931年)に三井銀行(当時)が、ドル買いに走ったとして世論から叩かれ、陸軍の若手将校が三井財閥首脳を狙うという物騒な事件があった。新興国の経済にとって、ドルはいつでも「神様」扱いである。韓国は、約80年前の日本と同じ状況にある。なお、三井銀行のドル買いは、為替差益を狙ったものでなく、為替の清算取引に伴う事務的なドル買であったことが判明。新聞の誤報であった。

 


(3)「こうした動きには、極度に敏感になった企業の不安感が反映されているというのが業界の見方だ。米国の景気に対する懸念が強まり、ドルをあらかじめ確保しようとする企業の需要が増えたということだ。特にドル建て債務があったり満期不一致リスクがある会社が「生存」レベルでドルを買っている。都市銀行の関係者は「ドルを高く買って損をしても、あらかじめドルを確保しておくべきという心理が広がっている」とし「それだけ市場と企業の不安感が強いという傍証」と話した」

 

下線部分は、まさに「ドル飢餓」状態である。大韓民国は、ドル不足で過去2回も通貨危機に遭遇している。「二度あることは三度ある」という心理状態であろう。

 

(4)「新韓銀行蚕室(チャムシル)PWBセンターのチェ・ホンソク・チーム長は「米中央銀行の無制限量的緩和と韓米通貨スワップなどでドル・ウォン為替レートはひとまず安定を取り戻した」とし「ドルが安定するとしても韓国ウォンに影響を及ぼす変数はまだ多いという点で、為替レートを予測してドルを買うのは自制する必要がある」と述べた。ウリィ銀行の関係者は「現在一部で見られるドル買いの動きは収益率よりは危機状況での通貨分散レベル」とし「ドル高になってもドルを売る傾向がまだ表れていない理由は危機が進行形であるため」と話した」

現在の韓国は、為替の相場観でのドル需給ではない。韓国経済の先行き不安が、ドル買いに走らせている。ウォンが、1ドル=1200ウォン台を脱して、1100ウォン台にもどったとき初めて、韓国企業に安心感が出て来た証拠になりそうだ。